■ネックは燃費⁉ 自慢の新開発エンジンの「よさ」をなかなか引き出せない
最大の理由は燃費である。テストドライブ時の燃費は実測15.1km/L。おおまかに市街地200km、高速300km、平坦な郊外路300km、若干の圧雪路と凍結路を含む山岳区間200kmを走行してのこのスコアをいいとみるか悪いとみるかは人によるだろうが、先代型レヴォーグの1.6Lターボに対して実測燃費で差を付けられなかったのはいただけない。
普通なら少々の燃費差など気持ちの問題ということですますのもありなのだが、ステーションワゴンの復権というファクターを思うとそうはいかない。SUVに比べて車高が低く、空気抵抗が小さいというステーションワゴンのメリットを数字で裏付ける必要があったのだ。
古いエンジンで頑張りましたというならまだわかるのだが、テスト車に搭載されていた1.8Lターボエンジンはレヴォーグがデビューという最新鋭モデル。ターボ過給でありながら低負荷時には希薄燃焼制御がなされ、スバルの技術陣がピーク熱効率40%と豪語していた。この40%という数字はすごいもので、非ハイブリッド用ガソリンエンジンとしては自然吸気を含め世界最高峰レベルだ。
■さまざまなシーンをこなしてもよくも悪くも「安定」、環境面はもうひと頑張りを期待!!
ところが、ドライブ序盤で早くもその数値のわりには燃費を思うように伸ばせないことがわかってきた。リーン領域もあるのだからエンジンの使い方次第でガーンと燃費を稼げなければおかしいと、スロットルペダルの踏み方を変えたり、CVTの疑似MTを使ってみたりと、ドライブ終盤まであれこれ工夫した。
ワインディングのごく一部の区間を除いては子猫のようにおとなしい走りに終始して、この程度の燃費なのだ。普通に楽しんでいたら13km/L台だったろう。
実際にはピーク熱効率が40%出ていないのか、熱効率の高い領域がピンポイントすぎてほとんど使えないのか、はたまたエンジンの熱効率は高くともCVTの伝達効率が低いのか理由は定かではないが、スバル渾身の最新鋭が泣くというのが正直な感想。
スバルのクルマ作りは空力やAWDシステムなど理系マニア的な色彩が濃い。ストロングハイブリッドのような驚異的な燃費でなくとも「想像より断然すごい燃費。さすが新エンジン」と感心させるようでないと、旧来のスバルのブランドイメージを保つのも覚束ないだろう。
■SUV全盛のなか、ワゴンのよさを極めつつさらなる飛躍をして欲しい!!
走りの面では低車高、低重心の特徴を充分に生かしているレヴォーグ。だが、CO2低減や燃料価格高騰などの圧力が日に日に高まっている今日の世相を考えると、走りや利便性だけに頼っていてはニッチマーケットを通り越して本物のマイノリティになってしまう。
この1.8Lターボエンジン搭載車はトラブル続きで4月26日現在は対策のため、レヴォーグ以外にフォレスターとレガシィアウトバックも出荷停止中だ。出荷再開までは2カ月半かかるとみられている。
実用的設計や走りのチューニングと同じようにエンジン開発に情熱を注ぎ、モデルライフ途中でガッチリ改良して素晴らしいエンジンに仕立ててほしい。それができればSUVでなくステーションワゴンに乗る意味をもっと多くのユーザーが見い出すようになるだろうし、レヴォーグの販売が好調に推移すれば他社もグローバルコンパクトクラスのワゴンもまだまだイケるのかと競合モデルを出すというサイクルが生まれないともかぎらない。
スバルは業績低迷で苦境に立たされているが、ステーションワゴンの老舗として今一度、意地を見せていただきたいものである。
【画像ギャラリー】レガシィ(伝承)からレヴォーグ(伝承・変革+α)へスバルワゴンモデルの歴史(25枚)画像ギャラリー
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