【祝・ノーベル化学賞受賞!!!】 ニッポンのクルマを支える「お家芸」たち

■“ガラパゴス”だっていいじゃないか! 軽自動車規格

(TEXT/永田恵一)

「ガラ軽」と揶揄する層もいまだにごく一部ではいるようだが、それはとんでもない間違いだ。

 何よりも全長3400mm×全幅1480mm、排気量は660ccというかぎられた規格のなかで4人が乗れ、高速道路を100km/h、120km/hで走れて、それなりの衝突安全性を確保したクルマが100万円以下から成立しているということ自体が凄すぎる。

ガラ軽と呼ばれようが、軽自動車は日本人が誇るべきクルマ。しかも背の高いモデルだけじゃなく、SUVにスポーツカーなど、バリエーションも多い

 海外メーカーを見ても、2000年代初めに当時のダイムラークライスラーがピンチに陥っていた三菱自動車と資本提携を結んだ理由のひとつは「軽自動車、小型車の技術が欲しかったから」と言われているのはよくわかる。

 また、軽自動車的な「10万ルピーカー(当時のレートで約20万円)」として2009年に登場したインドのタタのナノは、衝突安全性やクォリティなど問題のオンパレードだった。

 現在もナノはフルモデルチェンジされて販売されているが、価格は中級グレードで約33万ルピー(日本円で約50万円)まで値上がりしている。そのため総合的、長期的に見たらナノ同様にAMTで約80万円のアルトバンのほうがずっと安く、軽自動車の凄さがより際立つ。

 個々のクルマを見ても素晴らしい。まず100万円程度で自動ブレーキ付きで4人が乗れるアルト&ミライースにはじまり、スーパーハイトワゴンなら大型セダンより後席の広い足元と頭上空間を確保しているうえに、ACCは装備され、N-BOXならクルマの出来自体がコンパクトカーも真っ青だ。

 また、主力となるモデル以外を見ても、ハスラーやキャストアクティバといったクロスオーバーは序の口で、大人4人とその荷物がバッチリ積める軽1BOXをはじめ、実際にないことではない過積載に耐える軽トラック、世界最小クロカンのジムニー、S660とコペンという趣味性の高いクルマまで揃う。

 そんなクルマたちに安い維持費で乗れる国は日本しかなく、軽自動車は世界に誇れるジャンルと断言できる。

■取り回し抜群! 5ナンバー車

(TEXT/編集部)

 1960年9月に道路運送車両法で定められた小型自動車規格がいわゆる5ナンバー車であり、全長4700mm以下、全幅1700mm以下、全高2000mm以下の排気量2000ccが該当する。

 国産車もグローバルでは車幅がどんどんワイドになっているが、自動車評論家の渡辺陽一郎氏は次のように語る。

「このボディサイズをもとに日本国内の道路インフラは作られているから妥当性がある。狭い日本で道路の幅員を考えるとこれが限界のようにも思う。

国産メーカーにはこのサイズでのしっかりとしたクルマ作りをやってほしいと熱望しているんだけど……」

全幅1700mm以内の現行型プレミオ/アリオンは由緒正しい5ナンバー車の模範。2007年デビューと古くてもいいモノはいいのだ 

■実燃費は他を寄せ付けない!ハイブリッド車の性能

 なんといってもニッポンのお家芸を持った国産車といえば、ハイブリッド車が浮かんでくる方がほとんどではないだろうか。

 下の一覧にまとめているように、トヨタを中心にコンパクトカー、セダン、SUV、ミニバン、ワゴン、軽といったように多種多様なカテゴリーにハイブリッド車、もしくはプラグインハイブリッド車が設定される。

 一方、輸入車ではBMWやポルシェ、レンジローバー、ボルボなどがパワー系ユニットとしてプラグインハイブリッド車を設定しているものの、明らかにその性格は日本のプラグインハイブリッド車とは違う。

世界に誇れるハイブリッド車大国のニッポン。なかでも現在の状況を作り出したのは紛れもなくプリウス。現行型で4代目になるが、その功績は偉大

 なぜ日本はここまでの“ハイブリッド王国”になったのか。自動車評論家の鈴木直也氏に聞いてみた。

*   *   *

 ベストカーでもおなじみの燃費テストを実施すると、ハイブリッド車の実燃費はほかのパワーユニットを圧倒する。それはもうトヨタが22年も前に先陣を切って、ハイブリッド車の道を切り拓いてきた功績が何よりも大きい。

 1997年にトヨタが初代プリウスを出した時って、周囲はリスキーだし、コスト割れ必至とみていた。実際、初代プリウスの最初期型なんて頻繁に亀マークは出たし、欠陥車と言われてもしかたないレベルだった。

 でも、結果はコストが下がっていった2代目プリウスから爆発的に売れ始め、3代目で盤石となり、現在に至っている。それはなぜか。

 もちろん、ハイブリッド車は都市部で平均速度が低速になり、信号が多い日本の道路状況に特性が合っていたこともあるのだけど、ボクは日本人の国民性が深く結びついていると考えている。

レクサスES(左)にインサイトなど、国産車ではセダンタイプもハイブリッド車のラインナップが豊富に揃っている

 だって初代プリウスなんか、燃費だけを考えると購入にかかる費用を回収できないのは明白だったワケで、それでも約4万人もの日本人アーリーアダプターが最初期型を買ったのだから、新しモノ好きの日本人の国民性ありきで偉かったと思うし、これぞニッポンのお家芸だと思う。

 この時に初代プリウスを購入した人のおかげで利益が上がって、それが次期型モデルの開発費に回り、マーケットが確立されていった。

 今やトヨタのハイブリッド技術は基本的な特許も切れ、他社への無償供与も今春から打ち出している。THSについて技術的ノウハウやサプライヤーまですべて公開されているのにもかかわらず、フォロワーが出てこない。

 それはアクアのように180万円くらいでハイブリッド車を販売して利益を出すことがいかに難しいか、トヨタと同じことをするのがいかに難しいかということの証明。

 トヨタとしては「やれるもんならやってみろ」ということだと思うけど、どこも追随してこないのが現状。

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