【酷暑と電化でバッテリー上がり急増中!!!】寿命を延ばすコツとトラブル回避術

 外気温35度以上の酷暑日が続き、そこに渋滞が組み合わさると、クルマのトラブルが急増する。

 2018年8月におけるJAF(日本自動車連盟)ロードサービスの主な出動理由を見ると、故障原因のダントツトップは「過放電バッテリー」(5万8118件)。ロードサービスの総出動回数20万4767件のうち、なんと約3割にも達している。

 つまり、日本の道路のどこかで、毎日2000台近いクルマが「バッテリー上がり」でJAFの救援を受けていることになる。これはもはや他人事ではない!

 なぜ夏場にバッテリーのトラブルが頻発するのだろうか? バッテリー上がりを事前に起きないようにするためにどうすればいいのか? と大いに気になっている人が多いと思う。

 そこで、バッテリーの寿命を縮めるクルマの使い方から、点検方法、寿命の兆候、メンテナンスフリーバッテリーや最近急増中のアイドリングストップ専用バッテリーの注意点まで、モータージャーナリストの鈴木伸一氏が解説します。

文/鈴木伸一
写真/ベストカーWEB編集部 Adobe Stock


電化が進んだからバッテリー上がりが頻発?

エアコン、オーディオ、インフォティメントシステム、安全装備など、電化が進み、かつてないほどバッテリーへの負担が大きくなっていることは事実

 エンジンはもちろんのこと、ボディ各部も電子制御され、かつパワーアシストも電動化されつつある近年のクルマは、電気がなければ動かないのが現実。主動力はあくまで化石燃料で動作するエンジンとはいえ、EVかと突っ込みたくなるほど電気エネルギーに依存しているのが実情なのだ。

 その大切な電気を供給しているのが「バッテリー」で、車載されている補機用バッテリーは電極に「鉛」を用いた二次電池(充電可能な電池)と喚ばれるタイプ。ケースの内部が6個の独立した部屋に分かれており、それぞれに「陽極板(+電極)」と「陰極板(-電極)」がセットされ、薄めた硫酸(希硫酸)が「電解液」として入れられている。

出典/GS YUASA

 その独立した部屋のことを「セル」と呼び、「電解液」が「+/-極板」に化学的に作用することで電気を蓄えたり(充電)、放電を繰り返し、「1セルで2V」を発生。

 つまり、充・放電作用は内部の「化学反応」によって行われており、1組みの極版の組み合わせで12Vを発生するのではなく、「2Vの蓄電池を6個直列に接続した構造」になっている。

 この「バッテリー」、蓄えられる電力量には限りがあり、「放電(電力の消費)」し続ければ必然的に空になって(上がって)しまう。

 このため、エンジンの回転力で動作する発電システムによって「充電」が行われていて、走行中は常に「充電状態」に置かれている。

 その「バッテリー」と「充・放電」の関係、貯水池に建造された「ダム」に置き換えて考えると理解しやすい。水をため込むダムが「バッテリー」、放水が「放電」で 川の上流から流れ込んでくる水が「充電」だ。

 上流から流れ込んでくる水の量と放水される水の量が同じなら、ダムの貯水量は一定で安定している。クルマもこれが正常な状態で、バッテリーに蓄えられている電力は常に一定で安定した状態にある。

 ところが、上流からの水の流入が減少したり、万が一にも途絶えてしまったら、貯水量は減る一方となる。

 クルマで起こる現象で表現すればエンジンの回転力で動作している発電機(オルタネーター)の駆動ベルトが緩んでスリップ、あるいは発電機本体の不良によって発電量が低下して正常な「充電」が行われなくなった状態。そのままでは「電力を消費」する一方で、バッテリーが上がってしまう。

 これとは逆に、上流からの流入量に変化はないものの放水量が増大してしまった場合、入りと出のバランスが崩れて、やはり貯水量は減る一方となる。クルマであれば発電量の少ないアイドリングや低速走行時に電気を使いすぎた状況で、これまたバッテリー上がりの原因となる。

 また、年数が経過したダムは上流から流れてきた土砂の堆積によって上げ底となり、溜められる水の容積が減少してくる。

 「バッテリー」も同様で、充・放電作用を担う「化学反応」は不純物の堆積などが要因となって時間の経過と共に徐々に鈍ってくる。

 その結果、取り出せる電気の量が減ってくる分、早く充電できるようにもなる。しかも、1セルが不良になっただけで、充・放電能力は極端に低下してしまうのだ。

 このようなバッテリーの劣化、使用開始から2~3年経過すると顕著になり、こまめにメンテナンスしたとしても防ぐことはできない。

 いわゆる「寿命」で、クルマにも乗るのが週一回あるいは月一回などといった使用状況では「バッテリー上がり」などのトラブルを起こしやすくなり、頻繁に補充電を行う必要もでてくる。

 また、バッテリーには満充電に達すると行き場を失った電気エネルギーがバッテリー液中の「水分」を電気分解するという現象が起きるため、使用していると液量は少しずつ減少。液面が徐々に下がってくるため、手入れを怠ると極板が露出して「サルフェーション」というトラブルも発生。性能が大きく低下してしまうため、定期的に点検・補充する必要がある。

バッテリーの寿命を縮めるこんなクルマの使い方は厳禁!

