【マツダ6、マーチ、ミラージュ…】売れていない名車たちの事情とその打開策

 栄枯盛衰は世の常だ。ヒットを飛ばし、一世を風靡した名車でも、代を重ねると凋落のクルマ人生を歩むことが少なくないのである。

 名車と称えられた栄光の座から転がり落ち、失敗作のレッテルを貼られてしまったクルマは意外にも多い。

 傑出した実力を備えていながら明暗を分けてしまった理由は、いろいろなことが考えられる。その理由を解き明かすことによって再び脚光を浴びるクルマも少なくないのだ。

 そこで販売台数が低迷している5台のクルマを選び、販売不振の理由と販売を伸ばすための打開策を考えてみた。

文:片岡英明/写真:MAZDA、ベストカー編集部

【画像ギャラリー】なぜ新型アウトバックと新型マーチをすぐに日本に導入しない?


マツダマツダ6

デビュー:2012年11月(2019年6月にアテンザからマツダ6に車名変更)
2019年累計販売台数:5301台(セダン:2666台、ワゴン:2635台)

2019年の一部改良を機にアテンザからマツダ6に車名変更。2018年にフルモデルチェンジに近いビッグマイチェンをしているため、マツダ6になっても新鮮味がない

 ご存知のように「マツダ6」はアテンザを祖とするマツダのフラッグシップセダンだ。アテンザとして登場したのは今から8年近く前の2012年で、2019年7月からマツダ6を名乗っている。

 マツダ2(旧デミオ)もそうだが、途中からのネーミング変更は百害あって一利なし。慣れ親しんだオーナーからは反感を買うし、新しい車名は馴染みがないから他社からの乗り換えも期待薄だ。

 しかもマツダ6はアテンザの時代の最終期に大がかりな商品改良を行っているから、この先の伸び代は小さいだろう。

内外装の質感の高さは国産セダンではトップクラスながら、セダン、ワゴンとも全幅が1840mmと大きく日本で使うには勝手がよくない

 マツダ6は全幅が1840㎜と広く、クラウンよりもワイドだ。マツダらしいスタイリッシュなフォルムは魅力だが、クラウンと比べると押しの強さや風格は今一歩にとどまる。

 また、パワフルなディーゼルターボはあるが、上質な6気筒搭載車やハイブリッド車の設定はない。登場から8年目に突入したことに加え、消費税が10%に上がってからは一気に販売台数が落ち込んだ。

