スマホ決済アプリで払えるようになっても騙されないぞ! 旧車イジメの日本の自動車税制にもの申す!

海外では古いクルマは文化遺産として税金の優遇措置がある

Hナンバーを取得してクルマを大事に乗って楽しむ文化。実に羨ましい
Hナンバーを取得してクルマを大事に乗って楽しむ文化。実に羨ましい

 日本と同じ自動車生産大国のドイツ。環境意識の高い国でもあるが、クラシックカーは文化遺産保護の対象となっている。

 よく知られているがドイツには「ヒストリック(H)ナンバー」の制度があり、文化的価値を持つ旧車に税金優遇措置がある。

 30年以上前に新車登録されたクルマでオリジナルに近く保存状態がいいことと認定書の取得が条件となるが、Hナンバーを取得すると自動車税が一律年間191.73ユーロ(約2万6000円)となる。

 現行のVWトゥアレグ(排気量2995cc、CO2排出量233g/km)への自動車税が約460ユーロ(約6万1000円)であることを考えるとかなり安い。

 2020年1月現在のHナンバーでの登録乗用車台数は52万5968台と全体の1%に上る。

 登録台数第1位は(全然驚かないが)VWタイプI(Kafer=ビートル)の約4万台、2位メルセデス・ベンツW123(約2.2万台)、3位はメルセデス・ベンツR107(約1.9万台)で4位がポルシェ911(約1.6万台)。

日本でも人気が高く400万円オーバーがざらなVWタイプIオーバルウインドウ(1956年式)。写真はHナンバーを付けてミッレミリアに出場
日本でも人気が高く400万円オーバーがざらなVWタイプIオーバルウインドウ(1956年式)。写真はHナンバーを付けてミッレミリアに出場
今見るととてもオシャレなW123メルセデス・ベンツ(1976年式)
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とてもコンパクトでネオクラシックな趣のあるR107型350SL(1980年式)
とてもコンパクトでネオクラシックな趣のあるR107型350SL(1980年式)

 もう一つの自動車大国アメリカ。アメリカはうらやましいことに自動車保有に対しての税金が著しく低い。

 ニューヨーク州の場合、車重に応じた登録税が年間26-140ドル、使用税もマンハッタンなど人口密集地に住んでも年間40ドル。大して税金がかからないため、旧車を特段優遇する必要もない。

 ただし車齢21年超のクルマを輸入する際は排出ガス規制の適用外、また車齢25年を超えるクルマを輸入すると(例の25年ルールだ)自動車安全基準の適用外となる。お国柄としてクラシックカーに対する理解も深い。

 ではその他の国はどうだろうか。

 MGやロールスロイス、ジャガーやアストンマーティンなど歴史ある自動車メーカーを輩出したイギリスでも1981年1月1日以前に生産されたクルマもしくは1月7日以前に登録されたクルマは自動車税が無税。

 そして生産もしくは登録から40年経過したクルマ、過去30年に大幅な改修(シャーシ、車体、エンジンなどの交換)がなされなかったクルマは車検が免除。

 フェラーリやフィアット、ランチアなどの自動車メーカーを抱えクラシックカー人気も高いイタリアでは、車齢30年以上は自動車税が免除、もしくは車齢20年以上で歴史的価値があると認められたクルマは半額となる(一部の州を除く)。

 環境保護先進国スウェーデンでも古いクルマへの優遇がある。車齢30年超のクルマは自動車税が免税、通常は1年毎の車検も2年毎となる。また車齢30年超のクルマを輸入する際には関税が免除、付加価値税が25%から12%に減免される。

 電気自動車の導入を税金優遇策で積極的に推進し環境負荷の高いクルマへの税負担を高くしているスウェーデンでも、短い夏をアメリカンクラシックオープンカーで楽しむフェスティバルが人気で古いクルマに対するリスペクトがある。

古いクルマへの敬意のない日本

各メーカーが最近レストア事業を始めており、ようやく自社の古いクルマのパーツ供給に力を入れてきている。政府は電動化よりも先に自国のクルマ文化遺産のことを考えてHナンバーの創設をお願いしたい
各メーカーが最近レストア事業を始めており、ようやく自社の古いクルマのパーツ供給に力を入れてきている。政府は電動化よりも先に自国のクルマ文化遺産のことを考えてHナンバーの創設をお願いしたい

 世界遺産に登録された官営八幡製鉄所、三菱長崎造船所、軍艦島などの「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」は、日本がアジアで初めて近代化を成し遂げ、後に日本の基幹産業となる製鉄・製鋼、造船、石炭などの重工業において急速な産業化を成し遂げたことを世界と後世に語り継ぐためのものだ。

 それと同様に自動車産業は戦争で廃墟となってからの日本の奇跡的な復興と経済発展を支えた立役者の一人で今でも日本の労働者の8%が就業する基幹産業であることを考えると、その過程で生み出してきた過去の名車に対して社会からリスペクトがあってもおかしくない。だがそういった評価はあまりなされていないのが現状だ。

 環境意識の高いドイツでも、現行の排出量基準は満たさないが走行距離が短く総排出量は少ないことを考慮し、古いクルマの持つ歴史的文化的価値を高く評価して税制面で優遇している。

 アメリカや中国、香港などではスカイラインR32GT-RやS13シルビアなど日本の旧車は大人気だ。だが日本では税金という負のインセンティブを用いてそういった価値あるクルマからユーザーを早く乗り換えさせようという制度設計になっている。

 それではあまりにも自分たちの国の発展の象徴としての古いクルマに対してリスペクトがなさすぎるのではないだろうか。

 日本では車齢が30年以上の乗用車登録台数は全体の1.5%ほど。それらのクルマに対して多少税金を減免しても税収にそれほど大きなインパクトはなく、逆に旧車レストアなどが盛んになること、車齢延長によるライフサイクル全体で見た排出量の抑制などによって長い目で見て税収ベースの拡大面でも基幹産業である自動車産業の未来にとってもプラスの面があるように思われる。

 ヒストリックカーを産業文化遺産として扱えとまではいわないが、理不尽ないじめに近い重課を見直すタイミングに来ているのではないだろうか。

【画像ギャラリー】発売から30年経過! 自動車税を優遇してでも守りたいニッポンの名車たち

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