レヴォーグ1000km実走行から見えてきた「レガシィツーリングワゴンの継承者たる理由」と30年後の名車足り得るのか?

■スタイリッシュながら実用性も両立するスバル渾身の力作が「レヴォーグ」

 近年のステーションワゴンはセダンと同様、SUVとの違いを強調するため実用性を削ってスタイリッシュさを優先させることが多くなっているが、レヴォーグはそういうトレンドとは一線を画している。

 実用性を重んじる、もっと言えばスタイリッシュになろうとしても実用から離れられない土臭さは昭和の「レオーネ」時代から捨てられないスバルのDNA。クルマの未来が見通せないこの難しい時代に退潮著しいステーションワゴンの専用モデルを作ったということを含め、スバルらしさを懸命に維持しようとして作ったクルマがレヴォーグと言える。

 要素別にもう少し細かく見ていこう。走りについては基本的に非常によく作り込まれている。何がいいかというと、絶対性能もさることながら走っている最中に違和感を感じることががほとんどない点だ。

■低重心パッケージだけでないトータルバランスで秀でるレヴォーグの走り

 走っている時の違和感というのは、例えばコーナーでステアリングを切り込んでいった時に思ったより強い横Gを感じた、あるいはGがかかる方向が予想と異なっていた、氷結路で気が付かないうちにアンダーステアが強まっていたなどなど、期待値と体感のズレのことで、レヴォーグはそれがきわめて小さく抑えられていた。

 自動車工学が発達した今日においてはスペックの高いクルマを作るのは昔ほど難しくなく、違いはメーカー間の実力差よりはどのくらいの性能目標にするか、どのくらいのコストをかけるかという思想、判断によるところのほうが大きい。

 そんななかで、なかなかままならないのが人間がどう感じるかということ。クルマの動きやインフォメーションがドライバーの予想と一致することは機械的スペック以上に大事なことで、それがよくないと体に余計な力が入ったり、神経を使ったりの繰り返しで疲労の蓄積が大きくなる。

■ロングドライブでもドライバーもパッセンジャーも疲れ知らずな快適な移動空間を実現!!

 この点はメーカー、モデルによってけっこう差があるのだが、レヴォーグは欧州Cセグメントに相当するモデルとしてはトップランナー級でワントリップ1000km程度のツーリングではストレスの感じようもないというくらい。

 操縦フィールはアグレッシブな感じではないが、思いどおりにクルマが動くため安心感が高く、それがドライビングプレジャーの高さにもつながっているという印象だった。

 そして前述の居住性とステーションワゴンとしての使い勝手の両立である。まずもって後席が非常に広い。旧型もそこそこゆとりがあるほうだったのだが、座ってみた瞬間に違いがわかるくらいだ。

 同クラスの低車高モデルで後席のレッグルームに余裕があることが印象に残っているモデルにホンダのセダン、インサイトがあったが、それに匹敵する居住感の高さだった。

■ステーションワゴンの「基本」荷室も充分なうえ、非常に使いやすい

長年ワゴン車を作り続けてきたノウハウはここにも活きる! 広さだけでなくサスペンションの張り出しや開口部の広さまで実用性にとことんこだわったレヴォーグのラゲッジスペース
長年ワゴン車を作り続けてきたノウハウはここにも活きる! 広さだけでなくサスペンションの張り出しや開口部の広さまで実用性にとことんこだわったレヴォーグのラゲッジスペース

 荷室はどうかというと、一見それほど広い感じはしない。実際、ボード上の荷室容量は492Lと、欧州の同格ワゴンに比べると見劣りする。が、実際の使い勝手のよさはその数値から受ける想像をはるかに凌駕する。

 容量が少ない要因は奥ゆきが1mをゆうに超えるため、長尺物も簡単に積み込めることだ。荷室がスクエアにデザインされているのも真面目な部分で、ピッチリと整理して荷物を積み込めばデッドスペースが少なくてすむ。実質的に使えるスペースはかなり大きいと感じられた。

 ラゲッジスペースのボード下には別にサブトランクがあるが、これの収容力もかなりのもの。テスト車両には果実の出荷箱くらいのサイズのツールボックスや雪道脱出ラダーなどがすっぽり入っていた。

 もともとはスペアタイヤを収納する場所なのだが、見たところ細いテンパータイヤではなくフルサイズのタイヤが入りそうな深さ。それが効を奏したという感があった。

 走り、居住性、ユーティリティと、長距離ステーションワゴンとして実に生真面目に作られているレヴォーグ。俗にスバリストと呼ばれるコアなファン層には大いに響くことだろう。またモデル数の減少で発生している「ステーションワゴン難民」も吸引できそうだ。

 が、ステーションワゴンを再び自動車マーケットのスターダムにのし上げ、スバルのブランドイメージを強固なものにできるかという観点ではいささか弱いように思えた。

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