シエンタ急騰の勝因とは? 2019年8月国内販売登録車1位獲得!! 

 クルマ界はなかなか異変が起こりにくい。特に販売台数に関しては、新型車が大きく販売を伸ばすケースはあるが、従来モデルが突然大化けするということはほぼ皆無。

 しかし、2019年8月の国内販売において異変が勃発!! トヨタのコンパクトミニバンのシエンタがなんと登録車で販売台数トップに立ったのだ。デビューから丸4年経過して決して新しくないシエンタの躍進はクルマ界の大きなトピックスと呼ぶにふさわしい。

 シエンタがトップに立った要因は何か? 渡辺陽一郎氏が考察する。

文:渡辺陽一郎/写真:TOYOTA、ベストカー編集部

【画像ギャラリー】シエンタの魅力に迫る!!


2019年7月、8月に販売急伸!!

 どのようなカテゴリーでも「販売ランキング」は気になるが、2019年8月のデータ(日本自動車販売協会連合会のまとめ)を見て驚いた。小型/普通車の1位がシエンタになっていたからだ。

 今までにもシエンタが上位に入ることは多かったが、1位は珍しい。2位はプリウス、3位はセレナ、4位はノート、5位はアクアと続き、シエンタは販売上位の常連車種を見事に押さえてトップに立った。

2015年7月にデビューし、2018年9月にマイチェンしたシエンタ。価格は177万6600~253万2600円と価格帯は幅広く、いろいろなタイプが選べるのは魅力

 現行シエンタは2015年7月に発売されている。すでに4年以上を経たが、2018年9月にマイナーチェンジを行い、2列シートのファンベースを加えた。この後に目立った改良は実施していない。

 それなのに売れ行きは順調に伸びていく。2019年1~6月の対前年比は112.1%で、7月には156.5%に急増して、登録台数も1万739台に達した。8月も157.9%で、8745台が登録され、小型/普通車の1位になっている。

 このように2019年7/8月は、シエンタの売れ行きが前年の約1.6倍に急増した。

 これは前年に急落した反動ではない。2018年7/8月の対前年比は約97%だから横這いだった。その後、2018年9月にマイナーチェンジが行われ、登録台数が増え始めた。

 経過を辿ると2019年1~6月の対前年比は前述の112.1%だから、さほど目立った増え方ではない。注目されるのは、やはり2019年7/8月だ。

エクステリアデザインはウェッジシェイプが特徴で、ガラスエリアも広く運転しやすいとユーザーから好評。乗降性なども考えられていて万人に優しい設計

上級クラスからの乗り換えも目立つ

タンク/ルーミーの大ヒットからもわかるとおり、現在の日本では5ナンバーサイズでユーティリティを高めたモデルの需要がかなり高い

 なぜこの2か月間で急に増えたのか、まずはメーカーに尋ねた。

「シエンタは2018年9月のマイナーチェンジ以降、再度改良を加えたとか、新しい販売促進を行ったことはない。生産体制にも変更はない。そして2018年11月のように、以前にも1カ月の登録台数が1万台を超えたことはある(この時の小型/普通車の販売順位はアクアに次ぐ2位で、対前年比は135.1%だった)。お客様からの注目度が高まり、売れ行きが伸びたと考えている」という。

 同様の質問を販売店にも行った。

「最近になってシエンタの受注が増えているのは確かだ。そのために納期も伸び気味で、2~3カ月を要する。9月上旬に注文をいただいても、グレードによっては、納車が12月にズレ込む場合もある。購入いただいているお客様を見ると、ヴォクシー/ノア/エスクァイアといったミドルサイズミニバンからの乗り替えが目立つ。またハリアーのようなLサイズのSUVから、シエンタにダウンサジジングされることもある」という。

クラスはまったく違うが、ノア/ヴォクシーのミニバンのほか、SUVのハリアーからシエンタへの乗り換え組も珍しくないという

販売力のトヨタのなせる業!?

