走行性能、燃費、さらに安全装備を充実しつつも低価格を維持!!
パワーユニットでは、新たにマイルドハイブリッドを加えた。モーター機能付き発電機が、減速時を中心とした発電、アイドリングストップ後の再始動、エンジン駆動の支援を行う。アイドリングストップ後の再始動はベルトを介して行われるから、再始動音も静かだ。
WLTCモード燃費は27.7km/L(2WD)で、軽自動車では最良の数値になる。ノートe-POWER・Xの28.4km/L、フィットe:HEVネスの27.4km/Lなど、コンパクトカーの本格的なハイブリッドと同等だ。アルトのベーシックグレードに搭載されるエネチャージも25.2km/Lだから、軽自動車の中でも優れた部類に入る。
走りの質も高まった。遮音を入念に行ったので、ノイズが抑えられている。乗り心地も向上した。先代型の主力グレードが装着したタイヤは13インチで、転がり抵抗を抑えて燃費を向上させるため、指定空気圧は前後輪ともに280kPaと高かった。
新型アルトのタイヤは、ワゴンRスマイルで開発した14インチに変更され、指定空気圧も240kPaに抑えている。足まわりのセッティングは、走行安定性の向上を目的に少し硬めになったが、乗り心地は新型が先代型よりも快適に感じられる。
安全装備も進化して、衝突被害軽減ブレーキを作動できるデュアルカメラブレーキサポート、運転席/助手席/サイド/カーテンエアバッグなどを全車に標準装着した。このように新型アルトは、先代型に比べると、内外装の質、視界、走行安定性、乗り心地、安全装備などを幅広く進化させている。
そのわりに競争の激しい軽自動車とあって、値上げは最小限度に抑えた。例えば先代型のFにセーフティサポートを加えると、トランスミッションが5速AGS(オートギヤシフト)の仕様で92万4000円だった。
新型のAは94万8000円だが、サイド&カーテンエアバッグなどが加わり、衝突被害軽減ブレーキも進化した。ATは5速AGSから無段変速式のCVTに上級化され、前述のとおり内外装の質も向上している。実質的には価格を下げている。
初代モデル 現在の価値と新型アルトの価格はほぼ同じ??
アルトの買い得グレードはLだ。マイルドハイブリッドは搭載されないが、安全装備は充分に装着され、実用装備も網羅して価格は99万8800円に抑えた。
ライバル車のミライースL・SAIIIは95万9200円だ。価格はアルトLが約4万円高いが、サイド&カーテンエアバッグ、ゆっくりと後退しているときに衝突被害軽減ブレーキを作動させる後退時ブレーキサポート、運転席シートヒーターなどが加わる。新型アルトは、売れ行きを伸ばすべくミライースを意識して開発されたから、割安度を強めた。
同じスズキ車のワゴンRでは、アルトに相当するグレードとして、116万3800円のFAがある。ワゴンR・FAはアルトLに比べて後席と荷室が広く、シートアレンジと収納設備も多彩だ。その代わりアルトLは、サイド&カーテンエアバッグを標準装着して、価格はワゴンR・FAよりも約16万円安い。
このようにアルトの価格は、軽自動車の中でも特に割安に設定されている。これはアルトが1979年に初代モデルを発売して以来の伝統だ。そして初代アルトの1979年における47万円の価格を、大卒初任給をベースに現在の価値に換算すると、約90万円になる。当時は消費税がなかったから、税込み価格に置き換えると、当時の47万円は現在の99万円だ。
この価格設定は、新型アルトAの94万3800円とほぼ合致する。従って新型アルトAを購入するときの経済的な負担は、1979年に47万円で発売された初代アルトとほぼ同じだ。
そして今のアルトAは、前述のとおり衝突被害軽減ブレーキやサイド&カーテンエアバッグを標準装着するが、初代アルトの安全装備はほぼ皆無だった。エアコン、パワーステアリング、さらに左側のドアの鍵穴まで省いていた。つまり初代アルトと今のアルトを比べると、購入時の経済的な負担は同程度だが、装備は比較にならないほど充実して買い得度を大幅に強めている。
そこで歴代アルトの価格を振り返ると、ベーシックグレードの経済的な負担は、いつの時代でも「1979年の47万円」で推移してきたことが分かる。常に「一番安価な4輪車」の立場を守りながら、時代のニーズに応じてメカニズムや装備を充実させてきた。
軽自動車は、商用車を含めて、常に日本のユーザーに寄り沿うクルマ造りを行ってきた。その本質をひたすら追求してきたのがアルトだ。従ってアルトは軽自動車の中心的な車種に位置付けられ、新型もブレずにその歩みをさらに進めている。
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