 もしも普段クルマに乗っていて、以下のようなクルマの使い方をしていたらバッテリーを寿命を縮めているので、心当たりのあるドライバーは注意してほしい。

■バッテリーの寿命を縮めるクルマの使い方
□1日に何度もセルモーターを使っている(放電過多)
□夜間しかクルマを使わない(充電不足)
□雨天時しかクルマを使用しない(放電過多)
□消費電力の大きな電装品を装着している(放電過多)
□いつも渋滞路を走行している(充電不足)
□ハイパワーなカーオーディオを付けている(放電過多)
□1度に走行する距離が少ない(充電不足)
□たまにしかクルマを使用しない(充電不足)
□規定より容量の小さいバッテリーを付けている(容量不足)

 例えば、真夏の炎天下、外気の温度34度の夏日にはエンジンルーム内に置かれたバッテリー液温は50度にまで達する。このような状況下、充・放電に伴う化学反応が活発になり、過剰放電を起こしやすくなる。

 つまり、電気を勢いよくはき出してしまうわけで、実質的な容量が低下している劣化したバッテリーだと簡単に上がってしまう。

 特に、様々なメカがエンジンルームにビッシリ詰め込まれた近年のクルマは熱が抜けにくくなっているため影響大。夏場の渋滞路のトロトロ走りの最中にバッテリー上がりを起すというトラブルが近年増えている。

 エアコンをガンガンに効かせ、ナビにオーディオ、TVやDVDを付けっぱなしなどといった高負荷状態で、ブレーキペダルを踏んだまま長時間停止といった電気の使い過ぎに、その主な原因がある。

 これに伴う電圧変動、各種制御系の動作不良を引き起こす要因となり、初期段階では警告灯が点きまくったりする。そして、スピードメーターをはじめとするコンビネーションメーターは電気で動いているため、一定の電圧以下まで下がってしまうとすべての動作を停止。

 速度はもちろんのこと、警告灯類も一切機能しなくなるため、トラブルの発生の有無さえ判断できなくなる。

 しかも、パワーステアリングも電動が主流となりつつある近年、走行中にバッテリー上がりを起こしてしまうと、エンジンが回っていたとしても突然、ハンドルが回らなくなる(極端に重くなり回せなくなる)ので要注意!

 とにかく「夏だからバッテリーは大丈夫」という考えは大間違い。レジャー先ではライトの消し忘れといったボンミスも冒しやすく、無意識のうちにバッテリーを傷め付けているケースも多々あるので注意が必要だ。

 もしも、3年以上使用したバッテリーで、セルの回りが遅くなったり、「クゥ~クゥ~」と苦しそうに回るようならヘタってきている可能性大。

 修理工場等でバッテリーテスターによる点検を依頼し、「交換が必要」と判断されるほど劣化していたならただちに交換を。

バッテリーの寿命が近づくと、こんな症状が出る

 バッテリーの寿命はクルマの使われ方によって大きく異なる。バッテリーの寿命は一般的に2~3年といわれているが、前述したように、夜間の走行が多い、近所の買い物だけに使っているなど、あまり長い距離を走らないクルマのバッテリーは寿命が短くなりやすく、交換時期が早まる可能性にある。

 また、バッテリーを使い続けると、状況によってはバッテリー内部のマイナス極板の劣化と収縮が進み、激しくひび割れることがあったりプラス極板も劣化して剥がれ落ちた状態になったりする。

 バッテリーの寿命が近づくと、いろいろな症状が現われる。エンジンを始動させる時にセルモーターの回転が弱くなる、ライトやランプなどの明るさがエンジンの回転数によって違う、パワーウインドウの動きが遅くなるなどの症状だ。

 またバッテリー液が減りやすい、バッテリー本体が膨らんでいるなど、外観から見て分かる異常もある。

 バッテリーが原因になるトラブルは2~3年を過ぎた頃から多くなるといわれているが、異常に気づきにくく、ある日突然エンジンがかからなくなるケースもある。

バッテリーの点検方法は?

