クルマだけが悪者なのか!?
では、なぜクルマがターゲットとなっているのか?
国土交通省の発表によると、2019年度における日本のCO2排出量(11億800万トン)のうち、運輸部門からの排出量(2億600万トン)は18.6%を占めている。運輸部門とは、クルマの他に、航空、鉄道、船舶なども含まれる。
さらに、運輸部門のなかでも自家用乗用車の排出するCO2の占める割合は45.9%、自家用貨物車は16.5%。つまり、自家用乗用車や自家用貨物車がすべてゼロエミッション車になるだけで日本の運輸部門のCO2排出量の半分以上が減るということになる。
しかし、日本全体のCO2排出量の残り81.4%は、家庭や工場、オフィスなど、他の排出源から排出されているということになる。ということで、クルマだけが悪者にされることに異論を唱える声があるというのも事実だ。
ちなみに、クルマの排気ガスにはCO2の他にも、CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素化合物)、粒子状物質(PM)、など、環境破壊に直結する有害ガスが含まれていることも問題視されている理由のひとつだ。
2035年がタイムリミット!? 内燃機搭載車廃止への動きが本格化
2021年1月18日の第240回国会の施政方針演説で、菅義偉首相(当時)が2035年までに新車販売で電動車100%を実現することを表明した。この発表は、事実上のガソリン車、ディーゼル車などの内燃機関を擁したクルマの禁止を意味する。
これは、地球温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定において長期的な努力目標として「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つ(2℃目標)とともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(1.5℃目標)」が策定されたことを受けてのことだ。
また、かねてより「自動車大国であるにも関わらず他国に比べて環境問題について出遅れているのでは」という批判を受けていた日本としては、これ以上、ガソリン車やディーゼル車の廃止に言及することを先送りにはできない状況に追い込まれていたのだ。
いずれにせよ、日本の自動車メーカーは急ピッチで「脱内燃機」向けて舵を大きく切らなくてはならない状況になってきたということだ。
東京では内燃機搭載車が他府県より早く買えなくなる!?
東京都の小池百合子知事は2020年12月8日の都議会で、都内でのガソリン車の新車販売について、乗用車は2030年までに、二輪車は2035年までにゼロにすることを目指すと表明した。今後は、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などへの切り替えを促すように、自動車メーカーとも連携して具体策を検討していく方針となっている。
これが現実のものとなれば、東京都は他府県より5年も早く、ガソリン車やディーゼル車を新車で購入できなくなるということになる。
このように、政治は脱ガソリン車・ディーゼル車に前のめりになってはいるが、車種選択の幅が狭い、車両価格が高いなどの理由から、現状では日本国内の大多数のユーザーは「エコカーなんてまだまだ」と考えているのが実状だ。
実際、日本自動車販売協会連合会のデータによると、2021年1月~10月までの新車販売台数のうちのガソリン車が占める割合は50.3%。完全なるゼロエミッション車であるEVに至っては、たったの0.8%なのだ。こういった数字からも環境ファーストというユーザーはまだまだ少ないということがわかる。
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