同メーカー同士、あるいはメーカーが異なっていてもプラットフォームを共有する兄弟車の存在はよく知られている。だが、事実上同じクルマなのに、表向きはあまり関係のないメーカーから異なる名称で販売されたクルマは意外に多い。今回は、そんなタッグを組んでいたクルマたちを紹介していこう。
文/長谷川 敦、写真/ホンダ、ランドローバー、日産、三菱、フォルクスワーゲン、FavCars.com
【画像ギャラリー】覚えていますか? 連携が話題を呼んだクルマたち(14枚)画像ギャラリーホンダ初のRVは英国産? 「ホンダ クロスロード/ランドローバー ディスカバリー」
今でこそその呼称を耳にすることは少なくなったが、現在で言うSUV的な立ち位置として、RV(レクリエーション ビークル)と呼ばれるジャンルがあった。そして1990年代前半の我が国では、ちょっとしたRVブームが巻き起こっていた。
各メーカーがRVをリリースするなか、自社のRVを持たないホンダからデビューしたのは、イギリスのランドローバーが製造した初代ディスカバリーのOEM(他社製造)だった。
「クロスロード」と名付けられたそのモデルが発売されたのが1993年のこと。ホンダ・ベルノ店で販売されたクロスロードは、グリルのエンブレムをローバーからホンダに変えたのみの構成で、3.9リッターV8エンジンを搭載する本格4WDモデル。
このクルマが発売されたのは、当時のホンダがランドローバーと提携関係を結んでいたから。当時人気のあったディスカバリーの国内版がホンダの系列店で買えるということに喜んだ顧客も多かったとか。
初代クロスロードは1996年まで販売され、以降はホンダ自社開発のCR-Vがその地位を引き継いだ。しかし、2007年にクロスロードの名称は復活し、2010年まで販売が行われることになる。
ホンダRV戦略の一翼に 「ホンダ ジャズ/いすゞ ミュー」
1990年代前半のRVブームに対応してホンダが登場させたモデルはクロスロードだけではなかった。1993年に、ホンダ・クリオ店から発売されたRV(SUV)の「ジャズ」もまた、他メーカーであるいすゞのOEMモデルだった。
「ジャズ」という車名でホンダ フィットの欧州バージョンを思い出す人もいるだろう。しかし、ここで紹介するジャズは、いすゞ ビッグホーンをベースにしたRVで、フィットとは特に関係ない。
RVラインナップの充実を図るホンダがクロスロードに加えるかたちで発売したジャズは、いすゞ製ミュー初代モデルのホンダバージョンであり、両車の違いはホイールやボディカラー、エンブレムなどわずかなものだった。
ホンダといすゞは1993年に「商品の相互補完に関する基本契約」を締結し、その結果としてジャズを発売。いすゞからはホンダ アコードがアスカ、ドマーニがジェミニの名称で販売された。
その後はいすゞが国内乗用車市場から撤退したこともあって上記の契約は解消されたものの、2020年には両メーカーの間でFCV(水素燃料電池自動車)の開発を共同で行うことが発表され、すでに燃料電池を搭載したいすゞ製トラックの試走も始まっているという。20年ぶりにタッグを組む2社の今後に期待したい。
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