ATのBモードってバック? S、Mモードって何? なぜ最新車のシフトパターンはムズいのか

■変化するギアポジションの選択方法

 ここまで変速機構を「シフトレバー」と呼んできたが、最近では「表現の仕方としてマズイのでは?」と思えるようになってきた。

 英語の「シフト」は日本語では大まかには「変更」を意味する言葉だが、MTから続いてきた「匂い」がする。たとえばシフトノブという呼び方にMTの雰囲気を感じるのは筆者がオジサンゆえに違いない。だが、昨今では様子が変わり、シフトレバーが消滅の危機にあるのだ。

電制シフトは2003年登場の2代目トヨタ プリウスで採用(写真は3代目のもの)
電制シフトは2003年登場の2代目トヨタ プリウスで採用(写真は3代目のもの)

 日本では2003年の2代目トヨタプリウスの登場に始まる、機械的な接続を伴わない電子制御式シフト機構(電制シフト)の採用によって、シフトレバーは大きさや形状とともに設置位置など、設計上の自由度が格段に拡大した。

 機能やデザインが安定していないと自動車メーカーによって装備の呼称が定まらないというのはありがちな話で、シフトレバーの呼び方も最近では乱立状態に陥っている。

 おそらく現状では「シフトレバー」ではなく「ギアセレクター」や「セレクトレバー」などが正確な呼び名といえる。

 最新仕様では、P-R-N-Dの各シフトポジションを選択するスイッチ機能を分割したうえで、タッチ式あるいはボタン式として設定されている。特にPポジションはボタン式として分離されたデザインが多くなった。

 さらにボタン+レバー式などといったパターンもあるので話は簡単には収まらず、小型化されたレバーは「ノブ」と呼ぶほうが相応しいのでは? などと考え始めると始末が悪い。

■シフト機能の進化の先にあるのは?

トヨタ bZ4Xのダイヤル式シフト。右に回すとDレンジ、左はRレンジ、押すとPレンジに入る
トヨタ bZ4Xのダイヤル式シフト。右に回すとDレンジ、左はRレンジ、押すとPレンジに入る
トヨタ bZ4X
トヨタ bZ4X

 シフト機能の変化のトピックを振り返れば、ジャガー&ランドローバーが一時期進めていたダイヤル式は、演出として斬新ではあっても、ブラインド操作を可能とするには慣れを要したことは想像に難くない。トヨタbz4ZXとスバルソルテラが珍しくこのダイヤル式を採用している。

 ドライバーの手が届きやすいセンターコンソールに配置されることが必須となってしまい、デザインの自由度が意外に小さいことも広まらなかった理由だろう。

 「電制シフト」のデザインと操作性での有効性が明らかになったのは、いわゆる「インパネシフト」の採用拡大といえる。いまやミニバンはもちろんSUVやクロスオーバーでも標準仕様といえるほどまでになった。

 開発当初のインパネシフトは前席足元の空間に余裕をもたせるアイデアから生み出されたもので、ドライバーの立場からすると視線の移動を考えれば、操作性に優れるとは言い切れない部分もある。現状ではインストルメントパネルのデザインをすっきり仕上げられることのほうが優先されているように思える。

■トヨタはパワートレーンに細かく対応

2022年7月に発表されたトヨタ クラウンクロスオーバー
2022年7月に発表されたトヨタ クラウンクロスオーバー

 ここからは、2022年に発表された主な新型車の「ギアセレクター」を、日本メーカーを中心に見ていくことにしよう。意外といってはなんだが、各メーカーがトランスミッションの仕様に関して丁寧に対応していることが見えてくる。

 それが明確にわかるのが、ハイブリッドをフルラインナップしているトヨタだ。トヨタはアクアやプリウスといったハイブリッド専用モデルを除けば、パワートレーンの仕様に合わせてシフトレバーのデザインを、微妙な変化を含めて個別に設定している。

 トヨタに関しては電子制御式シフトをハイブリッドを中心に推し進めているわけだが、最新モデルを追ってみると、7月15日にワールドプレミアとして発表された、話題沸騰の新型クラウン(クロスオーバー)には、シフトレバーが明確に存在している。

新型クラウンのシフトレバー
新型クラウンのシフトレバー

 シフトレバーが生き残っている理由としては、続いて登場する予定のセダンなどのモデルと共通の仕様となることが予想されるからだ。一気にインテリアまでデザイン改革を実践することは、多少ははばかられたことが想像される。

 トヨタに関しては電子制御式シフトをハイブリッドを中心に推し進めているトヨタ。新型クラウンではシフトレバーは生き残った。

2022年8月に発表されたトヨタ シエンタ
2022年8月に発表されたトヨタ シエンタ

 新型シエンタ(8月23日発表)のシフト機構はパワートレーンに対応して3種類設定されている。

 具体的にグレードを見ると、トップグレードといえるハイブリッドZには、一般的な大きさのシフトレバーとボタンを組み合わせた、電制シフトの「エレクトロシフトマチック」、ハイブリッドのGとXにはストレート式シフトレバーを用意。

 すべてのガソリン仕様にCVTの10速シーケンシャルシフトマチック付きストレート式シフトレバーと仕様を変えている。コストがらみといえなくもないが、それぞれを最新仕様としたのは、トヨタの底力の表れといえる。

新型シエンタのハイブリッド、上級グレードのZに採用されているエレクトロシフトマチック。このほか、ハイブリッドのG、Xグレードにはストレート式シフトレバー、ガソリン車の全グレードには10速シーケンシャルシフトマチック付ストレート式シフトレバーを採用
新型シエンタのハイブリッド、上級グレードのZに採用されているエレクトロシフトマチック。このほか、ハイブリッドのG、Xグレードにはストレート式シフトレバー、ガソリン車の全グレードには10速シーケンシャルシフトマチック付ストレート式シフトレバーを採用

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