■ハイブリッドを足しても世界シェアは2.6%
まず、統計の数字を見てみよう。自工会のデータをサクッと調べると、2016年に世界全体で4輪車は約9500万台生産されたが、そのうちEVは47万台、シェア0.5%という存在であることがわかる。
内燃機関禁止宣言の内容を「内燃機関だけで走るクルマを禁止」と解釈して、これにハイブリッドとPHVを足すと、合計で約250万台。これでもシェア2.6%に過ぎない。
フランスとイギリスは先進国だから、現状でも登録車に占めるEV比率は(世界平均と比べると)高いほうだが、それでもフランス1.5%、イギリス1.4%というスケール。
それをあと20年で内燃機関車を全廃するといってるわけだから、これがいかにムチャな政策であるか、まぁ小学生でもわかるよね。
新エネルギー車の開発ももちろん重要だ。しかし、現実を冷静に見れば、圧倒的多数を占める内燃機関の効率とクリーン度を高めることが最も優先されるべき課題だし、そこにこそビジネスチャンスがある。
これこそが、マツダが「サステイナブル〝Zoom-Zoom〟宣言2030」で言いたいことなんだと思う。
■現状では、EVは金持ち先進国の道楽だ
実際、東南アジアやインドなどを見て歩くと、クルマをめぐる環境問題には課題が山積みで、とても「内燃機関をEVに置き換える」なんて発想は出てこない。
こういう新興国で求められているクルマは、150万円くらいで家族7人が乗れるミニミニバン。同じ価格帯でコンペティティブなEVが出せれば話は別だが、まだまだEVは「金持ち先進国の道楽」以上のものではない。
唯一、中国だけは政府主導で強力にEV化を進めているから、2020年代はじめに年間200万台くらいは売るのではないかと予測されているが、そもそもの問題としてEVを走らせるための電気をダーティな石炭火力で発電している現状をなんとかしなければ、あの悪名高い大気汚染にはまったく効果がない。
■環境問題は車だけの話ではなく社会構造全体に及ぶ
この、発電のためのエネルギーに何を利用するかは、とても重要なポイント。EVはそれ単体で見ていると、たしかに排ガスを出さないクリーンな乗り物に見えるが、それを動かすための電気をどうやって作るかによって、環境負荷が大きく変わってくる。
最もクリーンな原子力発電はフランス以外の先進国ではきわめて旗色が悪いし、水力風力太陽光といった再生可能エネルギーは、主力とするには力不足。
結局、化石燃料を燃やす火力発電がメインとならざるを得ず、そうなるとCO2排出量は内燃機関と大差なくなってしまう。
なんのために内燃機関をEVに置き換えるのかといえば、いうまでもなくCO2と有害な排ガスを減らし環境を改善するためだよね。
いまはEVシェア0.5%だから誰も検証できないけど、EVが多数派になった時、本当に環境が改善されるのか? このあたり、もっと真剣に検証してほしいものです。
■頑張っても20年だとシェア1割か
さて、こんなふうに統計数字やエネルギー収支をじっくり吟味すると、ひとつの結論が見えてくる。
すなわち、ひとつ間違いなく言えることは、フランス・イギリスが内燃機関を禁止するとブチ上げた2040年、それがスンナリ達成される可能性はかぎりなく低いということ。
もちろん、国家政策だから法律や税制によってそれを無理やり達成させることは可能だろうが、それをやった時の国民や自動車メーカーの負担増を考えると、あまりに非現実的といわざるを得ない。
また、いろんなシンクタンクが今後20年のEV販売台数を予測しているが、最も楽観的な数字でも500万~1000万台くらい。
頑張ってもEVは世界シェア1割だよね、というのが業界のコンセンサスだ。
コメント
コメントの使い方