日本車のMT比率は1985年には51.2%だったのに、1990年には27.5%、2000年には8.8%と減り続け、直近の2017年のデータでは、2.6%まで下がっている。 スポーツカーのMTも年を追うごとに減り続け、ランボルギーニやフェラーリ、ポルシェなど、主要スポーツカーメーカーのトランスミッションは、いまやデュアルクラッチ式のDCTが主役だ。
3月8日から予約受注が開始されたスープラにもMTは用意されていない。
これってどういうこと? もはやスポーツカーにMTは必要ないのでしょうか? やっぱり操る楽しさはMTが一番だと思いませんか?
そこで、スポーツカーのMTはもう古いトランスミッションなのだろうか? 今後消滅していく運命なのか? 今買うべきMTのスポーツカーはどのモデルか、モータージャーナリストの岡本幸一郎氏が徹底解説。
文/岡本幸一郎
写真/ベストカーWEB編集部
■スープラの開発責任者・多田哲哉氏は「MTって必要ですか?」
プロトタイプのスープラ試乗会に行った際、メディアからの「スープラのMTはないのか?」 という質問にスープラの開発責任者・多田哲哉氏は、
「MTって必要ですか? 今の時代のATって、とてつもなく進化をしていて、このスープラ世代のものは、今よりももう1つ先のレベルにいっています。今のDCTも勝てないくらいのところにあります。速さという面ではもはやMTのアドバンテージはないし、軽さの面でも同じです。MTのほうが耐久性があって長持ちするという人もいるけど、それもありません」と答えている。
多田氏のコメントを聞いて、頭ではうすうす感じていたが、やはり本当にそうなのかという現実を目の当たりにしたように思う。
MTを手がけるサプライヤー自身が、シフトフィールのさらなる改善や軽量化など、まだ性能面で進化する余地があることを承知しつつも、もうお金をかけて開発する価値に乏しく、当面は現状のもので十分に通用すると認識している旨を聞いて、MT好きの筆者としても、なんとも寂しい気がしたものだ。
■実際、スポーツカーは高価なものほどMTの設定がない
フェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレンのいずれも3ペダルのMTの設定はすでになく、日本車でもGT-R、NSX、レクサスのFモデルには当初より設定がない。
かつてMTは本来的にスポーツカーのためのものであり、そのポテンシャルを最大限に引き出せる、走るためのものと認識されていたのだが、もはやそれは常識ではなくなってきた。
変わって多く採用されるようになったのが、ご存じのとおりDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)だ。DCTというのは、もともとレースのための生まれたトランスミッションであり、2軸にすることで低重心化できることや、瞬時にシフトチェンジを行なうことができ、その際の駆動力が抜ける時間もごく短く、ドライブフィールにダイレクト感があり、伝達効率に優れることなど多くのメリットがある。
市販車では2003年にVWがゴルフの高性能版に搭載したのが最初で、その後、実用車を含むVW系とそのグループの多くの車種に採用されたほか、前出の高価で高性能なスポーツカーの大半に搭載されるようになり、とりわけ後者においては旧来のMTを駆逐するに至ったわけだ。
とはいえ、MTを設定してくれてもよいはずなのに、どうしてMTを設定しないのか、そこにも嫌われる理由がいくつかある。
そもそも数が売れないという根本的な事情が最大の理由で、MTとDCTの両方が選べるスポーツカーでも、このところ圧倒的にDCTの販売比率が高くなっている。
すでに日本ではMT比率は2.6%(2017年)になっており、上の表のように日本車のMT比率が少ないのは時代の流れかもしれない。
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