日産ティアナが、2020年7月をもって日本での販売が終了し、日産のホームページからも削除された。
「モダンリビング」の心地よさ。「おもてなし」の心遣い。これまでのセダンにはなかった価値観を見いだしてきたティアナ。さらにサイズのわりに手頃な価格で評判も高かった。
初代ティアナは2003年2月に登場した。「クルマにモダンリビングの考え方」というキャッチコピーを覚えている人も多いのではないだろうか。
価格も衝撃的だった。人気だった230JK Mコレクションの価格は240万円(税抜き)。2.3Lのミドルセダンでこの価格はライバルより30万円前後安かった。
2008年6月にデビューした2代目ティアナも初代のコンセプトを継承し、”おもてなし”グルマとして進化した。
そして今回販売が終了した3代目ティアナは2013年3月に登場している。初代のコンセプト”モダンリビング”と、2代目の”おもてなし”のいいとこどりをしたうえに、”走りの楽しさ”も加えられたクルマだ。
セダン不振の影響で販売が苦戦しているとはいえ、カムリやマツダ6、アコードなど、国産ラージFFセダンは日本国内では販売が続けられている。
そこで、ティアナ惜別企画として、初代、2代目、3代目は今いくらで買えるのか? さらに次期ティアナは発売されないのか? という情報も入れ込みながら、モータージャーナリストの萩原文博氏が解説する。
文/萩原文博
写真/日産自動車
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初代ティアナは“モダンリビングコンセプト”で大ヒット
日産のセダンといえば、「羊の皮を被った狼」といわれたスカイラインをはじめ、ラリーシーンで活躍したブルーバード、社会現象にまでなったシーマ、高いハンドリング性能で話題となったプリメーラなど名車揃いだ。
しかし、そういったビッグネームは次々と姿を消していった。直近5年における日産のセダンラインナップはシーマを筆頭に、フーガ、スカイライン、ティアナ、シルフィ、ラティオと6モデル用意されていたが、2016年にマーチベースのコンパクトセダンであるラティオが生産終了。
そして2020年7月にティアナが販売完了となり、4車種という寂しい状況だ。しかも販売開始時期を見ると、最も新しいスカイラインが2013年ですでに7年が経過し、シーマとシルフィが2012年。フーガに至っては2009年とすでに10年以上のロングセラーモデルとなっている。
先日久しぶりにフーガに乗る機会があった。エンブレムがインフィニティマークから再び日産エンブレムに戻されるなど、この点においても迷走しているが、パーキングブレーキが足踏み式など設計の古さを感じざるを得ないし、スカイラインを除けば、なかなかモデルチェンされない長寿車ばかりという状況だ。
これではセダン離れに拍車がかかるのは当然のように思える。そういった背景もあり、2020年7月、ティアナはひっそりと姿を消した。
まずは、ティアナの足跡を振り返っていこう。初代ティアナは「洗練された大人のための高級セダン」をコンセプトとして2003年2月に登場。
セフィーロとローレルの車種統合によって誕生したティアナだが、最大の特長は「モダンリビングを思わせる品格あるインテリア」だった。
落ち着きと新鮮さを醸し出すウッドパネルや贅沢なソファのようなシートなどを採用し、乗る人を心地よい緊張感と安らぎで包み込み、家族や友人を招き入れたい気持ちにさせる新感覚のインテリアとして人気を博した。
ティアナの象徴的な装備が助手席パワーオットマン機構で、「おもてなし」を具現化していた。
パワートレインは2.3L、V6エンジン+4速AT、3.5L、V6エンジン+CVT、そして4WD車には2.5L、直4エンジン+4速ATという3タイプを用意していた。
加えて、官公庁や法人向けなど送迎に使えるように室内の静粛性をさらに向上し、装備の充実化を図ったFコネクションというグレードを設定した。
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