 バッテリーを良好な状態で使用するには、定期的な点検が有効。補水タイプの一般的なバッテリーの液量は本体横についているUPPER LEVEL(最高液面線)とLOWER LEVEL(最低液面線)の間で足りているか、バッテリー上部にある+と-の端子の腐食や取り付け金具の緩みはないか、6つあるキャップの通気口に白い腐食物やゴミなどが付着してふさいでいないか、などを日頃から確認しておこう。

 バッテリー本体の外観に割れやヒビ、ふくらみなどの異常に気づいたり、性能低下を疑わせる症状が発生した場合は、できるだけ早く整備工場やガソリンスタンドなどで点検を受けることが必要だ。

メンテナンスフリーバッテリーのメンテナンスは一切不要ではない

 「MF(メンテナンスフリー)バッテリー」の普及によって「メンテはいっさい不要」と勘違いしている人が多い。しかも、新車時の初回車検が3年に延長されて以降、バッテリーの寿命は目に見えて向上。

 2年だった保証期間を3年に伸ばす必要が生じたことが、その一因と思われるが、近年のバッテリーは丁寧に扱えば5~6年は使えるため定期的な交換も怠りがち。

 「MFバッテリー」は液の減少が押さえられているだけで、定期的なチェックが必須であることに変わりはない。

 ベストなコンディションを維持するためにはメンテナンスが必要不可欠なわけで、距離を走ればチェックも必要となってくる。点検や交換を怠っていると痛い目にあうので注意!

最近急増中のアイドリングストップ車専用バッテリーの対策は?

出典/日本電池工業会

■バッテリーの保証期間
一般補水タイプ/2年2万km
メンテナンスフリー/3年6万km
ハイスペックタイプ/3年10万km、3年無制限
アイドリングストップ専用/18ヵ月または3万km、24ヵ月または4万km

※バッテリーにはさまざまな種類があるため、上記は目安としてください

 アイドリングストップとは、信号待ちや停車時にエンジンを停止するシステムのことで、このシステムを搭載しているアイドリングストップ車は燃費向上、CO2削減に有効なことはご承知のとおり。

 その反面、エンジン停止中はバッテリーからナビやエアコンなどに電力が供給されるため、走行中に発電機から短時間で電力を蓄える必要性がある。

 このため、通常のバッテリーと比較して頻繁に充電と放電を繰り返すため大きな負担が掛かる。このため、アイドリングストップ車には高い耐久性と、充電・放電性能が必要となるのだ。

 アイドリングストップ車のバッテリーは過酷な使用条件に耐えるよう、部品の耐久性と性能ランクは普通のバッテリー以上に高められており、エンジン始動と停止を繰り返すので、バッテリーの率容量が大きいのが特徴。

 内部抵抗を少なくすることで、従来のバッテリーよりも多くの電流を流すことができる。

 また、蓄えられた電力量が足りないときはアイドリングストップをしなかったり、停止中でも充電を優先するなど、普通のクルマのバッテリー以上に充電回復性能が高められている。

 しかし、通常バッテリーのハイスペックタイプやメンテナンスバッテリーに比べると、 アイドリングストップ専用バッテリーの寿命は18ヵ月(1年6カ月)または3万km、高性能タイプで24ヵ月(2年)または4万kmと短いのがタマに傷。

 しかもアイドリングストップ車のバッテリー交換費用は、普通のバッテリーの2倍の価格、軽自動車で8000~1万5000円、大型車では2万~3万円程度の費用がかかる。

 では、自分のクルマに装着されているバッテリーが通常のバッテリーか、アイドリングストップ専用バッテリーなのか、見分けるにはどうすればばいいか?

 実は通常のバッテリーとの外観上の差はない。そのため、バッテリーのサイズ表記で見分けるしかないのだ。

■65D23R(通常のバッテリー)
65:性能ランクと呼ばれ、バッテリーの総合性能を数字で表記。50未満は2刻み、50以上は5刻み。容量ではないが、数字が大きくなるほど高性能で容量、始動性能とも上がる
D:バッテリーの短側面のサイズでA~Hまであり、Aが最小、Hが最大
23:バッテリーの箱の長辺の寸法で単位はcm
R:バッテリーのプラス端子を手前にした時に上から見てプラス端子が右側にあるとR、左側にあるとLとなる。特殊端子は無表記

通常のバッテリー(JIS規格)の表記(出典/GS YUASA)
欧州車のバッテリー表記 (出典/GS YUASA)

 それに対し、アイドリングストップに対応した専用バッテリーは、一般のバッテリーと区別するために新たな型式表示が規定された。

■Q-55R(アイドリングストップ専用バッテリー)
Q:バッテリーの短側面サイズで、Qは一般バッテリーのD23に相当。アルファベットがまったく違うので要注意
55:性能ランクで、一般バッテリー同様に大きくなるほど高性能
R:端子の位置に関しては一般バッテリーと同じだが、Lの場合は無表記になるので要注意

 アイドリングストップ車対応バッテリーの表記方法は簡素化されているが、短側面のサイズ表記、端子表記が一般バッテリーと違うため注意が必要だ。

 さて、このアイドリングストップ車専用バッテリーを長持ちさせるにはどうしたらいいか?

