クルマは巨額の開発費がかかる商品だけに成功すれば大きな収益を得られるが、失敗した際のダメージも大きい、ハイリスクハイリターンな商品である。
それはここ1、2年でその盤石さをさらに強固なものにしているトヨタでも同じで、新型ハリアーのように出た瞬間に「成功間違いなし」と感じるモデルばかりでなく、何らかの不安のあるモデルも少なからずあった。
しかしトヨタが凄いのは、多少なりとも不安を抱えていたモデルをしっかりと売り切っていることにある。これこそトヨタの強さの象徴ともいえるだろう。
当記事ではそんなトヨタ車に感じた懸念と、懸念を跳ねのけた魅力や理由を考察していく。
文:永田恵一/写真:TOYOTA、池之平昌信、ベストカー編集部
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カムリ
デビュー:2017年
2017年登場の10代目モデルとなる現行カムリは、結果的に昨年姿を消したマークXの後継車的なモデルとすることも想定していた面もあり、日本向けも3ナンバーサイズとなった6代目から先代型9代目までのカムリに比べ、プロモーションなども含め格段に力の入ったモデルとなった。
しかし、古さはあるにせよFR+V6エンジンというプレミアム性を持ちながら価格は300万円以下というマークXに対し、カムリはFFである点をはじめとした実用性重視に見えるキャラクターなど、理屈よりも魅力度が重視される日本のラージセダン市場において、「カムリが受け入れられるのか?」という懸念も否めなかった。
しかし、現行カムリの日本仕様はハイブリッドのみとしキャラクターを明確にし、タイミングのよさもありパワートレーン、プラットホームともTNGAコンセプトとできたのも幸いし、全体的にとても完成度の高いクルマとなった。
さらに十二分に広い室内空間を確保しながら流麗なスタイルとしラージセダンに必要なエモーションな魅力を得たのに加え、販売網も現在は全トヨタディーラー扱いとなっているが、登場時は先代モデルまでのカローラ店に加え、トヨペット店、ネッツ店でも扱うようになり、販売力も強化。
結果、登場時の2400台という月間販売目標には届いていないものの、登場から3年目となった2019年も月平均1600台という堅調な販売をキープしており、現行カムリはほぼ目論見どおりのモデルに躍進した。
プリウス
デビュー:2015年
ハイブリッドカーの普及に多大な貢献を残し、空前のヒット車となった3代目プリウスの次期モデルとなった2015年登場の現行型4代目プリウスは大きなプレッシャーのかかるモデルだった。
現行プリウスに多くの人が感じた懸念はのちのインタビューで豊田章男社長が語ったこともある悪い意味でのクセのあるスタイルと、乗降性の悪さを含めた若干のリアシートの居住性の悪化である。
しかし基本的にキープコンセプトで登場した現行プリウスは大幅ではないものの燃費も向上させている。
また周りのクルマの進化もあり相対的に3代目プリウスの弱点となったハンドリングや乗り心地といった動的なクルマの質、安全装備の見劣りを、第一弾となった新世代のTNGAプラットホームや予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」の採用などにより劇的に向上させたのが大きかった。
結果3代目プリウスほどではないにせよ、登場から5年目に入った今も堅調な販売をキープしている。
また懸念されたスタイルは2018年のマイナーチェンジで個性を損なわない範囲で無難な方向に改められた。
加えてつい最近の一部改良でトヨタセーフティセンスの最新版へのアップデートや、スマートキーを使いドライバーによりペダルの踏み間違いによる急加速を抑制するプラスサポートをディーラーオプションで設定するといった改良を積み重ねている点も、プリウスの強さを後押ししているに違いない。