こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】走りのよさが光るFRワゴン[アルテッツァジータ]はなぜ売れなかったのか?

こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】走りのよさが光るFRワゴン[アルテッツァジータ]はなぜ売れなかったのか?

 これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。

 当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、シューティングブレイク風のFRハッチバック、アルテッツァジータを取り上げる。

文/フォッケウルフ、写真/トヨタ

■ワゴンではない新しいジャンルのクルマ?

 「アルテッツァジータ」が登場したとき、見るからにワゴンに属するクルマだったが、トヨタのプレスリリースでは「ワゴン」と称することなく、「美しさと機能性を合わせ持つ先進のデザインと、スポーツセダンアルテッツァの走りの資質を高次元で融合し、既存のセダン、クーペ、ステーションワゴンにはない魅力を付与した新ジャンルのクルマ」と説明されていた。

 トヨタ自らがワゴンと名乗っていなくても、市場の受け止め方は“アルテッツァのワゴン版”であった。しかし、荷室スペースは5ドアハッチバックよりちょっとだけ余裕がある程度。後席は6対4分割可倒機構が備わり、助手席にはシートバックテーブル機構やトノカバーやアンダーボックス、アクセサリーソケットといった“一応”ワゴン的な機能が付加されているが、「ワゴンとは違う」ことを強調したクルマだから、ユーティリティの部分に過度な期待は禁物だった。

 現代なら「クロスオーバー」という言葉で、本格ワゴンでないことも納得できるかもしれないが、当時の市場はそこまで寛容ではない。ワゴンっぽくない先進かつ個性的なスタイルよりも、ワゴンらしい実用性を有していることが求められる。セダンほど販売が振るわなかったのは、実用面でワゴン未満だったことが少なからず影響したはずだ。

アルテッツァ(セダン)が1998年に発売されてから約3年後となる2001年に誕生したアルテッツァジータ
アルテッツァ(セダン)が1998年に発売されてから約3年後となる2001年に誕生したアルテッツァジータ

 それでもデビュー当時は、「ハチロクの再来」と鳴り物入りで登場したアルテッツァをベースにした派生モデルとあって、アルテッツァ譲りの走りのよさを持ち味とするアルテッツァジータに対する注目度は高かった。

 シューティングブレーク風の5ドアハッチバック風のスタイルは、荷室スペースを重視した箱型スタイルが特徴だったワゴンとは一線を画すもので、流麗で軽快な雰囲気が、それまでにない新しさを感じさせた。

 フロントまわりは、バンパーを中心に一体感のある力強い塊を表現しながら、両サイドにフォグランプを配置することでスポーティかつワイドな表情を作り上げていた。サイドビューについては、切れ味のいいサイドウインドウグラフィックスと抜けのいいルーフラインと、バックライトの傾斜が強いコンパクトなキャビンによってワゴン特有の野暮ったさは皆無。

 リアの造形も軽快で美しい先進的なスタイルを印象付けるものだ。ラウンディシュなバックドアガラスと絞り込みを強めたコンパクトなキャビンとしながらも、サイドからまわり込んだ張り出し感のあるリヤフェンダーの造形によってひとクラス上の車格感を表現していた。

次ページは : ■美しさと機能性を併せ持った個性的なインテリア

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