馬力信仰にモノ申す!! 運転の楽しさを司るトルクの重要度と新時代

馬力信仰にモノ申す!! 運転の楽しさを司るトルクの重要度と新時代

 クルマのパワーを表す要素として最重要視されるのが馬力だ。現在でもクルマの高性能を示すため「○○馬力オーバー」などといった表現を使うことも多い。

 だが、ちょっと待ってほしい。ホントに馬力の大きなマシンだけが速いと考えていいのか? 実は、パワーを決める要素には馬力の他にトルクもあり、特に停止と発進を繰り返す街乗りにおいて、トルクの果たす役割は馬力以上に重要とも言えるのだ。

文/長谷川 敦 写真/トヨタ、日産、ホンダ、メルセデスベンツ、アストンマーチン、写真AC

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まずはトルクと馬力の違いについておさらいしよう

馬力信仰にモノ申す! トルクと馬力、運転の楽しさを左右するのは実はトルクだった!?
馬一頭が1秒間に75kgの重りを1m引き上げる力1ps(馬力)と定義されるが、実際の馬は短時間であればこれよりはるかに大きな力を出すことができる

 最初はみんながイメージしやすい馬力から。馬力とは、馬一頭が出せる力(=仕事率)を数値化したもので、これは瞬間最大ではなく継続的に出せる力のこと。馬力の単位には、ヤード/ポンド法をベースにしたイギリス式の英馬力(hp・Horse Power)と、メートル法に基づいたフランス式の仏馬力(ps・Pferde Starke)があるが、このベストカーWebでは日本でもポピュラーな仏馬力を使用することが多い。

 なお、仏馬力と英馬力の差はわずかであり、1ps(仏馬力)は0.986hp(英馬力)に値する。同じエンジンの出力を英馬力で表す場合、仏馬力よりも数値が小さくなるが、ほぼ無視してよい違いだ。詳細は下の換算表で確認してほしい。

馬力信仰にモノ申す! トルクと馬力、実は重要なのはトルクのほう? 

 仏馬力では1秒間に75kgの物体を1m動かせる力を指している。現在では国際単位系に準拠して、馬力ではなくW(ワット)が正式な単位になっており、1馬力(ps)は735.5Wと定められている。とはいえ、やはりワットで言われても、もうひとつピンとこないのも事実。そこでこの記事ではps単位を基準に進めていきたい。

 馬力(最高出力)がその名のとおりエンジンが発生する最大出力を意味するのに対し、トルクは回転力の大きさを表している。トルクの単位はkgm(キログラムメートル)。30kgmは、回転軸の中心から1mの距離で30kgの重りを回せる力だ。最近ではトルクも国際単位系のNm(ニュートンメートル)を使用することが多いが、馬力同様にこの記事ではkgmの単位を用いたい。

 kgmをkgfmと表記することもある。厳密には、kgは物質が持つ質量のことで、kgfは物体にかかる力を指している。10kgの物体の質量は、月面など重力が異なる場所に持っていっても10kgだが、地球で10kgfの力は月ではその1/6になる。トルクの場合もkgfmが正確と言えるが、宇宙飛行士でもないかぎり、現代においてクルマのトルクの話をするのは地球上に限定されるのでkgm表記でも問題はない。

 馬力とトルクはどちらのエンジンが出せる力なので相関関係がある。つまり馬力の大きいクルマはトルクも大きい傾向があるが、どこまでエンジンを回せるかによって馬力は変化するので、必ずしも大トルクエンジンの最大馬力が大きいわけではない。

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