普通免許取得者でも運転できる車両総重量(GVW)3.5t未満の小型トラックは現状レアだが、トラックメーカーでは新規開発を急いでいる。それは、いままでのトラックと何が違うのだろうか? その最先端を解説するぞ!
※本稿は2024年1月のものです
文/ベストカー編集部、写真/日野自動車、TOYOTA
初出:『ベストカー』2024年2月26日号
■なぜワンボックス商用車ではダメなのか
GVW3.5t未満の商用車には、軽トラやタウンエースのようなクルマがあり、ハイエースやキャラバンなどのワンボックス商用車も選べるのでは? と思うだろう。
しかし、スクエアかつフラットで使いやすい荷台スペースと輸送効率を追求すれば、それなりのサイズをもつキャブオーバー型トラックが最適で、そのうえで耐久性を確保するには、ストレートなサイドレールを持つラダーフレームのセパレートシャシーが理想的である。
欧州だとデュカトのようなGVW3.5tのセミキャブ型FF商用バン/トラックが普及している。こちらは小型車サイズを大幅に超える寸法なので荷台スペースも充分だが、それゆえに日本の商用車ニーズには合わない。
つまり、積載面でも使い勝手でも免許制度でも、日本に合った小型トラックが必要となるのだ。
■GVW3.5t未満トラックの新時代
2024年1月10日の時点で市販中もしくは市販予定のGVW3.5t未満のトラックが、日野の「デュトロZ EV」、いすゞの「エルフ ミオ」「エルフ ミオEV」、トヨタの「ダイナ1t積系」ガソリン車である。このうち新普免制度を前提とした新型車が、デュトロZ EVとエルフ ミオだ。
とりわけデュトロZ EVは、単に普免で運転可能にとどまらず、バッテリーEV特有のパワートレーン構成を活かして、内燃エンジン車では成立不能なシャシー設計に挑み、軽やワンボックス車よりも荷室へのアクセスが容易という、非常に画期的な小型トラックを実現させた。
■デュトロZ EVの革新テクノロジー
日野デュトロZ EVのシャシーは、前輪と後輪がマウントする部分をラダーフレーム、前後輪に挟まれた部分がペリメーターフレームという、特殊なセパレートシャシーになっている。
FR駆動が主流のトラックにあってデュトロZ EVはFF駆動を採用し、最高出力67PS・最大トルク334Nmの走行用モーターは、減速機およびデフと一体化した「eアクスル」となって運転席の下に収められている。
高電圧バッテリー(容量20kWh×2基)は、ペリメーターフレームに囲まれる形で搭載する。この高電圧バッテリーの直上から最後尾までが荷台で、後輪ホイールハウス以外は完全にフラット。
これもFFレイアウトのおかげだが、さらに床面地上高はわずか45cmで、ハイエース(62cm)やキャリイ(65cm)よりも低く、なんと新型アルファードと同じだ。なおウォークスルーバン仕様は、フロアに20cmの段差があるが、文字どおり運転席と荷室を往来できる。
車両サイズは全長4695mm×全幅1695mm×全高2290mmで、専有面積はハイエースバン4ナンバー車と同一、高さは小型車枠を超えるため1ナンバー車(普通貨物車)となるが、荷室寸法は内法長2975mm×内法幅1590mm×内法高1795mmで、大人が直立できるスペースがある。
乗り降りしやすく、身を屈めずに作業できるトラック、というのがデュトロZ EVの「新しさ」である。
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