 最近の市場動向を考えると、シエンタのようなコンパクトミニバンが売れ行きを伸ばしやすい状態になっているが、メーカーと販売店に尋ねた限り、特別な理由はない。

 ただし、大きくなり過ぎた日本車にあって5ナンバーサイズの3列&2列シート、ガソリンエンジン車とハイブリッド車をラインナップするなど抜かりない。

居住スペースだけでなく、ラゲッジスペースも軽自動車やタンク/ルーミーと比べると余裕があるのが大きな魅力となっているのは間違いない

 軽自動車よりも立派に見えるのも人気の要因と考えられる。

 ちなみに小型/普通車で1位になった2019年8月におけるシエンタの登録台数は8745台だ。前年の同月は5538台だから3207台増えた。

 シエンタを扱う販売店(今はトヨタ系全店)は全国に4900店舗あるから、1店舗が昨年よりも1台多く売れば、売れ行きは急増する。トヨタの販売網を考えると、驚くほどの伸び方ではないのかもしれない。

 ちなみにトヨタ全体の販売台数を2018年8月と2019年8月で比べると、2019年は5965台増えた。車種によって増減はあるが、シエンタの販売増加もあって、トヨタの売れ行きが少し押し上げられた。

2019年9月のマイチェンで2列シートモデルを追加。3列は必要なく、ステーションワゴン的に使いたい人には人気が高いもよう

フリードのマイチェンで勢力は変わるか?

フリードのマイチェンモデルは2019年9月20日に発表され、10月18日から販売を開始する。SUVタイプのクロスターも新設し販売増強を狙っている

 このほかライバル車となるフリードとの販売競争もある。2018年中盤までは、シエンタとフリードは互角に販売競争を展開していた。2018年1~6月の1か月平均台数は、シエンタが7570台、フリードは7331台だ。ほぼ同じ台数であった。

 その後、シエンタが2018年9月のマイナーチェンジで2列シートを設定したり安全装備を強化すると、差が開き始めた。2019年1~6月の1か月平均は、シエンタが8488台、フリードは7591台だ。2019年7月はさらに差が付き、前述のようにシエンタは1万739台、フリードは7608台。8月は8745台・7000台となった。

2014年はシエンタは旧モデル。一時は消滅の危機にあったが、2015年7月に現行モデルがデビュー。フリードの販売台数はフリード+を除いたもの

 現在のクルマの売れ行きは絶好調だった1990年の70%以下で、しかも軽自動車が新車販売されるクルマの40%近くを占める。そうなると小型/普通車市場で登録台数の1位を取ることは、以前ほど難しいことではなくなった。

 2019年8月のシエンタは、8745台を登録して小型/普通車の1位になったが、この台数を軽自動車に当てはめると6位に下がる。

 1位のN-BOX以降、タント、デイズ&デイズルークス、スペーシアは1万台を超えており、5位のムーヴ&ムーヴキャンバスが8802台で、シエンタよりも少し多いからだ。

日本車として圧倒的な販売台数を誇るのがホンダN-BOXで、シエンタが販売好調と言っても文字どおりケタ違いの販売台数をマークする小さなモンスター

 1位のN-BOXは2019年8月に1万8282台を届け出してシエンタの2倍以上だから、小型/普通車の販売ランキングにどの程度の意味があるのか、わからなくなってしまう。

 注目されるのは、今後のシエンタの売れ行きだ。2019年9月20日にフリードとフリードプラスがマイナーチェンジを実施し、10月18日から販売を開始するが、それでもなおシエンタは好調に売れ続けるのか。

 あるいは再び従来の売れ方に戻るのか。本当の人気度は、相応の期間を置かないとわからない。

 それでも時々、販売の1位が入れ替わると面白い。

 いつでもプリウスが1位でノートが2位みたいな定番的な売れ方は、変化がなくて退屈だ。最近は新型車の数も減っているから、「シエンタが1位」といったニュースはいい刺激になる。

登録車の販売ナンバーワンの常連であるプリウスはマイチェンで販売を盛り返していて、クルマが売れない8月とはいえそのプリウスを凌駕したのはある意味事件だ

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