車を運転する際に必ず操作するシフトレバー。近年、その「位置」が実に多様化してきている。
最も馴染み深いのは「フロアシフト」と呼ばれ、運転席と助手席間の床にシフトレバーを配置するタイプだが、近年では軽自動車やミニバンを中心に、カーナビモニターなどが設置されるパネル上に「インパネシフト」を採用する車も数多く存在するようになってきた。
ユーザーの利便性という面では、同じ位置にシフトレバーがあった方がわかりやすいにも関わらず、なぜシフトレバーの位置は車種によってバラバラなのか。
各タイプの長所と短所、そしてシフトレバーの位置が多様化している理由に迫る。
文:永田恵一
写真:HONDA、編集部、Daimler
定番「フロア式」以外も多彩!! 各シフトレバーの長所と短所は?
■フロアシフト
手を下に伸ばしたフロアにシフトレバーがある最もオーソドックスなタイプ。自動車の黎明期からあり、現在でも最大勢力となっている。
【長所】
・一目瞭然の操作性を持つ
・シフトフィールが重要で、素早くシフトしたいマニュアルトランスミッション(MT)車には最も適している
【短所】
・スペースを使うため、収納スペースを増やしたい、前後左右のウォークスルーをしたい車には不向き
■コラムシフト
ステアリングコラムにシフトレバーがある方式。1960年代頃までは乗用車でも一般的でフロアシフトと双璧を成していたが、1970年代に入りフロアシフトが勢力を拡大し、コラムシフトは押され気味に。
それでも後述するスペース効率の良さにより、前席を3人掛けのベンチシートとして乗車定員を増やしたいタクシーにも使われるクラウンやセドリック/グロリア、ワンボックスカー、トラックなどで採用されてきた。
コラムシフトは、1990年代に入り初代エスティマ(1990年登場)が採用。
同車が未来的なミニバンだったことに加え、当時起きたRVブームでミニバンやSUVが台頭したこともあり、初代エスティマ以降のミニバンや初代CR-Vなど、採用例が増えた。
【長所】
・フロアにシフトレバーを置かないことで空いたスペースを、3人掛けのベンチシートや前後左右のウォークスルー、収納スペースに使え、スペース効率に優れる
【短所】
・MT、AT問わず、上下操作だとシフトポジション(≒ギアの段数)が少なかったうちは問題なかったものの、変速機の多段化が進んだことで、“入っている位置がわかりにくい”という操作性の問題も
この問題を改善したのが1996年登場のタウンエースノア/ライトエースノアが採用した「イージーコラムシフト」だった。
イージーコラムシフトは、コラムATをフロアATと同じように前後にシフトするもので、操作性は申し分なかった。この方式は2代目エスティマや2代目CR-Vがシフトレバーをガングリップタイプに変え、進化が進んだ。
しかし、インパネシフトが普及してくるとコラムシフトは勢力が一気に弱まり、現在採用しているのは現行キューブとスポーツ系以外のメルセデスベンツくらいとなっている。
ただ、2005年登場の先代Sクラスからベンツが使っているコラムシフトは、合理的で非常に完成度の高いものである。
ステアリングコラムにウインカーとワイパーしかないためコラムシフトが増えてもシンプル。シフト操作もしやすく、ベンツが使い続けている理由もよくわかる。
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