BEVユニットはプリウスPHVのユニット、製作担当はレクサス電動化チーム
水素エンジンのトレノは、レース活動で実証済みである、水素エンジンのGRカローラの開発技術がある程度活かせたそう。エンジンユニットは純正である4A-Gを流用しており、水素エンジンに合わせた専用の排気管や水素燃料タンクを新設(このクルマのために一品ものの排気管を作製している)、それ以外の部分については、できるだけ現車に手を入れないようにしたそうだ。
ただ、BEVのレビンについては、そもそもBEVとマニュアルミッションとの組み合わせ実績がない。担当したのはレクサス電動化グループだったそうだ。その理由は、レビンに積んだBEVのユニット(プリウスPHVのもの)が、レクサスRZに向けに製作したユニットが起点だったためだ。レビンの荷室に積まれたバッテリーに、レクサスのエンブレムが入っていたのは、そのためだ。
BEVユニットも含めて、トヨタがすでに世の中に出しているユニットをなるべく流用した(ただしモーターの向きは、FRのAE86に合わせて縦置きとされている)今回のコンバート。できるだけ既存部品を流用しながら、AE86の長所である「軽さ」を守りつつ、かつマニュアルトランスミッションもあえて残した。
「クルマを動かすだけならば、本当はマニュアルトランスミッションなんていらないのです。ただ、操る楽しさというところをやりたかったので、マニュアルとモーターのドッキングにチャレンジしました」と、新居主査は自慢げだった。
ドライブフィールは上々!! モーターの良さが活かせる加速も!!
モーター+マニュアルトランスミッションの操作感がどうなるのかは、大変気になるところ。新居主査によると、なんと「通常のマニュアルトランスミッションと同じ感覚でドライブできます。我々も驚きました」とのこと。
しかも、アクセルを踏んだ時の加速フィールは、ガソリンエンジンよりもダイレクト感があってコントロールもしやすく、マニュアル車の長所である楽しさも、しっかり残っているそうだ。たとえば、クラッチのミートを間違えるとガクガクしたり、アクセル操作をラフに扱うとギクシャクくしたりもするところもあえて残してあるそう。失敗もありうるところは、操る楽しみだ。
ただしエンストはせず、クラッチをミスってもギクシャクして終わり、とのこと。回転を上げて急発進もできるし、レスポンスとモータートルクが強いので、ドリフトもできるそうだ(実際にYoutubeではレーシングドライバーの佐々木雅弘選手が富士スピードウェイでドリフト走行も実演していた)。
「製作は大変でしたが、とても面白かったです。新しいBEVの楽しさがあると思う。最終的には、もう少しパワーを上げたいと思っています」と話してくれた新居主査。こうしたチューニングができる要素も、クルマ好きが楽しみにしているひとつだろう。
カーボンニュートラル社会と素直に向き合える手段をみせてくれた!!
これまでも、旧車のパーツを復刻販売したり(トヨタ、日産)、旧車を新品同様にまでリフレッシュしたり(マツダ、ホンダなど)と、自動車メーカーが企画してきたレストア企画はあったのだが、あくまで原状復帰が目的であり、カーボンニュートラルな社会とはイマイチ繋がっておらず、先細り状態でもあったように思う。だが今回、最も現実的で、望まれている正解が見えたような気がして、クルマ好きのひとりとして、嬉しさが爆発しそうだ。
こうなると、既存のどんなクルマであってもコンバートしてもらいたくなる。トヨタがみせてくれた、今回の大いなる選択肢は、将来のカーボンニュートラル社会と素直に向き合える手段として、期待せずにはいられない。
【画像ギャラリー】東京オートサロン2023に登場した、愛車を守るカーボンニュートラル「AE86 H2 Concept(水素エンジン車)」と「AE86 BEV Concept(電気じどう車)」(13枚)画像ギャラリー
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