クルマと道路は切っても切り離せないもの。交通ジャーナリストの清水草一が、毎回、道路についてわかりやすく解説する当コーナー。今回は日本の物流にとって深刻な問題になりつつある「2024年問題」の対策について考える。
文/清水草一、写真/フォッケウルフ
■2024年からトラック輸送ができなくなる?
今年は2024年。いわゆる「2024年問題」と呼ばれる物流業界の人手不足危機が始まる(はずの)年だ。具体的には、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働時間の上限規制が厳しくなり、「モノが運べなくなる」と言われている。
国の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」では、2024年問題に対してなにも対策を行わなかった場合には、営業用トラックの輸送能力が、2024年には14.2%不足し、2030年には34.1%不足する可能性があると試算している。
なぜこんなことになったのか、そして有効な対策はあるのかを、わかりやすく考察してみたい。
トラック輸送の危機は、バブル期にも大いに喧伝された。ドライバーがまったく足りずにフル回転状態となり、深夜、大型トラックが東名・名神をブッ飛ばして、重大事故も多発していた。
しかしバブル崩壊後、状況は急激に改善された。1990年にトラック運送業に関する規制が大幅に緩和されたことで、新規参入する会社が一気に増えると同時に、バブル崩壊で人手が余るようになったためである。
その後トラック運送業界は過当競争に陥り、運賃が下落。以前はトラックドライバーと言えば「稼げる職業」だったのが、徐々に時給単価が下落し、若者に敬遠されるようになって高齢化も進行した。ドライバー不足に陥るのは当然だった。
今回の時間外労働規制の強化は、そんな状況を改善するための規制強化策だが、1990年の規制緩和と逆方向に働くため、短期的には人手不足→輸送力不足になることが確実視されている。
コメント
コメントの使い方トラック運転手のなり手がいないのは、荷物の扱いも問題です。
運転手が、詰むときに荷室に直接積む「平積み」を荷主が依頼し、その積み下ろしを運転手にさせて手間がかかって時間がかかるのが問題。
だから、荷物をパレットや台車に積んで積み下ろしの時間を短くし、運転手の負担を減らさないとダメだといえる。また、賃金も安すぎる。
運送方法を工夫して、賃金を上げなければ、物流は止まることになる。