年始の恒例イベントといえば日本では東京オートサロンだが、アメリカではCES(Consumer Electrinics Show)が有名だ。
このCESは本来は電子機器などの見本市だが、近年は自動運転などの波もあり自動車メーカーも積極的に参加しているショーになる。
そんなCESでとんでもないクルマが出展されている。それがヒュンダイの”歩くクルマ”だ。書いていて自分が心配になるが、とにかくクルマが歩く。
いったいどんなクルマなのか、詳細に迫ります。
文:ベストカーWeb編集部/写真:Hyundai
■「歩くクルマ」のインパクトは超絶強し
ヒュンダイといえば日本では観光バスで目にする機会が圧倒的に多いブランドだが、北米では乗用車でも日本車のシェアに追いつきそうな勢いで健闘している。
かつてのような「なんだかあのクルマに似ているな……」というイメージも薄れてきたし、まだ差はあるものの「日本車もウカウカしているとやばいかも」なんて思わせる段階に来ている。
そんなヒュンダイ、今度は”歩くクルマ”のコンセプトをアメリカのラスベガスで2019年1月8日から11日まで開催されている、電子機器見本市「CES」に出展した。
もう”歩くクルマ”というパワーワードだけでなにがなんだかといったところだが、災害救助を目的とするなどなかなか崇高なコンセプトを打ち出した。歩くクルマの名は”Elevate(エレベイト)”。
エレベーターを連想する人も多いと思うが「持ち上げる」という意味。アクセントは「ベイ」にあるので発音するときは要注意。
車名のとおり、ボディをグイっと持ち上げて歩く。この様子はまさにスターウォーズのAT-ATのよう。
ヒュンダイはエレベイトを「UMV(Ultimate Mobility Vehicle=超機動性車両)」なんてカテゴライズしているが、クルマが歩いちゃったら機動性なんて括りじゃ甘い気もする。
やっぱりスターウォーズだ。
話を聞く限り夢物語のようなエレベイトだが、災害救助の観点から設計されたという点には注目したい。地震や津波などが多いアジア圏だけにこんなマシンがいればかなり頼もしい。
日本ではレッドサラマンダーが不整地での救助活動マシンとして有名だが、存在するのは1台のみ。基本的にはがれきがあった場合は、救助隊の多くは徒歩で装備を背負って歩くことになる。
そんな時にこのエレベイトが活躍するというシナリオをヒュンダイは描いている。
「がれきの下に被災者がいたら使えないじゃん」という冷静なツッコミも多くあると思うが、縦横無尽に災害現場でも動けるのはたしか。
エレベイトがあれば機材の運搬のみならず、負傷者の搬送もできる。がけ崩れで不通になった道路を超えるような使い方なら現実的だろう。
■完全なるEV、そして哺乳類にも爬虫類にもなる!?
エレベイトの機械的な特徴としてまずはEVであるということ。そしてなによりも注目すべきはこのクルマに備わる4本の「脚」。
5段階に可変する推進用モーターがついていて、哺乳類的にも爬虫類的にも歩けるという。哺乳類は基本的にまっすぐ前に足を運ぶが、トカゲのような爬虫類は外から内へ足を出す。
エレベイトは地面の状況に応じてそれを使い分けるというのだ。岩場でも雪でも、崖でも下り坂でも動物がいる場所なら対応可能なのだ。
ちなみにちゃんとクルマらしく足をたたんで走行することも可能で、ハイウェイスピードで走ることができるという。普通のEVとしても運転できるのだろう、きっと。
今回のCESではモックアップとして展示されただけだが、関心を惹くだけの「客寄せパンダ」には思えない。そもそもCESでは各社ともにかなり夢にあふれたクルマを出展しているからだ。
前回2018年のCESではトヨタは”e-Palette(e-パレット)”と呼ばれる自動運転車のコンセプトを発表した。自動運転専用街区などを走るイメージで店舗やサービスがやってくるというコンセプトだった。
現段階の技術ではe-Paletteが現実的でヒュンダイのエレベイトが非現実的ともいえない。ただe-Paletteとエレベイトが異なるのは、前述のとおり災害時を発想の起点としている点だ。
そして災害のみならず障がい者やお年寄りなどの利用シーンに触れているのも要チェックポイント。伸縮するアームで車体をリフトさせれば障害物があってもスムーズに乗ることができるという提案は少し新鮮。
発表では1.5mの段差や壁を乗り越えることができ、乗員やボディは水平を保ち続けることができる設計だという。うーん、クルマ酔いもなくなるのだろうか。
なかなかぶっとんだコンセプトだが、意外にも使い道は身近にありそうなのもエレベイトのおもしろいところ。とはいえまだまだ空想の域を脱しないようにも思える。
ヒュンダイは発表に際し”Future of the First Responder Industry(=緊急対応者事業の将来)”と銘打っている。割と本気にも思えるがなかなかこれだけで期待するのは難しい。
夢物語疑惑を払しょくするには、2020年のCESはモックアップなんて言わずに本物を期待したい!?
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