■プライバシーを侵害しかねない可能性もある
筆者はボッシュのCDRアナリストという資格を取得しています。CDRとは、車載されている「EDR(イベント・データ・レコーダー)」に記録されているデータを引き出し解析するクラッシュ・データ・リトリーバルのことで、そのために必要な機器などを扱うことができる資格がアナリストです。
EDRはアメリカで普及した機構で、エアバッグが搭載されているクルマにはほぼセットで搭載されています。ではアメリカではEDRの搭載が義務づけられているかといえば、そうではありません。EDRの搭載は強くすすめられてはいますが、義務ではありません。
ただし、EDRを搭載するなら一定の基準を満たすように法律で定められています。EDRには事故時のさまざまなデータが記録されますが、その際にとても気遣われていることがあります。それは「プライバシーを侵害しない」ということです。
多くの場合事故時に運転していた人間には責任がありますが、助手席に乗っていた人間には責任があることは少ないでしょう。
ですので、どのような人が助手席に乗っていたか? はあまり詳しいことがわからないようになっています。
EDRには録音機構や録画機構はありません。それはプライバシーを侵害しないようにするためです。録音や録画ができるドライブレコーダーを自動車メーカーが標準化してしまうということは、一定の条件でプライバシーを侵害しかねない可能性もあります。
ハリアーがどのような思想でドライブレコーダーを標準化したかは不明ですが、少し珍しいケースであると感じます。
もし、事故時の証拠として役立てるためにドライブレコーダーを標準化するのであれば、解像度から記録時間、記録を開始するためのトリガーなどなどさまざまなことを法律で決めなければならないでしょう。あればいい……というものではありません。
■販売現場との兼ね合いがあるため
また、実際には装着率の高い装備でありながら、販売店の利益や販売促進ツールに使いやすいものは販売店オプションとしていることも多くあります。
たとえば、フロアマットなどは多くの人が注文する装備であり、また必需品でもあるのに販売店オプションとなっています。
これは販売店オプションとすることで販売店の利益を増やしたり、値引きの代わりにサービスすることなどで、クルマ本体の販売ツールとして使いやすいものであったりするのです。
つまり、5万円の値引きだと収益はまるまる5万円減るが、3万円で仕入れて5万円で売っているマットなら収益は3万円しか減らない……といった具合です。
ドライブレコーダーもETC車載器もフロアマットも、販売現場との兼ね合いもあり標準装備品になりにくいのです。
ドライブレコーダーを装着すれば、事故やあおり運転の証拠になると思っている方も多いようですが、正しくは「証拠になることもある」なのです。
裁判でドライブレコーダーのデータを使う場合には、その映像がたしかに当該車両に搭載されたドライブレコーダーで撮影されたものであるという客観的な証明が必要になることもあるでしょう。
裁判などの場合は、自分が有利に思う証拠なら提出していいでしょうが、自分が不利になる証拠は提出する必要はありません。しかし、提出しなければ裁判官の心証が悪くなる可能性もあります。
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