逆風下でも最高益を記録したトヨタ 深掘りするとモリゾウさんに行きついた


 2022年3月期の連結決算で過去最高となる営業収益31兆3795億円、営業利益2兆9956億円、当期利益2兆8501億円を計上し、いずれも従来の最高益を更新するものだった。

 円安だったから? それは違う。これまでの最高益は2016年3月期の営業利益2兆8539億円だったが、当時は1ドル120円で2022年3月期は1ドル112円だったから、6年前のほうが円安だ。販売台数も868万台から823万台へ45万台減っているし、資材高騰の影響で6400億円もコストが上がっている。そんな厳しい条件下でなぜ、トヨタは最高益を出せたのか? トヨタの変化を商品力という点から掘り下げてみた。

文/ベストカー編集部
写真/西尾タクト、TOYOTA

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モリゾウさんが言い続けてきた「もっといいクルマをつくろうよ」

 豊田章男社長(以下親しみを込めてモリゾウさんとします)が、2009年に社長就任が決まった際のメッセージで発信して以来、ずっと社員に呼び掛けてきた言葉に「もっといいクルマをつくろうよ」がある。あれから13年、もっといいクルマ作りのために努力し続けてきた結果、今回の最高益に結びついたのではないだろうか?

 モリゾウさんが社長に就任する以前のトヨタは2001年に「グローバルマスタープラン」を掲げ、生産台数世界一を目指していた。簡単に言えば、生産台数を決め、工場を次々に作った。作りやすいクルマ、売りやすいクルマが優先され、カローラやカムリ、プリウスが中心となり、セリカやスープラといったスポーツカーがラインナップから消えていった。2008年3月期でトヨタは売り上げ高でも過去最高を記録し、「グローバルマスタープラン」は成功したかに思えた。しかし、その年の9月に起こったリーマンショックが引き金となり、翌2009年3月期の決算では4610億円もの営業赤字を出してしまう。

 工場建設の設備投資に加え、車種ごとの開発による高コスト体質で、クルマが売れなくなり、円高になると、あっという間に赤字に転落してしまう体質だった。モリゾウさんに当時を聞くと「とにかくたくさん売りたい、もっと儲けたい」だったと振り返る。

 真にお客さんに選ばれるクルマ作りが行われていないのではないか? 商品力を上げて、お客さんにちゃんと選んでもらい、しっかり儲かる体制作りが不可欠とモリゾウさんは腹を決めた。

 2012年にはTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を発表し、86を発売した。2015年にはバラバラだったレース活動をTOYOTA GAZOO Racingに一本化し、モータースポーツから得た知見を積極的に市販車に生かす取り組みを加速させた。そして2016年にはカンパニー制が導入された。

 TNGAによって基本骨格を刷新し、走りや乗り心地のよさ、そしてデザイン性の高さを手に入れるとともに、部品やユニットの共用化に加えて、サプライヤーを含めた生産現場での連携や協業で開発と生産コストが大幅に圧縮された。さらにカンパニー制を取ることによって、より効率的な開発と生産が可能になった。

 例えばToyota Compact Car Companyは、ヤリスとヤリスクロス、アクア、シエンタなど比較的1台当たりの儲けが少ない車種を開発、生産するが、最初から共用化を考えて企画や開発が行われた結果、設備投資や部品調達で大幅にコストを圧縮しながら、同時に商品力の向上も可能になった。

 また、カンパニー制がなければ、開発や生産コストが高く、台数も望めないGRヤリスやGRカローラ、GR86といったGRのスポーツモデルの誕生もなかったはずだ。GRカンパニーとして、黒字にするという俯瞰的な見方ができなければ、スポーツカーを作っていくのは難しいからだ。

愛知県蒲郡市にあるトヨタグループの研修施設「KIZUNA」にはコースを自由に変えられるダートコースがあり、マスタードライバ―のモリゾウさんはみずからステアリングを握り、1000㎞以上走り、テストを重ねた。モータースポーツで勝つためのクルマを開発して市販するという、これまでにない発想でGRヤリスは開発された

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