最高出力と最大トルク。クルマ好きなら誰もが気にしますよね。でもクルマの動力性能を比較する時、真っ先に見るのは最高出力で、最大トルクは二の次というか、最高出力ほど重視されていないようです。クルマの速さ=最高出力と認識している人が多いのではないでしょうか。
実は最高出力より、最大トルクのほうが重要ということを知っていましたか? それはなぜなんでしょう? そもそも最高出力と最大トルクとの違いなど基本的なことから、モータージャーナリストの高根英幸さんに解説してもらいましょう。
文/高根英幸
写真/ベストカー編集部 Adobe Stock
■エンジンにとって本当に大事なのはトルク!!
クルマの動力性能を比較する時に一番気になるのは馬力、いわゆる最高出力だろう。そのエンジンが最もパワーを発揮するのは何回転で回っている時なのか、またそれは何馬力なのか。自動車メーカーも排気量と最高出力を強調して高性能ぶりをアピールすることが多い。
しかし残念ながら、それは実用上はあまり意味がないのだ。我々が力強いと思っている加速力は、実はパワーではなくトルクなのだから。
エンジンの性能を示すパワーとトルクというこの2つの数値、それぞれが別の性能を表していると思っている人も多い。パワーが最高速度に関係するもので、トルクは低速域での力強さを示すものと捉えている人も多いように感じる。
我々自動車評論家、自動車雑誌、自動車WEB媒体が、高速域ではパワー、トルクは低回転域での性能を表現する時に使っていることが多いことから、そうした誤解が生まれているのかもしれない。
かつて日本には280馬力自主規制というものがあり、これがこうした馬力神話を作ってしまった原因のひとつかもしれない。
しかし、ここで認識を改めていただきたい。パワーとトルクは実は同じものだ。ただし全く同じ、という訳ではない。パワーはトルクとエンジン回転数から求められた値だ。実際にエンジンやクルマのパワーをチェックする場合は、シャーシダイナモを使って発電機や液体ポンプをタイヤで駆動し、その発電量や液量によってパワーを計測している。
トルクは、エンジンの回転数とタイヤの回転数の差からトータルの減速比を算出し、それとエンジン回転数によって、パワーから計算されている。高速で回転しているタイヤが回転する力を取り出すことが難しいから、実際には力がまとまった状態であるパワーを計測してトルクを算出しているが、トルクこそがタイヤを回す力そのものなのだ。
■馬力とトルクの表記を改めて確認する
まずは、その最高出力と最大トルクの表記から解説していこう。最高出力は120ps/4500rpm、または100kW/4500rpmというように表記されている。
psは従来の単位でいわゆる馬力、1秒間に75kgの物体を1m持ち上げる仕事が1psだ。kWは国際規格で定められている出力の単位で、1psは0.7355kW。国際単位に統一するというのが原則なのだが、クルマの場合は分かりやすいように従来のps表記も用いられている。
後ろに付くrpmはレボリューション・パー・ミニッツの略で、毎分の回転数を表している。つまり120ps/4500rpmは、エンジンが1分間に4500で回っている時に、全負荷状態では120psを発生することを意味する。
それに対して最大トルクは40kgm/2500rpm、または350Nm(ニュートンメーター)/2500rpmというように表記される。
これも前者が従来の表記で、後者が国際規格だ。こちらも毎分2500回転で回っている時の力の強さを表したもので、kgmというのは長さ1mの棒をテコにして力を入れた時の大きさ。
40kgmは、40kgの重りを1mの棒の先にぶら下げているのと同じ力だ。1kgは9.8Nだから、ほぼ10倍すればNmに換算できる。
パワー(Power)はラテン語のposse(~できる)が語源だと言われている。つまり仕事量を量るものだ。トルクもラテン語のtorque(ねじれ)から来ているもので、捩る力(ねじりモーメント)を現わす。
ちなみにpsはフランスで制定された力の単位で、他にもイギリスのbhp(hp)もあるが、1psは0.98hpなので、ほぼ同等と思っていていい。
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