ものづくりの舞台裏「12代目カローラに開発にあたって」
座談会第2弾は、ものづくりの舞台裏と題して、現開発責任者・福島徹氏、12代目カローラ開発責任者・上田泰史氏、堤工場副工場長・馬淵晃氏、トヨタ自動車東日本岩手工場工場長・藤井雅則氏が登壇した。
まず12代目カローラ開発責任者・上田泰史氏が、当時の苦労と印象深いエピソードを振り返った。上田氏は2015年から2024年までの約10年間、カローラの開発に携わり、12代目の開発から市場投入までを担当したという。
そのなかでも特に記憶に残っているのが、北海道士別のテストコースで行われた冬季試験での出来事だ。開発中のカローラを持ち込み、関係者による評価を受けたところ、当時の仕上がりは決して満足できるものではなかったという。
冬季のテストコースでは、滑りやすい路面によってクルマの挙動や弱点がはっきりと表れる。上田氏自身も事前に試乗して課題を感じていたが、評価会では大らかだった先輩エンジニアから「お前のクルマが一番悪い」と厳しい指摘を受けた。その悔しさが、開発チームの奮起につながったという。
「絶対に見返してやろう」という思いを胸に、チーム一丸となって改良を重ね、1年後、2年後の評価会では大きく進化したカローラを持ち込むことができた。
その結果、メディア関係者からは運動性能のよさやデザインを評価する声が上がったという。なかでも上田氏の胸に届いたのは、「すごく楽しんで作られましたよね」という言葉だった。
実際の開発は決して楽しいことばかりではなく、苦労の連続だった。それでも完成したクルマから、開発者たちの前向きな思いや情熱を感じ取ってもらえたことが、何よりうれしかったという。
この経験から上田氏は、開発者がどのような思いでクルマを作ったのかは、完成した商品を通じてユーザーにも伝わるのだと実感した。
現在は次期カローラの開発にも一部携わっているという上田氏。新しいモデルの開発現場でも、さまざまな困難や課題に直面しているはずだと語る。
カローラ製造現場で大切にしていること
続いて、生産現場での品質向上に向けた取り組みについても語られた。カローラシリーズの生産に携わってきた藤井雅則氏は、カローラクロスの生産に関するエピソードを紹介した。
生産拠点が変われば、製造ラインや設備、作業する人、さらには部品の調達先まで変わることがある。当然ながら、クルマづくりの条件も大きく変化する。
カローラクロスは2025年5月に岩手工場に生産移管されたという。もちろん、購入するユーザーにとって、どこの工場で作られたかは関係ない。
「生産する工場が変わったら品質が悪くなった」と言われることは絶対に避けなければならない。むしろ「最近のカローラクロスはよくなった」と感じてもらえるクルマを作ろうと、生産現場ではさまざまな改善を進めてきたという。
例えば、製造時の寸法や仕上がりのばらつきについても、単に許容範囲内に収めればよいという考え方ではない。最も望ましい状態を狙い、そこに近づけるための管理を徹底している。
また、車体のパネル接合部にシーラーを塗布する工程でも改善を重ねている。パネルの隙間や形状によってシーラーが塗りにくい場合、現場の作業者が工夫するだけでは限界がある。
そこで、プレス工程などの担当者も交えて、作業しやすい車体構造や工程に改善できないかを検討する。一つひとつは地道な取り組みだが、こうした積み重ねが完成車の品質を高めていく。
重要なのは、自分たちが担当する工程だけを改善すればよいという考え方ではないことだ。部署や工程の垣根を越え、工場全体でよりよいクルマづくりを目指す。その姿勢こそが、カローラの品質を支えているのである。



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