かつてはF1も開催された世界屈指の難コース、ニュルブルクリンク。
現代では、日産 GT-Rなど市販車開発の舞台としても知られ、ニュルにおける『市販車最速ラップタイム』が、ひとつの称号にもなってきた。
そうしたなかで2017年4月、新型のシビックタイプRがニュルFF最速タイムを記録。
今、『市販車最速』ではなく『FF最速』がにわかに熱気を帯びているのはなぜなのか!?
文:鈴木直也/写真:Honda、Renault、VW
ベストカー2017年7月26日号
GT-Rやポルシェが挑戦!! 「FF」ではなかったニュル最速争い
量産車でニュルのタイムを競いはじめたのは、たぶんR33 スカイラインGT-Rあたりがハシリだと思う。
サーキットで速いのはレーシングカーに決まってるんだから、最初は「何をバカなことを……」とも思ったが、2008年にR35 GT-Rが7分29秒3を叩き出したあたりから、世間の注目度がにわかにアップ。
プライドを刺激された地元のポルシェが挑戦に応じたのをはじめ、スーパーカーが続々参戦。スポーツカーに関していえば、いまや世界中のメーカーがニュルのタイムを気にしている。
ここで興味深いのは、ニュルというコースの特殊性が大きかったためか、単なるレーシング仕様の開発競争にならなかったこと。
自然発生的に、ナンバー付き市販車、レーシングタイヤ不可、といったローカルルールが定着。いまやロードカーのダイナミック性能を測る指標として、世界中で広く知られるようになった。
『FF最速は我々だ!』ルノーが新たなニュルバトルを起こす
そんななか、ちょっと発想を変えて「FFでいちばん速いのはどれよ?」と新たなテーマを提案したのがルノー。
ロードカー最速を狙うのはハードルが高いが、FF縛りにすれば量産車ベースで参戦できるメーカーが増える。
2014年6月にルノーメガーヌR.S.275トロフィーRが、7分54秒36をマークしてはじまったこの戦いは、現状ゴルフGTIクラブスポーツS、シビックタイプRの三つ巴といった状況だ。
このメガーヌの記録を2015年3月に、先代シビックタイプRが7分50秒63で更新すると、翌2016年12月にはゴルフGTIクラブスポーツSが50秒の大台を切る7分47秒19をマーク。
さらに2017年4月には新型シビックタイプRが7分43秒80で抜き返している。
FFスポーツを量産する場合、商品性のバランスから2L直4が相場。パワー的には出して350ps、トルクは400Nmといったところ。この辺が前輪だけで吸収できるトラクションの限界となる。
そうなると、ニュルでラップタイムを縮めるにはコーナリングと空力が勝負。こういう知恵を絞った抜きつ抜かれつの戦いが面白いのだ。
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