2020年9月1日にホンダ「オデッセイ」が改良新型を発表した。新型のフロントマスクは、北米で販売されているモデルと近いデザインとなった。
かつては人気車としてその地位を築いていたオデッセイだが、2020年の月販平均台数は3桁まで落ち込み、販売台数ランキングで上位に入ることはなくなっている。
国内のミニバン人気が落ちたとはいえ、ここまで販売が落ち込んだ理由は何なのか? かつての栄光と、そこからなぜ落ち込むことになったのか? そのワケを考察していきたいと思う。
文/御堀直嗣
写真/HONDA、編集部
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■2016年から下降線 迷走が招いたかつての大人気車の凋落
ホンダの上級ミニバンである「オデッセイ」が、2020年秋マイナーチェンジを受ける。
詳細はまだ公表されていないが、9月の先行公開情報によれば、外観造形の変更のほか、ジェスチャーコントロール・パワースライドドア(ジェスチャー操作によって車両に触れず開閉できる)や、予約ロック(あらかじめ施錠操作をしておくことで、パワースライドドアなどを閉じた際自動で施錠する)の機能を搭載することにより、使い勝手を向上させるという。
ところで、オデッセイの販売は、2016年から追っていくと年々台数を減らす傾向にある。そして年間販売台数の順位も下降線だ。
2016年の順位は、一般社団法人 自動車販売協会連合会(自販連)の乗用車ブランド通称名別順位で、25位であったのが、2017年に35位、2018年に40位、2019年は41位であった。2020年はまだ1~6月の半期の統計だが、45位に落ちている。
順位が下がるのにあわせ、年間の販売台数も2016年の3万台超から2019年は1万4000台強と、半分以下に落ちている。そこで、マイナーチェンジにより商品性の向上がはかられようとしているのだ。
ミニバンには、5ナンバーミニバンと呼ばれるホンダ「ステップワゴン」のほか、トヨタ「ヴォクシー/ノア/エスクワイア」、日産「セレナ」がある。
実際は車体がやや拡幅して3ナンバーの車種もあるが、ここでは便宜上5ナンバーミニバンと位置付けておく。次の中型ともいえる上級ミニバンに相当するのが「オデッセイ」で、トヨタでは「エスティマ」があり、日産にはかつて「プレサージュ」などがあった。
さらに格上のミニバンとして、ホンダには「ラグレイト」や「エリシオン」があった。トヨタは、なお高い人気を誇る「アルファード/ヴェルファイア」があり、日産「エルグランド」が競合車となる。
ミニバンという車種は、1994年のホンダ「オデッセイ」登場にはじまる(ただし米国では以前から存在した)。ここから数年のうちに、ホンダはクリエイティブムーバー群として、「CR-V」「ステップワゴン」「S-MX」といった、それまでのセダンやステーションワゴン、あるいはハッチバックと異なる車種の追加を行い、S-MX以外は他社にも影響を及ぼし、5ナンバーミニバンやSUVの充実が各自動車メーカーではかられていく。
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なかでもオデッセイの人気はほかをしのぐ勢いがあり、一気にミニバンのブランド化を進めたといえる。ところが、つまずくきっかけとなったのは、3代目であったといえるだろう。
3代目では、立体駐車場に入庫できるとして、車高を初代~2代目に比べ10cmほど低い1550mm(2WD車)とした。また全高が下がることにより、操縦安定性もミニバンとしては高くなるとのことであった。
その目新しさで販売台数は多く、道路は背の低い新型オデッセイであふれた。しかし逆に、4代目以降へ向けた進化という段階になって、目指すべき行方が見えにくくなったといえるだろう。
ステーションワゴンとの違いが分かりにくくなったのだ。もちろん、ステーションワゴンと違い3列シートであることは、ミニバンである証だ。しかしながら、背の低いミニバンで3列目の座席を常用し、大勢で出かける機会は多くない。
広々とした空間を活かし、人も荷物もたくさん運べて、家族や仲間との絆を深めるクルマというミニバンのよさが伝わりにくくなった。結局、現行車となる5代目で再び全高を上げ、元に戻したのである。
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