2021年1月9日、中国の新興EVメーカーとなる「NIO(ニーオ)」がセダンタイプの新型EV「ET7」を発表。2022年には、現在トヨタも開発中の全固体電池を搭載可能とするシステムを展開予定と明かしている。
日本では馴染みのないこの「NIO」というメーカーは一体どのような会社なのか? また、1000kmもの航続距離を実現する「ET7」は中華版テスラとして、世界で猛威を振るうだけの実力があるのだろうか?
また1000kmという航続距離は、現在のEVが達成している航続距離の2倍以上になるが、ここまで航続距離が長ければ、ガソリン車のように不便なく使うことができるのか? 考察していきたい。
文/国沢光宏
写真/Nio
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■中国メーカーと舐めるべからず!? 新興メーカー「NIO」の正体
「NIO(ニーオ)」という中国の自動車メーカーが『ET7』という革新的な電気自動車を発表した。
ちなみにNIO、中国の企業ということで最初から見下す人も日本じゃ多いけれど、NIOの開発チームはドイツの技術者から構成されておりレベル高い。生産もVWが半分の株を持っている「JAC」(安徽江淮汽車)という中国の自動車メーカーだったりする。
100%中国人となる企業の製品は品質に問題を抱えているケースが少なくないけれど、日欧米のメーカーが中国で生産する製品はまったく問題なし。ここにきて日欧米のメーカーが技術指導やクリティコントロールする中国企業の品質も急速に向上している。NIOはドイツ人が中核になって開発し、VWの生産技術を使っていると考えていい。
■業界を驚かせた! NIOが「ET7」にてんこ盛りした最新EV技術
どんな電気自動車を出してきたのか? 3つの点で業界に衝撃を与えている。1つ目は150kWhという電池搭載量。現在日本で最も大きな容量の電池を搭載している日産『リーフe+』の場合62kWh。世界で最も大きい容量の電池積むテスラ『モデルS』で100kWh。それ以上大きい電池を搭載する場所がないし、重くなってしまう。
モデルSで700kgくらいあると言われており、1.5倍にすると電池だけで1050kgになってしまう。電池を運ぶため電気を喰う。
ただ150kWh搭載すれば航続距離の心配がなくなる。極めてシビアなアメリカEPA基準の航続距離は、日本のWLTPで458kmのリーフe+が364km。モデルSだと647km。NIOの『ET7』は875kmとなる。
大容量燃料タンクを持つガソリン車以上といってよかろう。ここまで読んで「そんな大きな容量の電池を充電するのには時間が掛かる」と思う人もいるかもしれない。これに対する技術が「電池交換方式」だ。すでにNIOは技術を確立しており、2019年の上海モーターショーで現物のデモを行っていた。交換時間およそ1分。
中国も大型の電気自動車を買うような都市部のお金持ち層は高級マンションに住んでいる。自宅だと充電できないケースだって多いという。ガソリンスタンドのような交換ステーションを作ることで(すでに150カ所ほど稼働している)、ガソリン車と同じように運用できるということ。ちなみに使い放題コースは1カ月 1万5000円程度だ。
毎月1000km走るとすれば、リッター10km走るガソリン車と同じくらいの燃料コストだと考えていい。高速道路に交換ステーションを作ることでロングドライブだって可能。10年後の都市部の日本は5分で150kmくらい走れる電力を入れられる超急速充電や、NIOのような電池交換方式による運用になるかもしれません。
そして3つめの「スゴイね!」が全固体電池を2022年に出すと発表したこと。正確に書くと関係者は「スゴイね!」じゃなく「ホントかね?」ですけど。世界中で開発競争をしている全固体電池、次世代の高性能電池と言われており、大雑把に言って現在の最新型リチウムイオン電池の3倍の性能を持っているそうな。
すなわちリーフe+と同じ容積の電池を搭載したら186kWhと途方もない容量になる。今の62kWhすら十分なので電池を3分の1のサイズにできてしまう。当然ながら大幅な軽量化が可能。また、急速充電性能も3倍になる。リチウムイオン電池を使う電気自動車の急速充電時間は30分程度。それ以上早く充電するとバッテリー寿命を落とす。
大きな容量の全固体電池+チャデモ(最大で90kW)より高い性能持つ急速充電器を使うことで、前述のとおり5分で150km程度走れるくらいの電力を入れられるだろう。これまたガソリンスタンドと同じような使い方ができる。充電スタンドの設置コスト、ガソリンスタンドよりずっと安価です。ガソリンエンジンの代替ができてしまう。
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