「せっかく燃費向上させるのに解除して走るのは本末転倒」と思われるかもしれないが、アイドリングストップを解除するのが最も有効だ。

 信号待ちでもバッテリーに充電させることができるからだ。特に大渋滞時には効果を発揮する。もちろん、信号や渋滞のない道路を長距離走ることも好ましい。

 また、2週間に1回程度、少なくとも1カ月に1回程度はフル充電することで電池の劣化を防ぐことができる。

万が一バッテリーが上がってしまった場合

もしバッテリーが上がってしまったら助けてもらうしかない。そのためにもブースターケーブルを積んでおこう

 実際にバッテリーが上がってしまった場合だが、ATは押しがけできないため、他車から電気をわけてもらうしかない。

 このため、「ブースターケーブル」あるいはリチウム電池採用でコンパクトながらジャンプスタート可能な「携帯バッテリー」を車載しておく必要がある。

 そのような事前の準備をしてなかった場合、JAFのロードサービスを呼ぶしかないので、すぐに連絡できるよう連絡先のメモくらいはクルマに常備しておきたい。

 ちなみにJAFのロードサービスを受けるのは、JAFの会員になることが必要だ。個人会員のクレジットカードによるオンライン入会なら、入会金1500円、年会費4000円。

 会員になると、一般道でのバッテリー上がり、パンクやキーの閉じ込み、高速道路での燃料切れなど、さまざまなトラブル対応が無料で受けられる。

 例えば夜間にバッテリー上がりでJAFを呼んだ場合、非会員だと1万4940円かかるが、会員なら年会費4000円で、基本料+作業料は無料。

 ロードサービス救援コールは0570-00-8139(全国共通、年中無休、24時間受付、通話料は有料)、または短縮ダイヤル#8139 (一部のIP電話・携帯電話からはご利用できない) のほか、アプリやFAXでも連絡可能。

 救援依頼は何度でもOK。愛車以外、レンタカーや社用車運転中でも使うことができ、友人のクルマに同乗中でもOKだ。

トヨタのハイブリッド車は、救援は受けられるが救援はできない!

補器用バッテリーはプリウスがエンジンルーム、アルファードHVやレクサスHV、クラウンHVはラゲッジルーム左側に設置されている

 これだけハイブリッド車が普及すると、ハイブリッド車のバッテリー上がりが気になるが、トヨタのハイブリッド車に乗っている方は注意が必要だ。

 ハイブリッド車は駆動用バッテリーと補機用バッテリーの2種類ある。まずひとつが、タイヤを駆動するために必要な大容量&高電圧な「駆動用バッテリー」で、もうひとつが、ガソリン車同様の電気系統に採用されている12Vの「補機用バッテリー」だ。

 補機用バッテリーは、ECUやライトなどの電装系を動かしているが、メインスイッチをオンにした時にハイブリッドバッテリーにあるメインリレーを作動させて、インバーターやDC-DCコンバーターなどへの回路を通じさせる役目をする。そのため、補機用バッテリーがあがると、駆動用バッテリーの残量が十分でも起動できなくなる。

 この補機用バッテリーは、イグニッションオフの状態でも徐々に放電していることはよく知られているが、この現象はハイブリッド車であっても同じ。そのため、長期間放置すると、ガソリン車と同様に補機用バッテリーが上がってしまうのだ。

 プリウスの取扱説明書には「駆動用電池の充電について」という注意書きに「車両を長時間放置すると、少しずつ放電します。そのため少なくとも、2〜3カ月に一度、約30分間または16kmほど運転してください」とある。

 もしバッテリー上がりが起きた場合、補機用バッテリー上がりであれば、他車からの救援によるジャンプスタートが可能。これは普通のクルマとまったく変わりはない。

 ここで注意してほしいのは、トヨタ系のハイブリッド車(THS/THS-II)の場合、他車からジャンプスタートによる充電を受けられるが、他車に救援は行えない。

 これは、ガソリン車とHVでは電気系統が違うためで、他車を助ける時に一瞬流れる大電力に12Vの電気回路が耐えられず、故障する危険があるからだ。

 12Vバッテリーでエンジン始動も行っているハイブリッド車は、普通のクルマと同様に救援することができる。

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