GRヤリスに続きGRスーパースポーツ!! モータースポーツに本気で向き合うトヨタは採算がとれているのか?

 トヨタは昔からモータースポーツに深くかかわってきたが、現豊田章男社長体制になってからは、モータースポーツに積極的に参戦するだけでなく、参加型のモータースポーツの手厚い支援など、モータースポーツの盛り上げに大きく貢献。

 業績が好調なトヨタだからできるとも言えるが、湯水のようにお金を使っているだけでは、いくら社長がモータースポーツ好きと言えども継続することは難しい。

 モータースポーツに本気で向き合うトヨタは採算が取れているのか気になるところ。

 トヨタがモータースポーツに見出している価値、何を狙っているのかなどについて、国沢光宏氏が考察する。

文/国沢光宏、写真/TOYOTA、HONDA、NISSAN、MAZDA、MITSUBISHI

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トヨタにモータースポーツの費用対効果の意識はあるのか?

トヨタはモータースポーツにワークス参戦するだけでなく、参加型レースのサポートにも積極的に力を注ぐ

 マツダや三菱自動車が、「モータースポーツなんて費用対効果悪いからやらない」と考えてるのと対照的に、トヨタはモータースポーツに注力している。

 先日も今シーズンのル・マン24時間で走らせる『GRスーパースポーツ』を発表。もちろんWRCの体勢だって強化しており、今シーズン4台のWRカーを全てのWRCで走らせると発表した。

 「モータースポーツは意味無し」のメーカーと鮮やかな違いを見せている。

 果たしてトヨタに費用対効果意識はあるんだろうか? 

 ここで3つのケースを紹介してみたい。

2021年1月15日にお披露目されたGR010 HYBRID。2021年シーズンのFIA世界耐久選手権(WEC)に投入する

ホンダ、日産がモータースポーツで得たもの

ホンダは1965年のF1最終戦メキシコGPで初優勝。東洋の小さなメーカーの勝利に世界が沸いた

 まずホンダ。

 東洋の新興メーカーであり、商品と言えばOHVの実用バイクしかなかった1950年代、突如当時世界最高峰のマン島TTに出ると宣言。見事大暴れする。

 さらに軽トラックしか販売していなかった1964年のこと。12気筒の1500ccエンジン作ってF1参戦。この2つの「事件」でホンダは世界的に認知されたメーカーになった。

 もちろんマン島TTで勝った時はバイク大売れ! F1も現在に至るまで語り継がれ、ホンダの素晴らしい歴史になっている。この2つをやらなかったらどうか?

プリンススカイラインは第2回日本グランプリに出場、一気に日本人の憧れとなった。写真は8台が投入されたT-IVクラスのスタート

 2つ目はスカイライン。

 ホンダが切り開いたモータースポーツ熱を受け開催となった日本グランプリだったけれど、第1回は外国車の圧勝だった。日本車などお話にならない性能。

 そんな状況を見て発憤したプリンス自動車が第2回日本グランプリで急遽6気筒を搭載した高性能モデルを開発。メインレースでポルシェ904にぶつけてきた。1周ながら904を抜き、伝説になる。日産、スカイラインで巨額の利益を上げましたね。

トヨタだけが欧州での販売を伸ばしている事実

GRヤリスはWRCのイメージもあり、欧州での注目度がものすごく高い

 3つ目に現在進行形のWRCを紹介しておく。

 直近の欧州に於ける日本車の販売状況を見ると明確なジリ貧になってます。第2期F1でしっかりブランドイメージを作ったホンダながら、今や赤字でいつ撤退してもおかしくない販売台数。

 WRC全盛期、高額なWRXを売りまくったスバルも、もはや事実上の撤退と言える台数しか売れていない。

 ルノーという相棒を持つ日産すら非常に厳しくなっている。

 そんななか、トヨタだけ順調に販売台数を伸ばしてます。興味深いことにWRCへカムバックした2017年からハッキリ販売台数が増えているのだった。

 現地のディーラーに聞くと、皆さん、「クルマを見に来る人が増えました。ヤリスを見に来てRAV4を買っていきます」。

 考えて欲しい。クルマのブランドイメージを上げるのはどうしたらいいだろう? 

 ゴルフ用具だったら強いツアープロに使ってもらうこと。スキーも優勝している選手が使っていること。自転車だってツールド・フランスで勝てるブランドに乗りたくなるんじゃなかろうか。逆に言えば、優れた性能を持っているから優勝出来るワケ。

クルマは道具であるがそれだけで終わらない

三菱はグループA時代にランエボでWRCを席巻。三菱=優れた4WDのイメージが世界的に定着

 マツダや三菱自動車の役員に上記のような話をしたことがある。

 両メーカー揃って口を合わせたように、「スポーツは趣味。実用性重視のクルマと違うでしょ」。

 確かにクルマって道具だ。道具は安くて丈夫で耐久性あって使いやすいことに意義を持つ。ゴルフ用具やスキーのような遊び道具と違うんだ、ということなんだろう。

 ここから面白くなる! 確かにクルマは生活に必要な道具です。だったら機能に合った性能で充分じゃなかろうか。1人や2人の移動に使うなら軽自動車で充分。荷物を運ぶのであれば、それに見合った実用車でいい。

 そして安価というスペックも重要。実際、軽自動車を見ていると、価格や性能は横並び。モータースポーツなど関係なし。

 なのに街中を見ると、ムダに大きいクルマや、ムダな性能を持つクルマがたくさん走っている。自動車メーカーにからすれば高額なクルマを売ったほうが儲かります。

マツダは1991年に日本メーカーとして初めてル・マン24時間レースで総合優勝を飾った。モータースポーツへの復帰に期待したい

 クルマ選びの基準は実用性だけでなく、趣味性も大きいということにほかならない。ここで言う趣味性って何か? 自転車やスキーと同じく「ブランドイメージ」だと思う。

 クルマの場合、モータースポーツでしかブランドイメージを構築できないと言っていい。電池自動車の場合、テスラが人気の理由はメチャクチャ高い加速性能を持っているからに他ならない。

 競技で使えない非公認の道具であっても叩けば大飛びするようなゴルフクラブを買う人はいます。普通の性能しかなかったら誰も買わないだろう。

 確かにモータースポーツを費用対効果で表現するのは難しい。というか出来ないと思う。

 けれどブランドイメージ向上には間違いなく貢献しているし、高くてムダな性能を持つ利益率の高いクルマを売ろうとするなら、モータースポーツでアピールするしかない。

 モータースポーツをやらないメーカーは、いいクルマを作っても暗いし、ジリ貧になります。

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