コロナ禍のレクサスの現状 それでも「おもてなし」が危機に

コロナ禍のレクサスの現状 それでも「おもてなし」が危機に

 新型コロナウィルス感染拡大によって、新しい生活様式が強いられ、私たちの日常は、大きく変わりつつある。ありとあらゆる業界、職種が変化を求められる中、自動車販売の現場も例外ではなく、特に、高級車を扱うプレミアムブランドほど、このコロナ禍によって窮地に追い込まれている。

 今回、スポーツセダンである「IS」、そしてフラグシップセダンである「LS」のモデルチェンジを控え、新型車の販売活動も本格化し始めるレクサス店の現状を、元レクサスセールスコンサルタントの筆者が取材した。日本でもっとも売れているプレミアムブランド「レクサス」の窮地とは!?

文:佐々木亘
写真:LEXUS ベストカーWEB編集部 ベストカー編集部

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さすがのレクサスも、撃沈しかねない

 レクサスでは、フルモデルチェンジや大型マイナーチェンジが行われる度に、富士スピードウェイなどで、集合研修の形をとり、全スタッフを対象にした商品研修会が行われる。

 プロトタイプの実車を確認しながら、モータージャーナリストやレーシングドライバーを交えた商品説明、サーキット本コースの走行などの体験などを通して、販売に携わるレクサス店のスタッフは、メーカー側の作り手の思いを、体に叩き込んでいく。

 ISは今秋発売予定だ。となれば、既に商品研修会が行われてもいい時期であるが、コロナウィルス感染拡大の影響から、レクサスでは、昨年末を最後に、集合研修会は行われていない。

ISは、2020年6月にマイナーチェンジ版を発表、日本発売は2020年秋を予定

 いまの状況を、現役のセールスコンサルタントに聞くと、このような言葉が出てきた。

 「コロナウィルスの影響で来店客数が激減している。外出を避けるオーナー様方は、店舗になど、足を運んでくれない。自分たちは来店型の販売体制なので、DMやテレアポが営業活動の中心だが、やはりそれでは、クルマは売れない。

 WEBでの新型商品研修も、無いよりはいいが、やはり実際の研修で感じた「作り手の熱量」を、WEB研修で実感することは難しい。特に今回のISとLSに関してはマイナーチェンジであり、オーナー様へのアピールポイントに乏しい。できれば大きなフルモデルチェンジがあると状況は変わりそうだが。」

LSは、2020年7月にWeb上でマイナーチェンジ版を世界初公開、日本では2020年初冬に発売を予定している

 レクサスは、2005年の開業当初から、顧客来店型の営業に特化して販売を続けてきた。しかしながら、今回ばかりは、営業方法を変化させていかないと、さすがのレクサスも、撃沈しかねない。15年貫いてきた「待ち」の営業方針よって、いまレクサスは窮地に追い込まれている。

来店型の販売形態はレクサスのおもてなしを体験させてくれる強みでもあったが、コロナ禍では厳しいという意見

非接触でもできる「おもてなし」はあるはずだ

 店舗に来店して体感する「おもてなし」のレクサススタイルは、今や他ディーラーに追いつかれ、追い越されている面もあるのではないかと感じる。立派なショールームや、調度品の並ぶラウンジなどは、既に他メーカーも同様のハードウェアを構築しており、差は見えにくくなってきた。

 他メーカーの一部販売店で導入されているオンライン商談は、レクサスの方針と相性のいいスタイルなのではないか、と筆者は考える。

 従来から値引きなしのワンプライス販売を続けてきているレクサスでは、オンライン商談であっても、スムーズに進むであろう。来店客数減少によって少なくなった商談機会を増やす方法の一つとして、是非導入してもらいたいと思う。

 レクサスは「対面」にこだわりすぎてはいないだろうか。「対面」にこだわりすぎるあまり、基本的なコミュニケーションが希薄になっているようにも感じる。

 オーナーとの「つながり」や「おもてなし」は、対面しないとできないわけではない。オーナーの誕生日に一本電話を入れるなど、非対面でもできる「おもてなし」はある。それは、「おもてなし」というよりも「おもいやり」に近いかもしれない。

レクサスディーラーの提案によって、店内用の陶器のカップを、持ち帰りできるプラスチック製カップにした

 「おもてなし」と「おもいやり」を非対面の環境下でも続けられれば、オーナーはきっと「次はお店に行ってみようか」という気持ちになってくれる。

 コロナ禍で非対面接触が多くなる中、「おもいやり」に立ち返ることができれば、レクサス販売店は窮地を乗り越えて、さらなる高みへ進むことができる、と筆者は信じている。

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