「退屈なクルマを絶対つくらない」孤高のメーカー マツダの強みとは?

6/最新のクリーンディーゼル、SKYACTIV-Dと夢のガソリンエンジン、SKYACTIV-X

SKYACTIV-Dのキャピティピストンやナチュラルサウンドスムーザーにもマツダのこだわりを感じさせたが、究極はこの理想のエンジンとされるHCCI技術を量産化したSKYACTIV-Xだろう
SKYACTIV-Dのキャピティピストンやナチュラルサウンドスムーザーにもマツダのこだわりを感じさせたが、究極はこの理想のエンジンとされるHCCI技術を量産化したSKYACTIV-Xだろう

 マツダが凄い、と思わせる技術の1つは理想の内燃機関を追求していること。つまり、もう改良する余地があまりないといわれているエンジンを探求し、世界一のエンジンを目指し続けていることだ。

 最も分かりやすいのは、スポーツカーのロードスターを除く全車にクリーンディーゼルのSKYACTIV-Dを用意したことだ。

 排気量は、1.5L、1.8L、2.2Lの3種類で、すべて実用回転域の駆動力が高く運転しやすい。燃費も優れ、軽油は価格が安い(正確には燃料価格に含まれる税金が安い)ため、出費も抑えられる。

 現行マツダ車のクリーンディーゼルエンジンは、圧縮比が14~15と低く、窒素酸化物の発生も抑えた。

 尿素水溶液などを使った後処理装置も不要だ。合理的でディーゼルとしては高回転域の吹け上がりも良く、幅広いユーザーが運転しやすい。

 さらに輪をかけて、凄いと我々を驚かせたのがSKYACTIV-Xである。ガソリンを通常の火花点火ではなく、ディーゼルエンジンのように圧縮着火させるHCCI(予混合圧縮自動着火)と呼ばれる燃焼を実現したからだ。

 HCCIは燃料の割合をきわめて薄くした混合気を自己着火させて、燃費と環境性能を両立させることができる。

 理想の燃焼方式といわれたが、温度など一定の条件でしか実現できず、通常の火花点火との切り替えが難しいことなどから、これまで実用化できなかった。

 マツダが実現した「SPCCI(スパークプラグ制御圧縮着火)」という方式では、スパークプラグによる火花点火で生じる火の玉が膨張する力で圧縮着火を起こす。いわば逆転の発想だ。従来のSKYACTIVガソリンエンジンに比べ20~30%低燃費化でき、ディーゼルエンジン並みの出足のよさを実現している。

 ただし、スーパーチャージャー、マイルドハイブリッド、ディーゼルに使われるような粒子状物質を浄化するガソリンパティキュレートフィルターなどを採用するため、価格は2Lノーマルエンジンに比べて約68万円高いところがネックとなっている。

7/クルマ好きの心を捉えるMTや制御技術

マツダはクルマ好きのために6速MTを用意しているのが凄い
マツダはクルマ好きのために6速MTを用意しているのが凄い

 マツダがクルマ好きことをちゃんと思ってくれている、と感じるのはしっかりとCX-8以外の全車に、6速ATと併せて6速MTも用意していること。

 一部のグレードを除くと、ATとMTの価格を共通化したことも特徴だ。「運転が好きな人」には魅力だろう。

 副産物的な効果だが、MT車は乱暴に扱うと発進できない。AT車はDレンジに入れてアクセルペダルを深く踏めば急発進するが、MT車を急発進させるには、クラッチペダルを含めてデリケートな操作が必要だ。

 したがって、MT車には急発進事故を防ぐ効果もある。さらにいえばMTの操作は脳と運転神経の老化防止にも効果があり、マツダはこの研究も行っている。

 マツダ車の「運転が好きな人」に向けた配慮を実感させるのがGベクタリングコントロールだ(今はブレーキ制御を伴うGベクタリングコントロールプラスに進化した)。

 走行状態に応じてエンジン出力やブレーキが細かく自動制御され、安定性を高めて左右方向の揺れなども低減させる。

 例えば路面の荒れた場所で、進路修正のためにステアリングホイールを動かすと、瞬間的にエンジン出力を絞る。前輪の荷重が増えて進路修正が効果的に行われ、それ以上の操舵をしなくて済む。

 雪道の車線変更でも、出力制御により、ステアリングホイールを回し始めた時から車両の向きが正確に変わる。そのために過剰に転舵して、この影響で後輪が横滑りを生じるような不安定でムダな動きを抑えられる。

 この種の制御は多いが、マツダで注目されるのは、制御を意識させないことだ。古い考えでは、ユーザーに装着を意識させたい(有り難みを演出して買い得な商品を手に入れたと思わせたい)意図でセッティングした。

 そうなると機敏に曲がるなど玩具的な面白さは演出されるが、長く使うと疲れたり飽きてしまう。不自然な運転感覚は危険にも結び付く。マツダはそこを踏まえて設定され、制御が出しゃばらない。

 4WDも同様だ。さまざまなセンサーを使い(ワイパーの作動状況や外気温度も含む)、路面状態を正確に把握して、前後輪の駆動力配分を最適に行う。駆動輪の滑りが最小限度に抑えられ、雪道では、燃料消費量が2WDより少ない場合もある。

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