2019年3月7〜17日に開催されたジュネーブショーでフェラーリは488GTBの後継車となるF8トリブートを世界初公開。V8DOHCエンジンはなんと720psをマークするなど大進化。
488GTBは日本でもまだまだ長い納車待ちとなっていると言われるなか、もう次のモデルに切り替わることになる。フェラーリのモデルチェンジは、ちょっと早すぎないか? と感じている人も多いと思われる。
フェラーリは特に21世紀に入ってから矢継ぎ早にニューモデルを投入しているが、これが世界最高の流儀というものなのか!?
少量生産メーカーとはいえ、会社規模も大きくないフェラーリが短いモデルチェンジサイクルを実現できる理由は何か?
フェラーリと言えばこの人、清水草一氏が検証する。
文:清水草一/写真:FERRARI
488GTBはもうお役ご免!?
3月に開催されたジュネーブショーにて、フェラーリは488GTBの後継車となるV8ミドシップ、F8トリブートを世界初公開した。
F8トリブートのデザインを見ると、明らかに488GTBのビッグマイナーチェンジ版。つまり458イタリアが2度目のビッグマイナーを受けたという形だ。エンジンも3.9L、V8ツインターボという点は、488GTBと変わらない。
ただし最高出力は670馬力から720馬力へと引き上げられ、軽量化も達成。さらにさらに恐ろしく速いクルマに仕上がっているようだ。
それにしても、フェラーリはモデルチェンジのサイクルが早い。ついこの間488GTBが出たばかりという印象なのに、それがもうモデルチェンジするとは!
そう感じるのは、ショーでの発表と日本への導入時期に、それなりのタイムラグがあるからだ。488GTBの日本導入からは、まだ3年も経っていない。個人的には、初めて488に試乗してからまだ2年半くらい! 早いと感じるのも当然だ。
488GTBがいつ発表されたかというと、2015年3月のジュネーブショーだった。つまりきっちり4年でのフルモデルチェンジなのですが、それでも充分早い。
フェラーリのモデルチェンジサイクルは平均4年!?
現在は世界的にモデルチェンジのサイクルが長くなる傾向にある。トヨタですら6年前後が標準。アクアのような量産モデルですら、すでに7年余を経て、フルチェンジされる様子がない。
そんななか、フェラーリは世界で最もモデルチェンジサイクルが短いメーカーになっているのではないか? 実際のところ、1970年代以降のフェラーリのモデルチェンジサイクルは、一体どんな感じなのだろう。
【V8ミドシップ系】
308 1975年
328 1985年(ビッグマイナー)
348 1989年
F355 1994年(ビッグマイナー)
360モデナ 1999年
F430 2004年(ビッグマイナー)
458 2009年
488 2015年(ビッグマイナー)
F8トリブート 2019年(ビッグマイナー)
308から328へのモデルチェンジには10年を要したが、その後はおおむね5年ごとにモデルチェンジを繰り返している。今回それより1年短い4年になったのは、488の人気がやや低調であることや、ボディやエンジンのベースが変わらない、2度目のビッグマイナーチェンジであることが関係しているだろう。
【12気筒フラッグシップ系】
365BB 1973年
512BB 1976年(ビッグマイナー)
512BBi 1981年(ビッグマイナー)
テスタロッサ 1984年
512TR 1991年(ビッグマイナー)
F512M 1995年(ビッグマイナー)
550マラネロ 1996年
575M 2002年(ビッグマイナー)
599 2006年
F12 2012年
812 2017年
こちらもV8ミドシップ同様、フルチェンジとビッグマイナーを繰り返すパターンだったが、近年は5〜6年ごとにフルチェンジという形に変化している。フェラーリのモデルチェンジは、車名の付けかた同様、かなり気まぐれである。
【V8 FR系】
カリフォルニア 2008年
カリフォルニアT 2014年(ビッグマイナー)
ポルトフィーノ 2017年(ビッグマイナー)
これに加えてスパイダーモデルや、各種スペチアーレ系、ワンオフモデルなども加わるため、近年は毎年フェラーリのニューモデルが登場している印象だ。
「でも、半分はビッグマイナーだろ」と言われればそれまでだが、ビッグマイナーでも、走りがまったく別物に進化していることは間々あり、見た目はともかく乗り味に関しては、しっかりフルチェンジされている。
例えば348からF355へのモデルチェンジは、ビッグマイナーでありながら、操縦性は348の欠陥”臨死体験”設計から、ミドシップのお手本へと劇的に変化。
エンジンも、排気量アップだけでなく、1気筒5バルブ化され、モデル途中でセミATであるF1マチックが導入されるなど、まったくの別物に生まれ変わった。
360からF430の時は、Eデフの搭載によってコーナリングが劇的に進化。458から488の時も、エンジンがターボ化されるという大きな転換があった。
ライバルのランボルギーニが、エボリューションモデルを設定して1車種を長く作るのとは対照的に、フェラーリは恐ろしい勢いで、モデルチェンジを繰り返している。
コメント
コメントの使い方