1960年代、VWビートルをバギーに改造して、カリフォルニアにおけるクルマとビーチのカルチャーの象徴となった1台のクルマがある。ブルース・メイヤーによって考案された、メイヤーズ・マンクスバギーである。クルマ好きなら、一度はビートルのシャシーの上に、バスタブのようなFRPボディに幌を付けたビーチ専用のバギーを見たことがあるかもしれない。
そのメイヤーズ・マンクスバギーを彷彿とさせるバギーを、フォルクスワーゲンがEVのプラットフォームを使って現代に蘇らせたのが、2019年3月のジュネーブショーで公開したID.BUGGYである。
そのID.BUGGYをなんとモータージャーナリストの木村好宏氏がアメリカ・ペブルビーチで試乗したというので報告しよう!
※この記事はベストカー2019年10月26日号で紹介したものを転載しています。
文/木村好宏
写真/VW AG 木村好宏
初出/ベストカー2019年10月26日号
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EVのプラットフォームでバギーを復活!
「バギー」あるいは「デューンバギー」という名前を聞いたことがあるだろうか?
1960年代にカリフォルニア州ニューポートビーチに住むブルース・メイヤーというサーファーが思いついた、バスタブにタイヤをつけたような屋根なしの2シーターカーである。
ベースは第二次大戦後にGIが大量に持ち込み、ポピュラーになって、当時その辺りにゴロゴロしていたVWビートルで、フロアパネルを切り詰め、入手しやすいシェビー・トラックのサスペンションを組み込んでいた。
これがあっという間にブームになり、エルビス・プレスリーやスティーブマックイーンの主演した映画にまで登場した。実は、このバギーはあまりにも単純な構造ゆえにパテント登録ができず、世界中でコピーが氾濫した。
日本では1970年にダイハツが100台限定でフェローバギーを発売したほどである。
現在、電気自動車への転換と同時にディーゼルイメージ向上へ励んでいるVWは、このカルトな歴史的存在をBEV(電気自動車)で復活するという一石二鳥的なアイデアを思いついたのである。それが今回紹介するID.BUGGYである。
ID.はいうまでもなくVWの電気自動車のシリーズ名で、今年のフランクフルトモーターショーで世界初公開された初の本格的BEVであるID.3にも与えられている。
ID.シリーズはMEBというBEVモジュールで構成されているが、ID.BUGGYも同じようにスケートボード状のフロアグループに往年のバギーを近代風にリデザインしたボディがのせられている。
当時のようにドアもルーフもなく、強固なロールバーが安全性の見地から加えられた。ドライバーの正面にはライトや速度、そしてバッテリー容量インジケーターが表示された小さな画面だけで、ほかには何もない。
スタートはコラムから伸びたレバー先端のスイッチを押し、同じスイッチを前に回せば前進、手前は後進である。実はこれはID.3とほとんど同じ構造である。
タイヤはフロントに255/55R18、リアに285/60R18サイズのオフロード専用タイプだった。
床下に搭載されている電池は62kWhの容量を持ち、後輪にフランジされた150kWの電気モーターで0~100km/hを7.2秒でカバーする。また最高速度は159km/hでリミッターが介入し、航続距離は250kmに達する。
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