■トヨタの新型EVセダンに中国メーカーはどこまで関わっているのか?
情報が判明したのは、中華人民共和国工業情報化部(通称:工信部)のサイトから。
「工信部」は日本でいう経済産業省や総務省のような立ち位置の行政機関で、中国では自動車メーカーが新たなモデルをリリースする前に、その情報を工信部へ届け出る必要がある。その情報は一般にも公開されるため、自動車メーカーがどんなモデルのリリースを予定しているのか。そこからわかる仕組みになっている。
この経緯で判明したのが、「bZ3」というコンパクトセダンだ。名前からは察するに、このモデルが「bZシリーズ」第二弾であることは明白で、デザインを見るとすでにメガウェブで「bZ SDN」としてお披露目されたコンセプトモデルの市販車であることがわかる。以下、詳しいスペックを見ていこう。
ボディサイズは全長4725mm×全幅1835mm×全高1475mm、ホイールベースが2880mmとなっている。製造会社はトヨタと第一汽車の合弁会社「一汽トヨタ」が行うと記載されており、それはリアにある「一汽豊田」のエンブレムからもわかる。
ただ、目を引くのはバッテリーとモーターに関する記述だ。それぞれのメーカーは「弗迪」とされているが、これは電動車で有名な中国BYDの子会社となる。なぜBYDがここに関係しているのかには深い理由が存在する。
1995年にバッテリーメーカーとして誕生したBYD。広東省深圳市が本拠地のこの会社は2003年より自動車の生産も開始、2008年には世界初となるプラグインハイブリッド量産車の「F3DM」をリリースした。2021年の中国市場では電気自動車(EV)+プラグインハイブリッド車(PHEV)合わせて約60万台を販売したBYDだが、実は日本でも、すでに2015年からBYD製のEVが販売されている。
そのEVとは「電気バス」である。日本市場においては2015年に大型電気バス「K9」が京都市内を走る「プリンセスライン」へ5台納入し、事業をスタート。現在までに24の事業者へ約60台の電気バスを納入しており、日本におけるEVバスシェアの約7割を誇る。2022年7月には日本の乗用車市場への参入も表明し、これから日本でもますます見る機会が増えるのは間違いない。
そして2019年に「電気自動車の研究開発に関する合弁会社の設立に向けた契約」をトヨタと締結し、翌年には合弁会社「BYD TOYOTA EV TECHNOLOGY」を設立した。2021年の上海モーターショーで行われた「bZシリーズ」の立ち上げの際には、提携パートナーとしてBYDの名前も挙げられており、「bZシリーズ」モデルの開発に関わるというのは前々から推測されていた。
それを決定づけたのが、2022年3月に深圳市で発見されたとあるテスト車両である。黒くカモフラージュされたこの車両は至る所にコンセプトモデル「bZ SDN」の要素が確認できており、その市販モデルのテストを行なっているのは確実であった。
だが、何よりも話題となったのが、そのテスト車両がダッシュボードに乗せていた一枚の書類。日本の車検証のような役割を果たすこの書類には、このテスト車両のメーカーとブランドが「BYD」と記載されていたのだ。見た目はトヨタのbZ SDN、でも製造はBYD。これが話題となり、bZ SDNの市販モデルへBYDが関与することは確実視された。
一方で、どの程度BYDが関与しているかは依然として不明のままであった。パワートレインだけの供給なのか、それとも乗り味に影響するプラットフォーム全体も設計しているのか、はたまたOEM供給のように丸ごとBYD製なのか。
憶測が憶測を呼ぶ事態となったが、今回の情報公開で明らかとなったのは、BYDが関与しているのはbZ SDN改め「bZ3」の駆動用バッテリーとモーターの供給だけという点である。なので、製造はトヨタ(一汽トヨタ)だし、例えばABS部品はトヨタグループの一員である「アドヴィックス」と記載されていることからも、大部分はトヨタの設計となっている。
気になるパワートレインのスペックだが、モーターは出力135kWと180kWの2種類が用意されていることから、少なくとも出力の異なる2モデルが展開されることがここからわかる。また、記載方法から両方とも二輪駆動なのは間違いない。ただし、バッテリーの容量は不明なので、一充電でどれほど走るかの数値は正式発表を待つしかなさそうだ。
通常、工信部に情報が掲載されるということは、そのモデルが発表間近の段階にあることを示す。bZ3の正式発表はいつになるかは不明だが、2022年中には何かしらの発表があると期待したい。
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