90ps、110ps、130ps、140psと、カタログに記載されている馬力だけを見ると、非力で、ぜんぜん走らないように見える。本当にそうなのだろうか? 実際に走らせてみると、結構楽しいのではと思ってしまうのだが……。
そこで、実際に走らせてみて、想像以上に楽しい、おもしろいと感じたモデルを7台をピックアップ! 100点満点で採点チェックし、高得点順に並べてみた。
さて、どんなクルマが、実際に走らせてみると楽しいのか? モータージャーナリストの鈴木直也氏が解説します!
文/鈴木直也
写真/ベストカー編集部
■「誰もが使い切れるパワーと正確で素直なコントロール性」が重要
最近のスーパーカーは軒並み500psオーバーが当たり前で、なかには1000psを超えるようなモンスターすら出現している。
こうなると、「どこでその馬力使うの?」と聞きたくなるが、アレはブランドを彩るアクセサリーみたいなもの。一度もその能力を100%発揮することなく富豪のガレージに飾られるのは、スポーツカーとしてはちょっと寂しい運命だと思う。
だから、ボクは「使いきれるパワー」というコンセプトが昔から好きだ。そもそも、スポーツの楽しさは自分の限界を超えるスリルと達成感。これは、100m10秒の壁に挑んでいる人も、15秒の人もおもしろさは同じ。超えるべきハードルの高さはあんまり関係ない。
つまり、100psのクルマでも楽しいクルマは楽しいということ。平均的なドライバーなら誰もが使い切れる手ごろなパフォーマンスと、正確で素直なハンドリングによるコントロール性のよさこそが、公道で走りをエンジョイするための大事な資質なのだ。
そしてもちろん、われわれ庶民にとっては「手の届く価格」という要素も重要なポイント。そんな観点からファン・トゥ・ドライブなクルマを選んでみた。
■マツダデミオ15MB 156万600円(6速MT)/ 92点
●1.5L、直4:116ps/15.1kgm、車重1020kg
デミオ15MBの「MB」はモータースポーツベース車の略。ジムカーナやラリーなど、アマチュアが草の 根モータースポーツに参加するベース車として企画されている。
初期モデルのデミオはガソリンエンジンは1.3Lしかなかったわけだから、走りがパワフルになっているのは誰でも納得だった。
1.3Lの92psが1.5L化で116ps/15.1kgmにアップ。しかも、いらない装備を外したことで車重はわずかに軽くなっており1020kg。それを6速MTで操るんだから、ワインディングを駆け回るおもしろさはロードスターにだってヒケをとらない。
2018年8月30日、デミオのガソリン車は全車1.3Lから1.5Lに排気量アップされたが、15MBのエンジンはハイオク仕様でちょっとだけ元気。
欲を言えば、鍛造クランクシャフトを入れて7000rpmまでしっかり回るロードスター用P5‐VP(RS)型が欲しいところだが、価格を考えるとそれは贅沢というもの。
ベースモデルでほぼ150万円というお買い得プライスなのに、ブレーキローターの大径化などスポーツユースに重要な部分がしっかり手当てされているんだから、作り手側のこだわりには頭が下がる。
ハンドリングは、むしろ予想以上の仕上がりといっていい。モータースポーツベース車だから「どうせサスは取り替えちゃうんでしょ?」ということで、拡大したブレーキ径以外は足回りの特別なチューニングはナシ。
それでもハンドリングが楽しいのは、ベースのデミオのシャシーが優秀ということ。軽快にノーズが向きを変え、いわゆる「振り回して楽しい」ファントゥドライブな走りが味わえる。
その楽しさは、コスパでいえばロードスター以上。ドライビングトレーナーとしても最適なクルマだと思います。
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