世界的に新車の大型化が進行している。ことに小型乗用車として親しまれてきた車種が、格上の上級車のような車体寸法を持つに至っている。
こうした傾向を私が強く意識しだしたのは2000年になってからで、ことに2005年の3代目アウディA4の試乗では、まさしく格上のA6ではないかと思うほど大柄に、また室内も一層上質になったと感じた。A6を思わせたのは、A6からアウディ車の特徴としたシングルフレームグリルをA4でも採り入れたこともある。
クルマに近づいてみて、ことに大きく感じさせたのは車体幅であり、3代目A4は1.8mを超えた。日本の5ナンバー枠の車体幅が1.7m未満なので、10cm以上幅広いことになる。
文/御堀直嗣
写真/Volkswagen、daimler、編集部、BMW、Citroen、池之平昌信
【画像ギャラリー】新型は異例の小型化? 大型化にあえて逆行するルノー新型ルーテシア
■肥大化進む実情とあえて小型化に踏み切ったルノーの狙いは?
こうした肥大化の傾向は、同じドイツの競合であるBMW 3シリーズや、メルセデスベンツ Cクラスにも及んでいる。それでもメルセデスベンツは2007~2014年までの3代目まで車体幅は1.8m以内に収めていたが、現行の4代目ではついに車幅が1.8mを超えている。
このため、それまでメルセデスベンツで最も小型の4ドアセダンはCクラスであったが、大きすぎるという声が日本ばかりか欧州でも起きたのだろう、小型ハッチバック車が主体であったAクラスに4ドアセダンを追加したのである。
そのAクラスも、実は現行車の車体幅はちょうど1.8mある。これではやはり大きいと感じる消費者に対して、次に何という車種を用意するのだろうか? それとも、いよいよ新車の小型化が動き出すのだろうか?
ここにきて、フランスのルノーの小型ハッチバック車であるルーテシア(本国ではクリオ)の新型が、全長を1cm短くしてきた。
ルノー・ジャポン広報によれば、「すでに大型化の著しいCセグメントといわれる車種では、欧州でも耐え切れず、格下のBセグメントに降りてくる消費者があるようです。Bセグメントのルーテシアでも、充分な広さがあり、これがジャストサイズです」と述べている。
欧州では、路上駐車が認められ、クルマが大型化して車体全長が伸びていけば、路上駐車できる台数が減ることになる。前後のバンパーを接しながら路上駐車することで有名なパリ市街も、すでに30年ほど前から路上駐車は満杯だった。
したがって、特に多くの人々が日常的に使う小型ハッチバック車は、4mプラスほどの全長までが限界ということなのではないか。
同じ意味では、BMWの小型ハッチバック車である1シリーズも、現行車は従来の後輪駆動(RWD)から前輪駆動(FWD)へ変更するのにあわせ、車体全長を約1.5cm短くして約4.3mとした。ただし、車幅は1.779mあり、ほぼ1.8mだ。
コメント
コメントの使い方