こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】 たくさんの恋物語を生み出したS-MX

こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】 たくさんの恋物語を生み出したS-MX

■見る・乗る・使う楽しさ性能を真摯に追求

 楽しさだけでなく、新感覚のRVとして優れた利便性を有していたこともS-MXの魅力だ。全長が3950mmに設定した5ナンバーサイズのコンパクトボディやフロント両隅を大胆にカットしたようなバンパー形状。エンジンの小型化によるタイヤの大きな切れ角によって狭い路地でもスマートに扱える、優れた取りまわし性を実現。

 また、広く大きく開く右1枚、左2枚のワンツードアと低くフラットな床面によってもたらされる乗降性のよさ。バンパー部から開いて十分な開口幅と高さが確保できるテールゲートによる、荷物の積み降ろしのしやすさと積載効率のよさは、S-MXが人気を集めた要因が個性だけではなかったことの証明と言えるだろう。

テールゲートがリアバンパー上からほぼ垂直に切り立ったようなストレートカットリヤビューもS-MXならではの個性となっていた
テールゲートがリアバンパー上からほぼ垂直に切り立ったようなストレートカットリヤビューもS-MXならではの個性となっていた

 さらに、“乗って楽しい”と感じる能力を実現していたのも見逃せないポイントだ。パワーユニットは、低・中速のトルク特性を重視したS-MX専用の2Lエンジンに、ホンダ独自のAT制御技術プロスマテックを採用した4速ATの組み合わせによって爽快な運転感覚が味わえる。

 足まわりもS-MX専用の設計がなされている。サスペンションは前輪にストラット式、後輪をダブルウイッシュボーン式とし、前後にスタビライザーを採用。さらに、サスペンション取り付け部の剛性向上を図ることで、路面の凹凸をしなやかに受けとめながら、カーブで生じる車両の傾きを適度に抑えて車両姿勢の安定化も図ることができ、街なかでは心地よく、高速域でも不安感のない走りを実現していたのだ。

 S-MXが追求した楽しさで特筆したいのは、インテリアの作り込みだ。まず車内スペースは、メカニズムのためのスペースを最小限としたことで、ゆったりとした空間が確保されている。

 シートは前後席ともふたりが心地よく座れる大型のベンチシートを採用。大きさに余裕をもたせたうえで、座面やシートバックにS型のバネを仕込み、さらにクッションも厚くすることで、ソファのような座り心地を実現していた。

 また、コラムシフトATレバーやと運転席右側に配置した駐車ブレーキレバーを採用したことで、軽快な操作性を提供するとともに足もとには十分な余裕を確保した。

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