得なのか? 損か?? 誰のため??? 全然特別でない「特別仕様車」が設定される裏事情


■特別仕様車が「グレード」にならない3つの理由

 その一方で、シエンタGセーフティエディションやヴォクシーZS煌は、いつまでも特別仕様車とされてグレードにならない。

 その理由は3つある。

 まず特別仕様車なら、設定と廃止(あるいは中断)を自由に行えることだ。ヴォクシーZS煌も、現在販売されているのはIIIになる。

 販売促進に力を入れたい時期に設定しながら、バージョンアップを重ねてきた。出したり引っ込めたり、必要に応じて変更を加えるなど、都合を優先できるのは特別仕様車のメリットだ。

 2つ目の理由は「特別仕様車」という言葉を使うためだ。シエンタGセーフティエディションであれば「安全性と快適性がさらに充実した特別仕様車が登場」とアピールされ、注目度を高める効果も大きい。

得なのか? 損か?? 誰のため??? 全然特別でない「特別仕様車」が設定される裏事情
トヨタシエンタの公式サイトはトップ画像が特別仕様車

 3つ目の理由には、既存のグレードに比べて価格が割安なことが挙げられる。商品企画担当者に尋ねると以下のように述べた。

 「買い得な特別仕様車をグレードに変更すると、お客様からは、値下げを行ったと受け取られる場合がある。既に購入されたお客様に対しては失礼だ。そこを不定期に設定される特別仕様車とすれば、グレードではないから、この問題を避けられる」。

 以上のように特別仕様車は、メーカーや販売会社の都合に基づき、人気の装備を割安に装着して設定される。買い得だから売れ行きも伸びるが、喜べることばかりではない。人気の高い新型車に、特別仕様車は設定されないからだ。

 シエンタは発売から5年、ヴォクシーは7年を経過して、以前に比べると売れ行きも下がったから特別仕様車を用意した。

■特別仕様車=人気のバロメーター

 タントは2019年7月に現行型へフルモデルチェンジされたが、発売直後から売れ行きが伸び悩んだ。2013年に発売された先代タントは、好調に売れてN-BOXの届け出台数を上まわったが、現行型は追い抜けず販売順位もN-BOXより下がる。

 そこで発売から5か月を経過した2019年12月には、早々に特別仕様車のセレクションシリーズを設定した。4万円相当のセットオプションを加えて価格を同額に据え置くなど、モデル末期に設定するような格安な特別仕様車だ。2020年6月には、Xから装備を取り去って値下げを行ったXスペシャルまで投入している。

得なのか? 損か?? 誰のため??? 全然特別でない「特別仕様車」が設定される裏事情
タントカスタムRS スタイルセレクション
得なのか? 損か?? 誰のため??? 全然特別でない「特別仕様車」が設定される裏事情
タントカスタムRS スタイルセレクション インパネ

 タントの特別仕様車は極端なケースだが、それでも順調に売られる車種に特別仕様車は設定されない。ジムニーは発売から2年間を経過しながら、今でも納期が約1年とされる人気車だから、販売しているのも既存のグレードのみだ。

 つまり特別仕様車は、人気のバロメーターといえるだろう。設定された時には、売れ行きが下がったとか、近々強力なライバル車が登場するなど、販売面で何らかの不安を抱えている。そこを認識された上で、特別仕様車を選んで頂きたい。

 買い得に追加装着された装備を精査することも大切だ。皆さんにとって不要な装備が加わっていたら、いくら価格の上乗せを抑えても意味はない。宣伝に流されず、特別仕様車の価値を冷静に見極めることも大切だ。

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