寒くて寒くて、近所の買い物にもクルマで行きたくなってしまう冬。ですが、近所への買い物といった、すぐそこまでの距離にクルマを使う「ちょい乗り」は、多用すればクルマに悪影響を及ぼすことに。その原因は暖気不足。暖機が充分にできないことで、エンジンにかかる負担が大きくなってしまうのです。
暖機不足、と聞くと、寒い冬は特に「ちょい乗り」がよくないような気がしますが、では暑い夏ならば「ちょい乗り」は問題ないのでしょうか。また、昨今はパワートレーンの種類が増えていますが、ハイブリッドやディーゼルなど、パワートレーンの違いで、ダメージの度合いは異なるのでしょうか。
文/吉川賢一
写真/マツダ、三菱自動車、ベストカー編集部、AdobeStock
■夏もダメージは受ける!?
エンジン始動から停止まで、数分以内程度の「ちょい乗り」は、冷却水や各部オイルが適温まで上がり切る前にエンジンを止めてしまうため、繰り返すことで設計どおりのエンジン出力が出ないなどのトラブルにつながります。
ほかにも、触媒温度が充分に上昇しないため、排ガス浄化性能が不充分となることや、バッテリーへの充電量が不足してバッテリー上がりを起こしやすくなる、エンジンオイルの劣化が早い、などのトラブルも誘発します。
そのため、昔はエンジンスタート後に暖機運転をするよう推奨されていましたが、最近のクルマでは、CPUが燃焼状態をチェックして最適な混合気を供給してくれるため、エンジン始動後にすぐ走り出しても、暖機走行を心がければ、問題はありません。
これらは夏でも冬でも同様。通常運転中のエンジン本体は、およそ400℃程度にまで上がっています。夏の外気温がいくら高くても、エンジンが本来性能を発揮できる温度からすればまだまだ低い温度。
もちろん、寒い冬よりも暑い夏のほうが影響は少ないですが、エンジンを止めてから一晩程度経って、エンジン本体が外気温と同じ温度になっているならば、夏でも「ちょい乗り」はエンジンにダメージを与えてしまいます。
■ただ、やはり冬のほうがダメージは大きい
とはいえ、クルマによりダメージを与える可能性が高いのは、やはり外気の低い冬期のほう。クルマの各部が、適性温度に上がるまでかかる時間が長くなるので、その分、ダメージを与えてしまいます。
特に、気温が低いとエンジンオイルの流動性が下がり、最悪の場合、油膜切れの状態でピストンとシリンダーが直接接触するような「ドライスタート」にも。マイナスフタ桁になるような極寒冷地では、低温状態でも満足な性能を発揮できる粘度を持つエンジンオイルへの交換が必須です。
ちょい乗りからは少し話がそれますが、冬の注意点として、ディーゼル車の場合は、燃料である軽油が凍る可能性があります。特に注意が必要なのは、寒い時期に、暖かい地域で満タンにしたディーゼル車で、寒冷地へ移動した場合です。
あまり知られていませんが、軽油は地域や季節によって、低温時の流動性が異なるものが販売されています。石油連盟によると、軽油への要求品質として、軽油の流動温度が5度以下の特1号から、1号(-2.5度以下)、2号(-7.5度以下)、3号(-20度以下)、特3号(-30度以下)と、5段階に分けています。例えば、北海道(道南除く)では1~3月は特3号、4月は2号、5~6月は1号、沖縄では1~12月通年で特1号、といった形で、JISにより規定されているのです。
ディーゼル車で普段の生活圏とは違う寒冷地に行く際は、現地で販売されている軽油を給油するようにしてください。ちなみに、ガソリン燃料が凍る温度はおよそ-100度であり、軽油のように細かく分類する必要はないそうです。
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