■「ユーザーは見逃さなかった」……石川真禧照(自動車生活探検家)
三菱のプラグインハイブリッド(PHEV)SUV、アウトランダーPHEVが売れている。
アウトランダーが発売されたのは2021年12月。すでに10月から先行受注を開始していたが、12月の時点で、月販目標台数1000台のところ、6900台以上の受注が入っていた。
この人気は発売後も継続しており、2022年1~10月の累計販売台数は1万5300台。これは三菱の登録車のなかでトップ。PHEVの国内販売でも2021年度のトップを獲得している。
ちなみにPHEVというのは、エンジンとモーターを搭載し、クルマを動かす方式。充電もできるし、ガソリンを給油することもできる。アウトランダーは、駆動用バッテリーに蓄えた電力を使ってモーターで走る「EV走行モード」、エンジンで発電して駆動用バッテリーに充電しながらモーターで走る「シリーズ走行モード」、エンジンの動力で走行してモーターがアシストする「パラレル走行モード」という3つの走行モードを走行状況や電池残量に応じて自動で切り替えて走行している。
デビューして1年経過しているアウトランダーPHEVだが、なぜここまで売れているのだろう。
まず言えるのは、同じ国産車のなかにライバルが少ない、ということ。
PHEVのSUVではトヨタRAV4、レクサスNX450ht、RX450htぐらいしか浮かんでこない。ここで決定的に違うのはアウトランダーPHEVの定員だ。3列シート、7人乗り。実際に3列シートまで使っているユーザーはそう多くはないのだが、イザというときのためのシート。
アウトランダーの先行受注のデータを見ても、7人乗り「P」グレードが76%で、ダントツ1位。2位の5人乗り「G」グレードの16%を引きはなしていた。
7人乗り、3列シートのPHEVというカテゴリーも最近になって同形態のモデルも出てきているが、アウトランダーの優位はしばらく動かないだろう。
国産車にライバルがいないとなると、次は輸入車だ。
「最近では輸入車のお客さまからの問い合わせや試乗が増えています。弊社の場合、これまでこういうことはあまりなかったです」(三菱自動車販売店担当者)
さっそく、輸入車のPHEV・SUVを調べてみた。その車種は想像以上に多かった。ドイツ車(4車種)はもちろん、フランス(3車種)、スウェーデン(3車種)、アメリカ車(1車種)のPHEVが日本に上陸していた。全部で11車種だ。
まず、アウトランダーPHEVの特徴のひとつである3列シート、7人乗りというところからチェックしてみる。BMW X5、ボルボ XC90、ディスカバースポーツが3列シートを備えていた。しかし、どれも車体が大きい。全長、全幅ともにアウトランダーPHEVを上回っている。車両本体価格も1000万円超が2車種。あと1車種も663万円からだ。
輸入車なので、車両価格で比較するのが難しいのは承知だが、462万円~548万円のアウトランダーPHEVとの差は小さくない。
次に動力性能だ。PHEVの特徴のひとつとして、EV(モーター)での走行距離の長さがある。エンジンを回さず=燃料を使わずにどれくらいの距離を走行できるかだ。アウトランダーPHEVは83km(WLTCモード)だ。輸入車PHEV・SUVで比較してみると、80km台をカタログ表記しているのは1車種だけなのだ。EVモードでの使い勝手のよさを比較してもアウトランダーPHEVの実力は頭ひとつ以上、上にいる。
三菱は2009年にi-MiEVで、EVを発売したEVの先駆メーカーなので、EVに関するノウハウも豊富に持っている。さらにパジェロ、ランエボなどで1970年代から「走りの機構」にも多くのノウハウがある。3列シートのSUV、RVのクルマづくりも蓄積がある。
この技術の集積は国産メーカーだけでなく海外の自動車メーカーもかなわない。アウトランダーPHEVが売れているのはこうした技術を集結させた結果といえる。
ユーザーは、アウトランダーPHEVの良さを見逃していないのだ。
【画像ギャラリー】猛々しくて華々しい!! 大ヒット御礼アウトランダーPHEVの蔵出し画像(36枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方