いままさに東京五輪開催の2020年に向けて、ひとつのトンネルが動き出した。
3月27日、東名・青葉ICと第三京浜・横浜港北ICを結ぶ「横浜環状北西線」のトンネルを掘り進めるシールドマシンが発進した。
新たな道ができるその現場は、どのようになっているのか? 掘削現場を訪れた。
文:編集部/写真:西尾タクト
大きな開通効果が見込まれる横浜環状北西線
3月に首都高横浜北線が開通した。この北線は、首都高横羽線の生麦JCTから第三京浜の横浜港北ICを結ぶ路線だ。
そして、この北線の開通効果をさらに大きくさせると期待されているのが、横浜環状北西線なのだ。
北西線は、横浜港北ICから東名高速の横浜青葉IC間を結ぶ約7.1kmの路線。
東京五輪が開催される2020年に開通予定で、【図1】のように、これまで東名から大黒ふ頭に向かおうとすると、渋滞が頻発する保土ヶ谷バイパスを通らなくてはならなかった。
それが、北西線から北線を経由できることになり、所要時間も概ね30分程度短縮。さらには交通の分散効果も期待できるのだ。
計画公表から約12年。ついに建設が始まる
このように大きな開通効果が見込まれる北西線の概略計画が公表されたのは2005年8月。
その後、2011年に都市計画が決定し、翌2012年に都市計画の事業認可、そして沿線住民などへの説明会を経て、ようやく2017年3月にトンネルの掘削まで漕ぎ着けたのだ。
田園地帯に掘削現場現わる。地上から泥水を送って掘る
東名横浜青葉ICのすぐ近くの田園風景が広がる一帯に、そのトンネルの“発進基地”はあった。
今回、北西線のトンネル掘削に使われるのは「泥水式シールドマシン」と呼ばれるもの。
泥水式……と言われてもあまりピンと来ないが、端的に言うと、泥水をシールドの先端に送り込んで、その圧力でトンネルを掘り進めていくというもの。
単純にトンネルを掘り進めようしても、地中の水圧や土圧がかかり、トンネルの掘削現場が崩されてしまう。
そこで、それらの圧力に対抗して、掘削現場を保つために泥水の圧力を使う。これが泥水式とよばれる工法なのだ。
そして、ついにそのシールドマシンとご対面。至近距離で見ると圧巻のサイズ感だ。
シールドマシンの仕様
- ■外径:12.640m
- ■重量:2300t
- ■総推進力:18000t
- ■ジャッキ速度※:最大52mm/分
- ※ジャッキとは、セグメントに押しつけて伸び縮みすることで、シールドマシンを前進させるための装置
重量2000tのシールドマシン本体は、現場までバラバラに運んで来られた。トラック1台の積載キャパシティを約20tと見積もっても、100台以上のトラックでパーツを運んできたことになる。
それを考えただけでも如何にシールドマシンが巨大かが想像できるだろう。
マシンの前部には特殊合金でできたビットと呼ばれる爪がたくさん付いており、これがゆっくり回転することでトンネルが掘り進められていく。
直径約12.6m、本体全長約13mのこのマシンで、昼夜を通して掘削作業を行い、1日で掘り進められる距離は、それでも約20mだ。
東名高速横浜青葉ICから第三京浜港北ICまでの全長は3890m。直径約11mのトンネルを約15カ月間かけて完成させてゆく。
ひとたびトンネルが開通してしまえば、その完成までの苦労に思いを馳せる機会は少ない。
しかし、実際に現場に赴くと、人々の生活をより便利にするために、実に多くの努力や知恵が動員されていることをまざまざと実感させられる。
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