2017年に日本市場では13年ぶりに復活したピックアップトラックのトヨタハイラックスは、マニアックなクルマながら未だ販売は堅調で、近々マイナーチェンジが行われる。
日本ではハイラックスの独壇場となっているピックアップトラック市場だが、日本メーカー各社は海外向けにはハイラックスが属するミドル級のピックアップトラックをラインナップしている。
ミドル級ピックアップトラックのボディはハイラックスでいう2ドアのシングルキャブ、2ドア+マツダRX-8のような観音ドアを持ち、荷物置き場などに使えるスペースを持つスマートキャブ、4ドアのダブルキャブという3つがあるのがほぼお決まりだ。
当記事は、日本メーカーが日本で販売していないが、販売してほしい魅力的なミドル級ピックアップトラックたちを紹介していく。
文:永田恵一/写真:NISSAN、HONDA、MITSUBISHI、ISUZU、MAZDA、TOYOTA、RENAULT、MERCEDES-BENZ
【画像ギャラリー】ハイラックス&ダットサン 日本で販売されたピックアップトラックの2大ブランドをフラッシュバック!!
日産NP300ナバラ&フロンティア
NP300ナバラ&フロンティアは2002年まで日本でも販売されたダットサントラックの流れを汲むモデルで、中国、東南アジア、欧州で販売されるのがNP300ナバラ、北米で販売されるのがフロンティアである。
では2台が同じクルマかというとそうでもなく、それぞれの現行モデルはNP300ナバラが2014年登場なのに対し、フロンティアは2004年登場と古い。
タイ仕様でNP300ナバラから見ていくと、エンジンは7速ATもしくは6速MTと組み合わされる2.5Lディーゼルターボが中心だ。
現代的なエクステリアに加え、インテリアも現行エクストレイルを思い出させる乗用車的なもので、東南アジア圏ではピックアップトラックを乗用車代わりに使う人が多いのもよく分かる雰囲気を持つ。
対するアメリカ仕様のフロンティアは、内外装は15年ほど前の日産の雰囲気で、古さは否めない。
しかし機能面に関しては、「現行モデルとしては最後となる改良」を最近受けており、パワートレーンは改良前の2.5L、直4と4L、V6から新しい3.8L、直噴V6(最高出力は従来の4L、V6+49psの310ps)+9速ATに一本化され、劇的に進化した。
なおNP300ナバラ&フロンティアは2019年に日産が世界で販売した約517万6000台のうち7位となる21万6000台を販売している。
そしてルノーではアラスカン、ベンツではXクラスというピックアップトラックのベースになるなど、日産アライアンスにとって重要なモデルとなっている。
ホンダリッジライン
ピックアップトラックに代表される商用車のイメージは世界的に薄いホンダだが、北米向けにはリッジラインというピックアップトラックを2005年からラインナップしている。
現行型は2017年登場の2代目モデルで、リッジラインは他社のミドルクラスのピックアップトラックと異なりダブルキャブのみの設定だ。
またボディ構造もピックアップトラックでは定番のラダーフレームではなくモノコックボディを強化したもので、サスペンション形式もフロント/ストラット、リア/マルチリンクと全体的に乗用車に近い成り立ちだ。
乗用車に近いと言えばエンジンはボタン式スイッチとなる9速ATと組み合わされる3.5L、V6を横置きに搭載し、駆動方式はピックアップトラックでは珍しいFFと、4WDは切り替え操作なしでクルマが前後と後輪左右の駆動力配分も行ってくれるi-VTM4となる。
また荷台には下方向だけでなく横方向にも開くアオリや床下収納、コンセントを装備するなど、便利な機能が満載となっているのもリッジラインの大きな特徴だ。
三菱トライトン
トライトンは初代パジェロのベースとなったフォルテやその後継車となるストラーダの流れを汲むピックアップトラックだ。
2005年登場の初代モデルは3L、V6ガソリン+4速ATという仕様のみながら、日本でも販売されていた。
現行モデルは2014年登場の2代目モデルで、トライトンは初代モデルからタイ国で生産され世界各国に輸出される三菱自動車にとっては重要なモデルとなっている。
現在販売されるトライトンは2018年11月にビッグマイナーチェンジされたモデルで、パワートレーンはそれぞれ6速となるMTとATと組み合わされる2.4L、4気筒ディーゼルターボ(181ps)を搭載。
ダイナミックシールドが新たに採用されたフロントマスクをはじめトライトンは全体的に三菱自動車らしい堅実な仕上がりとなっており、派手さはないがユーザーの満足度は高いモデルとなっている。
いすゞD-MAX
初代モデルが2005年に登場したD-MAXはいすゞがジェミニなどの乗用車を自社生産していた頃からあったロデオなどから続くピックアップトラックで、2019年登場の現行型で3代目モデルとなる。
なお現行D-MAXは最近発表されたマツダBT-50の新型モデルのベースにもなっている。
D-MAXも3Lのディーゼルターボを搭載するなどオーソドックスなミドル級ピックアップトラックだが、注目したいのは150psの1.9Lディーゼルターボも設定する点だ。
日本のいすゞの販売網で一般ユーザーに販売するのは難しいとしても、もし1.9Lディーゼルターボを搭載したBT-50が安価に販売されれば、ハイラックスに対し面白いライバル車になるかもしれない。
番外編/日産NP200
小型ピックアップトラックというと日本では1994年まで販売されていたサニートラックが代表的だ。
サニートラックはなんと2008年まで南アフリカ共和国で販売されていたのだが、現在も南アフリカ共和国ではサニートラックの後継車的存在となるNP200というモデルが販売されている。
2008年登場のNP200はルノー傘下となるルーマニアのダチア社のロガンという低価格車をベースにした小型ピックアップトラックだ。
NP200はそれぞれ5速MTのみとなる1.6L、4気筒ガソリンと1.5Lディーゼルターボを搭載している。
2人乗りながらシート後方にはハイゼットジャンボやスーパーキャリイといった軽トラックのキャビン付のような荷物置き場に使えるスペースがあり、便利に使える。
それ以外の特徴はあまりないが、楽しげな雰囲気は魅力だ。
まとめ
このように各社海外向けにはハイラックス相手でも見劣りしないピックアップトラックを揃えているだけに、全体的な需要を考えれば難しいのも分かるにせよ日本にも1台くらいハイラックスのライバルとなるモデルが正規販売で欲しいところだ。