イメージだけで語ってない? それ本当にしょぼいんですか!?

イメージだけで語ってない?  それ本当にしょぼいんですか!?

 クルマ好きという生き物は、少なからず〝スペック至上主義〟的な部分がある。 それはわずかばかりの馬力やトルク、JC08モード燃費値の違いなどなど。 カタログと睨めっこしながら、そんなスペックを基にクルマを格付けすることもしばしば。

 そんな時、憂き目にあうのが、その格付けにより「しょぼい」というイメージが定着したモノたち。

 例えば、上の写真のドラムブレーキだ。
しかし「後輪がドラムブレーキのクルマなんてしょぼい」などと果たして言い切れるのか!? 

 さあ、世の〝しょぼい疑惑〟をかけられているモノが、本当にしょぼいモノなのか否かみていこう。


ドラムブレーキはしょぼいのか?

判定人/鈴木直也

 ディスクブレーキのドラムブレーキに対する優位点は、①に放熱性能、②に耐水性能、③にメンテナンス性のよさ。このへんが主なところだ。

 このうち、実用上もっとも重要なのは①の放熱性能。ブレーキ負荷の大きい前輪ではディスクブレーキが必須。重量の重いクルマでは後輪もディスクとする場合が多い。

 極端なハナシ、前輪ドラムブレーキの昔のクルマでサーキット走行なんかやったら、よっぽど積極的に冷却しないかぎりアッという間にフェードしてブレーキ性能が低下する。こういうことがなくなったのは、ディスクブレーキが普及したおかげなのだ。

 だから、ブレーキ本来の制動能力、とりわけ繰り返し使用時のタフネスに関しては、ドラムブレーキはディスクブレーキよりショボいと言っても間違いじゃないと思う。

 ただし、何事も適材適所で、ドラムブレーキにも優れた特徴がある。その最たるものは自己倍力(セルフサーボ)効果。いわゆる「食いつき」のよさだ。

 ドラムブレーキはドラム内側からシューを押しつける仕組みから、小さな押しつけ力で大きな制動力が発生する(セルフサーボ効果)。乗用車でこの特性がメリットを発揮するのは、パーキングブレーキの効きがいいこと。ひと昔前は後輪ディスクブレーキにパーキングブレーキ用ドラムを一体化していた例もあったほど。

 判定‥‥50しょぼ


※本企画の判定は100点満点で判定人が、各しょぼい度を判定しています。点数が高いほどしょぼい度が高いという目安の判定になります  


DCTに対してトルコン多段ATはしょぼいのか?

判定人/松田秀士

 新型フォードフォーカスはこれまでのデュアルクラッチ式からトルコンATに戻しました。このところ、モデルチェンジや新型車であえてデュアルクラッチを採用しない例も見られるようになってきたと感じています。

 デュアルクラッチのメリットは、例えば2速で走行しているときにすでに3速ギヤも噛み合っていて、シフトアップ時に3速側のクラッチに切り替えるだけで変速作業が完了。

 だから、シフトラグが極端に小さくシフトアップ時のエネルギーロスが少なくなり燃費がいい(逆に言うとエコメリットは加速時のみ)。またほとんどの場合トルクコンバーターを持たないのでエネルギーロスも少ないこと。ただ、システムが複雑で変速のための油圧ポンプなど補器類が多く、そのための駆動ロスもありデメリットも見逃せません。

 さらに、最近のATはロックアップ領域を早く多くすることでMTのようなダイレクト感と燃費向上の進化も著しい。遊星ギヤを使っていることもあり多段化が比較的容易。

 ZFが開発したFF用9速ATはドグクラッチを採用した新技術でコンパクト軽量なものに仕上がっています。トルコン多段ATはショボくありません。

 判定‥‥10しょぼ

ストラット式サスはしょぼいのか?

