もしものために知っておくクルマの「押しがけ」方法とそれでもやらないほうがいい理由

もしものために知っておくクルマの「押しがけ」方法とそれでもやらないほうがいい理由

 「押しがけ」という運転操作をご存じだろうか。セルモーターを回すことなくエンジンをかけるという、裏技のようなものなのだが、マニュアル車(以降MT車)でなければできないうえに、現代的なメカニズムのクルマではほとんど不可能な動作であることから、もはや死語になりつつある。

 ただMT車はいまでも販売はされているし、旧車を購入した場合など、押しがけが必要なケースもなくはない。イザ!! というときの知識として、「押しがけ」についてご紹介しよう。

文:立花義人、エムスリープロダクション
アイキャッチ写真:Adobe Stock_alexkich
写真:Adobe Stock、写真AC

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タイヤが回転する力でエンジンを始動させる方法

 ライトの消し忘れでバッテリーが上がってしまったり、しばらくクルマに乗っておらずバッテリーが自然放電してしまったときは、セルモーターが回らず、エンジンを始動することができない。そうしたときに役立つのが「押しがけ」だ。

 押しがけは、タイヤの回転する力を、トランスミッションとドライブシャフトを通してエンジンに伝え、始動させる方法。具体的には、マニュアル車でキーを「ON」の位置、つまり走行中と同じ位置し、クラッチを踏んだ状態で2速か3速に入れたまま、誰かに後ろからクルマを押してもらい、小走りぐらいの速度にまで加速。加速したらクラッチペダルを離し、エンジンに回転力を伝える。

 この時一気にガツンとつなぐのではなく、エンジンに力を伝えることを意識して半クラッチで調整しながらつなぐと、スムーズにかけやすい。

 エンジンがかかったらクルマを停止させ、アイドリングが安定するようアクセルペダルで調整する。バッテリーが相当弱っている場合は、ある程度高めの回転を少しの時間維持する。これで押しがけの完了だ。

バッテリーがあがるとセルモーターが回らず、エンジンがかけられなくなる。MT車なら押しがけでエンジンを始動させることができる場合がある

現代のクルマではほぼ不可能

 前述したように、押しがけはMT車であることが条件だ。AT車の多くに採用されているトルクコンバーター式は、クラッチ板の代わりにオイルを介して動力を伝えているため、押しがけをすることはできない。最近ではデュアルクラッチ式のAT(DCT)もあるが、ドライバーが任意のタイミングでクラッチをつなぐことができないため、こちらもやはり押しがけはできない。

 またMT車であっても、最近のクルマはスマートキー+プッシュ式スターターボタンが多いため、そもそもカギで「ON」の位置に回すということができない。バッテリーが非常に弱い状態になってしまうと、ボタンを押しても電源が入らないため、押しがけが可能な状態に持っていくこともできないのだ。

 さらに、最近のクルマではエンジンを保護するために、バッテリーが弱ってしまって規定の電圧以下になるとECUに電力が供給されなかったり、クランクが一定の回転数にならないと燃料の噴射や点火を行わない機構になっていることも多いので、やはり押しがけは難しい。

できる車種だったとしても、やらないほうがいい

 ただ、押しがけが可能な車種だったとしても、押しがけはオススメしない。エンジンが停止した状態では、スイッチをONの状態にしても、パワステやブレーキの倍力装置が作動せず、短い距離とはいえ安全ではなくなるからだ。

 同じ理由で、下り坂を利用したり、牽引をしてもらってのエンジン始動も安全だとは言えない。そもそもバッテリーあがり以外の理由で、例えば燃料系のトラブルが原因でエンジンがかからないとしたら、空走時にパワステやブレーキの倍力装置が作動しないというのは危険。どうしても押しがけをしなければならない場合は、広くて交通量のほとんどない場所でやるようにしてほしい。

 バッテリーがあがってしまった場合は素直にロードサービスを呼ぶか、ジャンプケーブル(ブースターケーブル)で他のクルマからバッテリーをつないで始動するのが安全。もちろん普段からバッテリーの状態をチェックしてメンテナンスを怠らないようにすることも大事だ。

 ちなみに、バイクの場合は車体が軽いため、一人で押しがけをすることもできるが、エンジンがかかったらすぐにクラッチを切らないとバイクがそのまま走ってしまい、大変危険なので気をつけてほしい。こちらもやはり、広くて安全を確保できるような状況で実施するようにしてほしい。

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