2011年、「CT200h」はレクサス初のCセグメントハッチバックとしてデビュー。その当時こそ話題になったが、現在は小型SUVの「UX」などに人気を奪われ、低空飛行が続く。
10年間でフルモデルチェンジは一度もなく、2度のマイナーチェンジがおこなわれただけのCTは、先進性よりも古さの方が目立ってきた。
レクサスにとってCT200hは、どのような意図をもって開発され、現在も販売を続けられているのだろうか。レクサス販売店で営業活動に従事してきた筆者が、CTの価値と存在意義を考える。
文/佐々木亘 写真/LEXUS
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■「セカンドカー需要」を考えたレクサス CTの気配りとは?
CTがデビューした2011年当時、LS・GS・RXといったラージサイズのクルマが、レクサスの主力商品だった。比較的コンパクトなIS・HSでも、小さなクルマというイメージは薄い。
レクサスオーナーは男性が多く、その配偶者が運転するセカンドカーには、欧州メーカーのハッチバックや、国産コンパクトカーが選ばれていた。ファーストカーがレクサスなら、セカンドカーもレクサスにしませんかという営業は、当時ほとんどできていない。
そこで登場したCTは、エントリーモデル、そしてセカンドカー需要に対して、レクサスが出した答えのひとつだ。特に、女性オーナーへ向けた、細やかな気遣いや心づかいを、表現したクルマになっている。
筆者が、女性のお客様に対してCTを紹介する際に、必ず伝えていたこだわりの箇所が2つある。
ひとつは、運転席の位置だ。多くのクルマで運転席の位置は、ボディ前部に寄せてレイアウトされることが多い。これにより、前進時と後退時には、進行方向に対するボディの長さが変わってしまい、より長さを感じる後退時の運転を苦手にする人がいる。
CTの運転席は、ボディの長さに対して、限りなく真ん中に近づくようレイアウトされた。
この運転席の位置は、運転席からボディ前端と後端までの距離が、ほとんど同じ長さに見えるようになっており、ボディの大きさを掴みやすくなっている。狭い道での運転やバックでの駐車でも、車両感覚が掴みやすいというわけだ。
ふたつ目はアウトサイドドアハンドルだ。レクサスでは、ドアハンドルを握り込んで開閉するグリップ式を、多くのクルマで採用している。実は、このドアハンドル内側のくぼみに、CTのこだわりがあるのだ。
CTのドアハンドル内側のくぼみは、他のレクサス車に比べて、深くなっている。これには、綺麗に整えられた女性の爪が、ドアハンドルを握った際に、ボディと接触するのを防ぐ目的がある。
他のレクサスとは違う、女性へ向けた気配りを、ラインナップの中で初めて取り入れたクルマがCTだ。こういった気配りは、コンパクトSUVのUXにも引き継がれている。この2点を紹介すると、女性のお客様がCTを興味深そうに見る。それは、CTの隠れた気配りを、もっと探してみたいと思っているようだった。
装備やスペックに現われない、気遣いのできるCTは日本人が作り出すプレミアムコンパクトにふさわしい。使い心地の良さを感じられるクルマは、世界を見回しても、そう多くはないだろう。
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