 今ではセダンとワゴン合わせて200台以下の月が珍しくないのである。

 一番の策はモデルチェンジしてFRベースに転向し、SKYACTIV-Xや新世代の直列6気筒エンジンを積むことだ。

マツダが開発中のFRセダンの予想CG。マツダとトヨタは協業を拡大し、マツダが開発中のFR用の直6はマークX後継セダンにも搭載されるという情報もある

 が、多額の投資を必要とするから、急場しのぎにディーゼルターボの超ド級モデルを加えれば、スポーティ派は喜ぶだろう。

 もう少し余裕があれば、トヨタからハイブリッドシステムを供給してもらってもいい。

スバルレガシィアウトバック

デビュー:2014年10月
2019年累計販売台数:3875台

2009年にデビューした4代目からボディの大型化が顕著となり、現行モデルは全幅は1840mmとなっている。売れる北米偏重としたことの弊害だ

 レガシィは4代目までは安定して売れ続け、ツーリングワゴンだけでなくアウトバックもファンが多かった。

 が、5代目からはメインステージを北米市場にシフトし、ボディサイズも大型化している。そして現行の6代目は主役を務めていたツーリングワゴンを思い切って切り捨てた。

 スポーティ派が好んだターボエンジン搭載車や6速MT車も、かなり前に整理されているなど、今の日本では名ばかりのレガシィになってしまった。

 しかも環境性能に関してはライバルに後れを取り、燃費が今一歩だからスバルファンも積極的に買おうとしない。

 消費税が10%に上がって以降、ファンが多かったアウトバックも販売が激減し、300台以下の販売台数の月が増えている。

 すでに海外では7代目のレガシィがベールを脱いだ。日本への導入は2020年秋以降になりそうだが、なぜ早期導入をしないのか。

北米ですでに販売中の新型アウトバックは 全長4841×全幅1839×全高1501mm (換算値)と現行並みの大きさだから日本に早期導入しない理由がわからない

 新型レヴォーグはレガシィのユーザーも吸収する魅力を備えているだろうが、レガシィでなくちゃ、というファンは少なくないはずだ。

 この手のファンを取り込むためにも豪快なDOHCターボを積むGTシリーズの復活を熱烈ラブコール。

 もともと走りの実力は高いのだから、究極のスポーツ4WDをアウトバックに加えてほしいものだ。

日産マーチ

デビュー:2010年7月
2019年累計販売台数:9343台

2010年デビューだから2020年は丸10年になる。Vモーショングリルの装着など、デザインの手直しにより質感はアップしたが、ライバルに対抗するのは難しい

 マーチは日産を代表する名車で、初代と2代目は10年近くにわたって安定して売れ続けたし、キュートなデザインの3代目には今も熱狂的なファンが多い。

 が、2010年夏に登場した現行の4代目は、新興国のエントリーユーザーを狙ったベーシックカーで、賃金の安いタイで生産を行っている。

 当然、軽自動車の素晴らしさを知っている日本のユーザーは、失望し、買い控えた。

 走りの質感は低いし、キャビンも狭い。そして先進安全装備も付いていないから多くの人はそっぽを向いたのだ。

日産は日本市場ではコンパクトカーはノートがあればいい、と考えている節がある。日産自慢のe-POWERをマーチに搭載すれば販売は伸びるハズだ

 海外では最新のマーチ(マイクラ)を販売しているのに、日本は旧型を売っている。このことも足を引っ張った。

 同じ時期に登場したアクアは今なおコンスタントに5000台レベルをキープしている。モデル末期のヴィッツやスイフトなどのコンパクトカーも落ち込みは小さい。

 基本性能の低さとデザインの悪さを指摘する人が多いから、モデルチェンジして欧州で販売している最新のマーチを日本に導入し生まれ変わるのがベストだ。

 が、その予算が出せないというのなら、シリーズハイブリッドのe-POWERをノートから譲り受け、積むのが最良の策だろう。

 デザインも化粧直しすれば、短期のリリーフなら行けると思う。

2017年に欧州では新型に切り替わったマイクラ(日本名マーチ)。歴代のイメージを覆すスポーティなデザインが好評という。なぜ日本で売らないのか理解に苦しむ

スズキエスクード

デビュー:2015年10月
2019年累計販売台数:2659台

洗練されたデザイン、高い走破性を誇る4WD、先進安全装備、買い得感の高い価格設定など大きな欠点が見当たらないエスクードだが、エスクードを選ぶ理由が希薄だ

 エスクードはスズキを代表するSUVで、世界中に多くのファンを持つ。

 誕生したのは昭和の末期、1988年だ。本格派のオフロード4WDだが、クロスオーバーSUVの性格も併せ持っていた。

 2代目以降はタフな走りに磨きをかけてきたが、その最新モデルはSX4 Sクロスと兄弟関係になり、プラットフォームなどを共用している。

 ダウンサイジングを図り、パワーユニットもスイフトスポーツと同じ1.4Lの直列4気筒DOHCターボとなった。2Lクラスの自然吸気エンジンと互角の走行性能が売りだし、オールグリップというスズキ独自の4WDの実力も高い。

 機能装備もヒルディセントコントロールや前席シートヒーターなど、充実している。

 先進安全装備も不満のないレベルだ。クルマとしての出来は悪くないのだが、ハンガリーで生産している現行型エスクードは存在感が薄い。

 SX4 Sクロスとの差別化が少ないし、デザインがスマートすぎることも販売が低迷している理由のひとつだろう。

エスクードはスズキ自慢の4WDシステムのオールグリップによる高い走破性を誇るが、ジムニー&ジムニーシエラのような武骨なまでの力強さがほしい

 日本のファンが待ち望んでいるのは、タフなイメージを前面に押し出した硬派のエスクードである。

 このジャンルは、本格派を気取ったSUVが人気だ。非日常の魅力を訴求したRAV4やエクストレイルは安定して売れている。

 だからジムニーシエラの兄貴分として、もっとラギッド感を強めたスタイルとし、メカにもこだわりを見せたほうが売れると思う。

三菱ミラージュ

デビュー:2012年8月
2019年累計販売台数:3181台

2度のビッグマイチェンによりエクステリアの質感は大幅に高まっているミラージュだが、導入時のチープなイメージから脱却できずに苦戦が続いている

 ミラージュは、1978年に三菱初のFF2ボックスカーとしてデビューした。キュートなデザインのなかに洗練されたメカニズムを収め、歴代のミラージュはラリーなどのモータースポーツでも大活躍した。

 復活させた現行のミラージュは低価格を実現するためにタイで生産を行っている。パッケージングは悪くなく、キャビンは不満のない広さだ。

 だが、走りのクオリティは三菱基準に達していなかった。前作のコルトと比べると余裕はないし、操縦性と快適性も軽自動車レベルにとどまっている。

軽自動車よりも安いコンパクトカーというのが復活登場したミラージュのセールスポイントだったが、価格相応の性能しかもっていなかったのが痛かった

 今のミラージュは、アセアンで売るならいいが、いいクルマを見慣れている日本のファンに売れるベーシックカーではなかった。

 三菱も途中で気がつき、1Lエンジンを1.2Lとし、アイドリングストップ機構も追加している。

 また、ハンドリングや乗り心地も見直しを図った。が、最初の安っぽいクルマ、走らないクルマというイメージを拭い去ることができなかったのが敗因だろう。

 コストパフォーマンスは高いので、さらに魅力を増すために快適装備や先進安全装備を加えた買い得仕様を出してもらいたい。

 また、イメージアップのためにスポーティな走りの4WDターボも必要だ。4WDが無理なら、かつて存在したコルトラリーアートバージョンRのようなモデルを切望する。

コルトエボは登場しなかったが、154psの1.5L、直4DOHCターボを搭載するコルトラリーアートバージョンRは魅力的だった。見た目もスパルタンでよかった

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