判定人/松田秀士

 ストラットはロワ(下)アーム1本だけのサスペンション。ダブルウィッシュボーンはそれにもう1本アッパー(上)アームが追加されたサスペンションで、F1のサスペンションがこれに当たります。で、マルチリンクは、このダブルウィッシュボーンの進化形です。

 ストラットは1本のアームのみでタイヤをコントロールするので、ストロークするたびにタイヤの接地面が変化します。対してマルチリンクは2本以上でコントロールするので、タイヤの接地面を理想的に接地するようデザインできるのです。

 もうひとつ、サスペンションにはロールセンターがあって、クルマの重心とてこの原理の関係にあります。重心とロールセンターが離れているほどにモーメントが大きくなってタイヤをより押さえつけグリップします。

 しかし、サスペンションは上下に動くものなので、このロールセンターも動きます。アームが1本しかないストラットはマルチリンクに比べてこのロールセンターの動きが大きくなりがちなのです。つまり、タイヤへの荷重移動を安定させるのが難しいサスペンション形式といえるでしょう。

 ただし、ストラットのメリットは部品点数が少なく軽量で、コンパクトモデルには欠かせないものです。また、バンプストッピングラバーの進化で動きを制限できるようになったのでウィークポイントを補えるようになってきています。

 新型Cクラスのフロントサスペンションがマルチリンクのベースとなるダブルウィッシュボーンに進化しましたが、新しいC63AMGは乗り心地とハンドリングを両立したすばらしいモデルになりました。

 ボクの見識では、ストラットはやはりショボいです。

判定‥‥70しょぼ

60扁平タイヤはしょぼいのか?

判定人/松田秀士

 まず扁平率が下がることでタイヤの接地面が広がります。

 さらに、タイヤって柔らかい物質だから力を受けると変形します。同じ外径(外周の長さ)のタイヤで60扁平タイヤは45扁平タイヤよりハイト(高さ)が高いので、ホイールのリム部からタイヤの接地面までが高いですね。てこの原理で、45より60に大きな力がかかります。

 さらに60のほうがタイヤそのものの容積が大きい=エアボリュームが大きいので、タイヤの変形も大きくなるんですね。当然、接地面の変形も大きくなり、コーナリングによってグリップ力の変化が大きいということになります。つまり、60より45のほうがグリップ力は高い。さらに45のほうが操舵時の応答性が速い、というメリットがあります。

 しかし、これがすべてではありません。クルマは、前後のバランスで走り、曲がります。4本のタイヤの適度なグリップ変化が、コーナリングに切れ味を与えます。

 また、45扁平にするとホイールのインチアップも必要になり、今度はハブとホイールリムとの距離が長くなり、てこの原理でモーメントが増すのでハブ剛性が問われるようになります。

 要約すると、クルマとのバランスが重要で60がショボいと言い切れるものではありません。ただし、ハーシュ(突き上げ感)はエアボリュームの大きい60のほうが有利ですが、バウンシングの終息はそのクルマとのセットアップ次第なので、一概に60がいいと言い切れるものではありません。

 また、タイヤは転がることやブレーキによって熱を持ちますが、それによって内圧も上がります。エアボリュームの大きい60のほうが鈍感で有利です。結論、別に60はショボくない。

 判定‥‥20しょぼ

3気筒エンジンはしょぼいのか?

 判定人/鈴木直也

 昔からエンジンは気筒数が多いほうが〝偉い〟とされてきた。じゃあ、なんで多気筒化を目指したのかといえば、よりパワフルに、よりスムーズにというラグジュアリー志向によるもの。多気筒の方が贅沢だからエラかったのだ。

 この文脈からいえば、3気筒エンジンは明らかに4気筒よりショボいと言わざるを得ない。とくに、4気筒エンジンは昔から〝気筒数の下限〟イメージがあるから、それを下回っちゃうと「なんか落ちたなぁ」って印象。下流イメージが拭えない。

 いっぽう、最近の世の中の流れは、何をさて置いても燃費効率アップ。CO2排出量規制に適応するためなら、できることは「なんでもやりまっせ」というのが切実なトレンドだ。

 こういう待ったなしの規制を前にすると、なりふり構っちゃいられない。EUのCO2規制が厳しい欧州車でとくに4→3気筒への気筒数削減が増えてきているのはそのためだ。

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