「別会社になるくらいの抜本的改革が必要」トヨタ豊田章男会長がダイハツの不正問題に言及

「別会社になるくらいの抜本的改革が必要」トヨタ豊田章男会長がダイハツの不正問題に言及

 2023年12月20日に広く明らかになったダイハツの認証不正問題を受け、トヨタ自動車の豊田章男会長がベストカーWebの取材に応じた。「絶対にあってはならない行為、深く謝罪したい」とユーザーおよび関係各所へのお詫びを口にするとともに、ダイハツに関して「別の会社になるくらいの抜本的な改革が必要だ」と強調した。以下、本誌に語ったコメントを紹介する。

文/ベストカーWeb編集部、画像/ベストカーWeb編集部、ダイハツ工業

【画像ギャラリー】今回ダイハツで認証検査不正が見つかった車種一覧と主なダイハツ車種(12枚)画像ギャラリー

■トヨタには引けてダイハツには引けなかった「アンドン(行燈)」

 冒頭、トヨタ自動車の豊田章男会長は、「”安全”は自動車にとって一番重要な要素であり、今回の不正はお客様の信頼を裏切る行為であって、断じて許されるものではない。トヨタとしても大きな責任を感じている」と語った。

 今回の件で(2023年4月に本件が発覚し、同年12月に第三者委員会の調査報告書が提出されるまで)公表が遅れた点については、「早く公表したほうがいい」とアドバイスしたものの、「トヨタ中嶋裕樹副社長が会見で述べたとおり、トヨタがダイハツの中に入り、膿(うみ)を出し切る覚悟で調査を行ったことで時間がかかってしまった」と説明した。

 そして、「今回の問題の本質はどこにあるのか」についてこう語った。

「トヨタには、生産ラインで異常があった場合に従業員が”アンドン”(行燈/作業工程で異変を感じた場合の緊急停止装置とそれを知らせる電光掲示板のこと。天井から紐がぶら下がっていて、それを引っ張ることで生産ラインが止まり、工員の目に付く位置に掲示された電光掲示板が赤く点灯することからこの名がついた)を引いてラインを止め、スタッフが集まって原因を究明するシステムがありますが、ダイハツには異常があってもアンドンを”引けなかった”ということだと思います。

 ダイハツにも、制度としてはそういう機能があると思うのですが、本当にアンドンを引っ張ってラインを止めると叱られてしまう、そんな環境にあったのではないかと想像します。トヨタでも、わたしが入社した頃はそんなところがありました。何かあったらこれを引け、と言われたので引いたら叱られた。だからこれは、上司次第なんだと思います。」

 さらに豊田章男会長はこう続ける。

「TPS(トヨタ生産方式)の目的は”効率”だとよく誤解されます。しかしTPS徹底の一番の目的は、仕事を楽(らく)にすることなんです。”楽”、つまり楽しく仕事をすれば効率もよくなる、という考え方です。

 わたしがトヨタ自動車の社長になって、アメリカでリコール問題がおき、安全がいかに重要かを痛感しました。そして、それまでの”量”や”原価”を重視したクルマづくりを改めました。優先順位を、(1)安全、(2)品質とし、(3)量や(4)原価はその下と位置づけ、従業員に徹底しました。安全や品質を最重要視することは、自動車会社として当たり前のことなんです。そういう当たり前のことを当たり前にするためには、経営陣が従業員としっかりと向き合うことが重要なんだと思います」

■豊田章男会長がダイハツ滋賀工場で話した「告発してくれてありがとう」

 2023年4月に認証不正問題が発覚してから、豊田章男会長は問題の真相究明と従業員の動揺を収めるために精力的に動いてきたという。

 実験や生産現場のあらゆる工程を見直し、約90万件の項目確認を実施、そうして洗い出されたのが今回公表された63車種・3エンジン、174件におよぶ不正行為だったとのこと。

 この174件についてはダイハツ、トヨタ、第三者認証機関(テュフ・ラインランド・ジャパン株式会社)により安全上問題がないか再確認され、1車種(キャスト)について側面衝突試験における「乗員救出性に関する安全性能(ドアロック解除)」が法規に適合していない可能性が判明した。

 豊田章男会長は、いまダイハツ車へ乗るユーザー、納車を待っていたユーザー、事態を知らされていなかった販売店のスタッフやダイハツ従業員へ深く謝罪。「迷惑をおかけして本当に申し訳なく思います」と語った。

「どうしても不安になってしまう部分があると思います。何かわかり次第すぐに情報を出していくので、正しい情報をしっかり受け取ってほしい」とした。

 ダイハツは認証試験の不正行為における問い合わせ用専用ダイヤルを開設し、質問を受け付けている(フリーコール0120-055-789/受付時間:9:00~21:00/年中無休)。

 また本件発覚後、不正の対象車種となったヤリス・エイティブ(ヤリスのセダン)を生産するタイのゲートウェイ工場を訪れ、従業員を前に「きみたちの作ったクルマが悪いわけではない。これからもしっかりといいクルマを作ってほしい」と声をかけた。

 さらに衝突安全の不正対象であるロッキーHV、ライズHVを生産するダイハツの滋賀工場を訪れ、従業員の前に立ち「この中に告発者がいらっしゃると思います。ほんとうに言ってくれてありがとう」と話したという。

 最後にダイハツの今後を問うと、「ダイハツは別の会社になるくらいの覚悟で抜本的改革をすべきだ」と断言した。

 12月21日、国土交通省はダイハツ大阪本社へ立ち入り検査に入り、認証試験の不正行為について調査を開始。行政処分も検討しているという。ダイハツは全車種の出荷を停止。国内全工場の生産を止めてこの調査に協力し、結果と処分を待つことになる。

 人もモノも時間もコストも削り、利益を生むことに走ってしまったと言われても仕方のないダイハツの不正問題。今後トヨタがダイハツに指導力を発揮し、信頼回復に向けて、どのような手を打ってくるのか、引き続き注目したい。

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