2023年2月6日17時半(日本時間)、イギリス・ロンドンでルノー・日産・三菱自動車アライアンスによる共同会見が行われた。懸案であったルノーから日産への出資比率が引き下げられ、相互に15%となった。企業としての立場が対等になったルノーと日産。新アライアンスで日産が次に起こすアクションとは?
文/桃田健史、写真/NISSAN
■ついに次のステップへ
「皆さん、おはようございます」。
日本時間で2023年2月6日の17時半、英国ロンドンで開催されたルノー・日産・三菱自動車(以下、三菱)アライアンスによる共同会見が始まった。
会見は日本時間の19時まで続いたが、ネット媒体やテレビのニュース番組では3社のアライアンスが新たなる段階に入ったことについて、さまざまな視点で検証していた。
なかでも、ルノーと日産各々の出資比率に関する新たなる契約内容について、各メディアが独自の見解を示した。
出資比率は、ルノーは日産に対して43.4%から15%に引き下げられ、その差分である28.4%の株式についてはフランスの信託会社に信託される。これにより、ルノーと日産の出資比率は相互に15%となり、2社各々が議決権を自由に行使することが可能となる。
つまり、ルノーと日産の企業としての立場が対等になったというわけだ。
これを、一部メディアでは、「日産がルノー傘下から脱却した」と書く。
自動車系メディアでも、これまでルノーと日産の企業としての関係性について、アライアンス(協業体制)としながらも、出資比率が「アンバランスではないのか?」という観点で何度も記事化してきた。
そうした出資比率のアンバランスさが解消されたことは、日産のクルマ作りにどのように影響するのだろうか?
■赤色と黄色でオレンジになっては意味がない
時計の針を少し戻すと、ルノーは1999年、経営危機に陥った日産に対して資本参加し、メディアではコストカッターと名付けられ、ルノーから送り込まれたカルロス・ゴーンCEOによって日産の業績は、いわゆるV字回復を遂げる。
だが周知のとおり、長きに渡るゴーン体制によって日産社内および、日産とルノーの間で歪が生じ、最終的にはゴーン氏の逮捕、そして海外逃亡という、まるで映画のようなストーリー展開になったことは多くの人の記憶に新しいだろう。
その後、日産の改革についてさまざまな視点で検証が進み、内田誠CEO体制において2020年5月に事業構造計画「Nissan NEXT」が発表された。
ユーザーにとっては、このなかで資本導入が確定した新型「フェアレディZ」の存在に歓喜し、また「サクラ」と「ARIYA」を筆頭とする日本市場でのEVシフトを現実のものとして捉えることができたと言える。
また、「Nissan NEXT」とほぼ時期を同じくして、ルノー・日産・三菱は、「競争力と収益性を高める新たなるアライアンス」について発表している。
ここでは、3社の得意とする車両(車体)、電動化や自動運転などの技術、そして製造・販売の地域で「リーダーとフォロワー」という考え方を強調した。
さらに、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」で示した日産の夢に向けて着実に歩んでいく姿勢を強調した。
だが、2022年になると、筆者を含めてユーザーのなかにも「Nissan NEXTの次」の段階で登場する量産モデルの「具体的なロードマップをそろそろ見せて欲しい」という想いが芽生え初めていたのではないだろうか。
なぜならば、「Nissan NEXT」は2023年度までの4か年計画であり、また「Nissan Ambition 2030」はあくまでもビジョンという名のイメージに止まっていたからだ。
その背景について、今回の会見での内田CEO、ルノーのルカ・デメオCEO、三菱の加藤隆雄CEO、そしてルノー会長でアライアンスオペレーティングボード議長のジャン=ドミニク・スナール氏の発言を聞いていると、ルノーと日産との出資比率に関する課題によって、アライアンスのポテンシャルが100%発揮できていなかった、ということがわかる。
例えば、ルノーのデメオCEOが「赤色と黄色、それぞれを作りたくても、結局(2色が混じって)オレンジになってしまう」という表現を使った。
これは、日産は日産、ルノーはルノーとして、それぞれがやりたいことを臨機応変に行い、そこに三菱がうまくかかわるために、抜本的な考え方(出資比率)を見直すことが必然だった、ということを示している。
そのうえで、登壇した関係者は各社がこれまで進めてきた事業戦略を着実にこなしていくことを、改めて強く協調したのが印象的だった。
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