開発は進んでいたのに、そのまま市場に出ることがなく終わってしまったある種の悲劇なクルマたちは多い。
その背景には生産にあたって技術的な困難があったり、不況など情勢的な変化もある。惜しいことに名車になりそうなクルマも消えていってしまった。
今回は惜しまれながらも市場に出回ることなく消えていった名車の数々をご紹介しよう。
文/写真:ベストカー編集部
■採算がとれそうなのに登場しないレンジローバーSVクーペ
「こんなクルマが市販されるなんて!!」と思ってワクワクしたレンジローバーSVクーペ。
2018年のジュネーブショーで発表された、世界初のフルサイズ・ラグジュアリーSUVクーペだ。
長大なドアが目立つ優雅なボディは、ボンネットとテールゲートを除き、すべてが新たに製作された。
そのボディに搭載されるエンジンは、565ps/71.3kgmを発生するパワフルな5LのV8スーパーチャージドエンジン。
0〜100km/h加速=5.3秒、最高速は266㎞/hを達成するなど、スポーティサルーンばりの動力性能を誇る。
その魅力的なレンジローバーSVクーペは、英国で手作業にて組み立てられ、世界限定999台、約3400万円で販売、されるはずだった。
が、ランドローバーは2019年に入り、レンジローバーSVクーペの発売取りやめを決定した。
その理由としてランドローバーは、限られたリソースと投資を、世界中に向けた次世代の商品群に集中するためとしている。
無限にあるわけではない開発にかかる資源および資金を、より重要なモデルに割り当てるのはメーカーとして当然の判断ともいえる。
しかし、いちクルマ好きからすれば、魅力的なクルマが登場しないことが決定したのは残念だ(SVクーペに至っては発表までしたのに!!)。
そんなレンジローバーSVクーペの発売とりやめを受け、ここではさまざまな事情から世に出なかったクルマを紹介する。シンミリしながら読み進めていただきたい。
■和製スーパーカーの登場はやはり現実的ではないのか?
日本にはスーパーカーがなかなか生まれない現状がある。GT-RやNSX、そしてかつてのLFAなど存在感のあるクルマは多いが、それこそフェラーリなどのように思わず口が開いてしまうような驚愕のクルマは生まれにくい。
しかしかつての日本には1億円を超すような、現代で言うハイパーカーの計画も多くあった。
惜しくも実現しなかった和製スーパーカーたちを紹介しよう。
【日産R390】
1990年代後半、日産のル・マン24時間レース参戦のために製作されたレースカーのロードゴーイングバージョンで、1997年に1台が製作・発表された。
そもそもが市販前提というよりは、ホモロゲーション獲得の条件(市販車両が1台でもあること)を達成するためという出自だった。そのため実際にイギリスで登録されナンバーを取得した実績を持っている。
全長4720×全幅2000×全高1140mmのボディに3.5LのV8、ツインターボエンジン(VRH35)を搭載する。
当時の日産の財務状況から市販はされなかったが、仮に市販されれば1億円はくだらないと噂された。しかし内装は日産市販車の部品を流用するなど、市販前提というには少し物足りなかったのも事実。
【スパッセV】
エコカーばかりが目立った2009年の東京モーターショーに出展され、話題をさらったのがスパッセV。
愛知の自動車メーカー、鈴商が開発を進め、900万円ほどでの市販を考えていた。ベストカーはクローズドエリアで試乗を敢行し、そのポテンシャルの高さを実感。
残念ながら2011年に開発はストップ。エンジンはマツダスピードアクセラの2.3L直4ターボ(264ps)、車重は850kgの軽量設計だった。
【ホンダHSV-010】
しかし世界情勢の影響で2008年に開発の白紙化が発表された。V10エンジンはそのまま市販車に搭載されることはなかった。
初代NSX後継としてアキュラから2010年の発売が予定されていたHSV-010。搭載を考えていたV10エンジンは550psを発生するとされていた。
その後、2010年からスーパーGTに参戦したマシンにHSV-010の名が使われたものの、こちらでもエンジンはV8が使用された。
一部関係者が言うにはプロトタイプの走りはよく、完成度も高かったというだけに、残念無念!!
【ヤマハOX99-11】
ヤマハが当時、F1へ供給していたV12、3.5Lエンジンを公道用にデチューン(450ps/40.0kgm)して搭載するスーパースポーツ。
1994年にデリバリー開始とされたが、バブル崩壊後という時期でもあり市販はされなかった。当時の発売予定価格は1億3000万円。
いまでもイベントなどでそのサウンドを聞くことができる。
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