トヨタルーミー&タンク、ダイハツトール、スバルジャスティの4姉妹車
背の高いコンパクトカーのトヨタルーミー&タンク/ダイハツトール/スバルジャスティの4姉妹車にも注目したい。
ダイハツが開発したトールをトヨタにOEM供給したのがルーミー&タンク。そもそも、この2車種は取り扱う販売店が異なり、ルーミーはトヨタ店とカローラ店扱い、タンクはトヨペット店とネッツ店扱いとなっている。
東京地区では2019年4月から全車種全店扱いになり、2020年5月からは全国のトヨタで全店扱いになる。さらにスバルにもOEM供給され、ジャスティとして販売されている。
発売は2016年11月だから今では3年を経過するが、好調な売れ行きを保つ。2019年の登録台数は、1ヵ月平均でルーミーが7638台、タンクは6210台、トールは2228台で、ジャスティは240台と低いものの、4姉妹車合計では1ヵ月平均で1万6316台に達した。
2019年の小型/普通車における車名別販売ランキングでは、1位はプリウスで1ヵ月平均1万466台であった。
ルーミー4姉妹車を合計すると1万6000台を超える。ヴォクシー/ノア/エスクァイアの3姉妹車を合計しても、1ヵ月平均で1万5265台だから、軽自動車を除いたボディタイプ別登録台数ではルーミー4姉妹車を合わせると1位になる。
■2019年10~12月のトヨタルーミー&タンク、ダイハツトール、スバルジャスティの販売台数
●2019年10月:ルーミー/3位6962台、タンク/5位5420台、トール/26位2071台、ジャスティ/191台
●2019年11月:ルーミー/5位7132台、タンク/8位6114台、トール/39位1253台、ジャスティ211台
●2019年12月:ルーミー/7位6015台、タンク/12位4695台、トール/39位1229台、ジャスティ180台
ダイハツ製の小型車が売れる理由
このようにダイハツ製小型車が好調に売れる背景には、複数の理由がある。筆頭に挙げられるのは、車両のコンセプトが国内市場のニーズに合っていることだ。
2019年に国内で新車として売られたクルマの内訳を見ると、軽自動車が37%で最も多く、次いでコンパクトカーの25%、SUVの15%と続く。
小型/普通車ではコンパクトカーとSUVが人気のカテゴリーだから、コンパクトなSUVを開発すれば好調に売れると考えられ、ヴェゼルやC-HRは人気車となった。
それでも全幅は少しワイドな3ナンバー車だから、コンパクトなSUVを求めるすべてのユーザーが納得したわけではない。
その点でロッキー&ライズは、実用的な5ドアボディを備えた数少ない5ナンバーサイズのコンパクトSUVだ。
全長も4mを下まわる。クロスビーも同様だが、空間効率を追求したデザインだから、車内が広い代わりにSUVらしさはロッキー&ライズよりも少し希薄だ。
ロッキー&ライズはRAV4をコンパクトにしたようなSUVの典型的なスタイルだから、幅広い年齢層から支持され、特にトヨタブランドのライズは好調な売れ行きになった。
「トヨタの企画力+ダイハツの開発力/製造力+トヨタの販売力」で売れた!
ルーミー系4姉妹車は、全長が3700mm(標準ボディ)、全幅は1670mmの小さなボディでありながら、全高は1735mmで背が高く、後席側のドアはスライド式だ。
この小さなボディと高い天井、スライドドアを装着する手法は、売れ筋の軽自動車と共通化されている。2019年の国内販売で1位に入ったN-BOX、2位のタント、3位のスペーシアは、すべてこのタイプだ。
そして全長が4m以下のコンパクトカーで、高い天井とスライドドアを備えた既存の車種はソリオだけなので、トヨタブランドのルーミー&タンクが加わると絶好調に売れた。
以上のように5ナンバーSUVのロッキー&ライズ、後部にスライドドアを備えた背の高いコンパクトカーのルーミー系4姉妹車は、いずれも国内市場のニーズに合っていて、なおかつ類似車種が少なかった。
そこをダイハツが商品化して、全国に約4900店舗とされるトヨタディーラー網を使って販売したから売れ行きを伸ばせた。
今のダイハツはトヨタの完全子会社だから、トヨタの開発/製造部門のひとつに属する。
その意味でルーミー系4姉妹車とロッキー&ライズは「トヨタの企画力+ダイハツの開発力/製造力+トヨタの販売力」が結集して人気車となった。
その一方で別の見方もできる。ルーミー系4姉妹車、ロッキー&ライズとも、過去に切り捨てた商品の焼き直しとも受け取られるからだ。
例えばルーミー系4姉妹車は、1999年に発売されて2005年に終了したファンカーゴに商品形態が良く似ている。
ファンカーゴはスライドドアを装着していないが、全長が4m以下で全高が1700mmのボディ、後席をコンパクトに畳んで得られる広い荷室など、主要機能はきわめて近い。
この後ファンカーゴは中途半端に背の低いラクティスにフルモデルチェンジされ、人気を下げてしまった。
また後席にスライドドアを備えた実用的なコンパクトカーとしては、ユニバーサルデザイン(誰でも使いやすく感じられるデザイン)の考え方を盛り込んだラウムもあった。
1997年に初代モデルが発売され、2003年に2代目が登場したが、2011年頃に販売を終えた。
この後にポルテが登場して、現行型は姉妹車のスペイドを含めて2012年に発売されたが、ボディの左側は1枚のスライドドア/右側は前後2枚の横開きドアという構成は個性的だ。
低床設計で優れた商品だが、魅力が分かりにくく売れ行きも伸び悩み、ルーミー系4姉妹車の登場を招いた。
コンパクトなSUVも、1994年に発売された初代RAV4は、5ナンバーサイズと新鮮な外観デザインが注目されて人気車となった。
その後は北米など海外市場を重視してボディを拡大させ、国内販売を終えた。SUV人気がさらに高まったのを受けて、現行型が2019年に復活したが、開発段階で国内販売することは考えておらずボディは大柄だ。
コンパクトなSUVでは、1997年にダイハツテリオスが発売され、1999年にトヨタブランドのキャミを加えた。後輪駆動ベースのコンパクトなオフロードSUVで、売れ行きは伸び悩んだが、走破力の優れた小さな5ドアボディは積雪地域の移動手段に最適であった。
テリオス&キャミは、2006年にフルモデルチェンジを行ってダイハツビーゴ&トヨタラッシュになった。これは2016年に販売を終えている。
後輪駆動ベースの4WDを備えたSUVだから、悪路走破力が高い代わりに後席は狭く、ロッキー&ライズの方が前輪駆動ベースで実用的だ。それでもコンセプトには重複する面がある。
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